第4話 誤算%

☆が100突破してました。ありがとうございます。

それと、ギフトを下さった方。どうもありがとうございます。お礼の気持ちを表現するためこの前書きはブリッチしながら書きました。

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窓から朝日が差し込み、部屋全体を、そして物部を明るく照らす。


ちゅんちゅん、ちゅちゅんがちゅん。

ほーほーほっほー。ほーほーほっほー。


外からは鳥の鳴き声が聞こえ、街も既に営みを始めた頃合い。

そんな中物部は、ベッドの上で正座となり、目の前に置かれたスマホを睨んでいた。


「次の日に…なってしまった……なぜこんなにも明日というのは来るのが早いんだぁ!?」





【明日】


今日の次の日。翌日。24時(午前0時)をもって日付が変わるので、その時間を境に今日と明日を分けるものとされるが、夜が明け日が昇った時間をもって明日、とする考えもある。

またはそこから、「明日があるさ」「明日やろうは馬鹿野郎」のように希望的な意味で使われる事も多い。

(ニコニコ大百科より引用)





───つまり、だ。……逃げてから1晩経った。


「ハァァァ……」


目の前には、番号が入力されたスマートフォン。

いつもはなくてはならない頼れる相棒の筈が、今はラスボスの如きプレッシャーを放っている。


先延ばしにした問題に再び直面する、哀れな男子高生の姿が、そこにはあった。

てか、それもやはり、僕だった。


着信ボタンに指を出しては、引っ込める。

今現在、自身の記憶が正しければこれでこの動作を計16回ほど繰り返したこととなる。

究極の無駄。RTA走者にあるまじき時間の浪費である。


しかし、何故ここまでチキりまくっているのか。

改めて確認だが、こちらはあくまでお願いされている立場である。それに加え、あちらは社会人。たとえ断りの電話をかけたところで、懇切丁寧に対応してくれる事請け合いだろう。


そんなことは分かっている。ならば、何故ここまで躊躇うのか。

理由は至極、単純なことである。


「コミュ障……!圧倒的コミュ障……!!」





【コミュ障】


コミュ障(こみゅしょう)とは、コミュニケーション障害の略である。実際に定義される障害としてのコミュニケーション障害とは大きく異なり、他人との他愛もない雑談が非常に苦痛であったり、とても苦手な人のことを指して言われる。

(ニコニコ大百科より引用)



「知らない人と電話で喋るなんて……無理だぁ!」


つまり……そういう事である。

初対面の人と対面して喋るのならばともかく、いやともかくでも無いのだが、いきなり電話など論外もいいとこである。

本屋の店員にすら話しかけることが困難であるというのに。「あの、この本ってどこにありますか?」と聞くだけで気分はイーサ○・ハントさながらのエージェントだというのに。


「その点、モンスターはいいよね…喋る必要がないから……」


遠い目でそう呟く。


何故人類には言葉というものがあるのか。遥か昔の先人サルの皆様は歌や踊りなどの音楽で対話をしていたらしい。なにそれ素敵。ロマンチック。憧れるわけないだろいい加減にしろ。


「どうするかなぁ。いやかけるしかないけどさ?先延ばしにすればするほど余計に電話しにくくなるし。……あぁもう!この時間が無駄だ!」


ええい、ままよ。なるようになれ。RTA走者とホモはせっかちなんだ、時間を無駄にするとどうしても拒否反応が起きる。

時は金なり、タイムイズマネー。時間は無限、人生は有限。生き急ぐくらいでちょうどいい。


半ばヤケクソ気味に発信ボタンを押す。

ツーツー、プルルルル、プルルルル。と発信音が鳴っている。


背水の陣だ。さぁ、もう逃げられない。覚悟を決めろ北上物部。ブレングリード流血闘術、推して参る!!


「出なきゃいいのになぁ。出なきゃいいのになぁ!!」


……どこまでもチキンだった。

願い虚しく、ガチャリと通話が繋がる音がする。


『はい、ライブハートの菊月です。』


ややハスキーな女の人の声が電話から発せられる。名前からして、自身にDMを送ってきた人だった。

当然といえば当然か。


「あ、えと、もののべですけど。」


『もののべさんですか!?DM見て頂けたんですね。その節は本当に申し訳ございませんでした!』


「い、いやいや!ほぼほぼ偶然のことなので……」


『だとしてもです!ナオの命を救って頂いた事には変わりありません。』


「ホントに気にしてないので!そんなに気負わないで下さい。」


『そうですか……。ン゙ン゙、それで、本題なのですが。』


咳払いを入れ、そう言う。

本題。つまり、コラボの事。

しっかりしろ自分、断るんだぞ。流されるなよ。


『こうして電話をかけて頂いたという事は、ナオとのコラボを承認して下さるという認識でよろしいでしょうか?』


「……ゑ?」


その瞬間、困惑に呼応するように脳細胞が覚醒し、脳裏にDMの内容が映し出される。

同時に、混乱して回らない頭で付けた結論も思い起こされる。


〖──つまり、コラボするなら電話しろってこと。〗


この結論とDMの内容を照らし合わせ、もう一度結論を出す。


と、言うことは、だ。うん、そうだよな。




──コラボを断るなら、電話しなくて良かったって事やん……


『いやほんとに助かりました……。言うのもなんですが、ナオがコラボすると言って聞かなくて。上からも無茶吹っ掛けられて、正直藁にもすがる思いでお声をかけさせて頂いたので。』


「は、はぁ。」


『もし断られていたと思うと……ちょっと想像はしたくないですね、ハハ。』


「……」


おい、どうすんだよこれ。もう断るために電話しましたなんて言えないじゃんか。

何、断ったらどうなるの?凄い気になるんだけど。


──減給──降格──窓際──解雇クビ──


そんな嫌な単語が無数に浮かぶ。

この人の今後が...こんなちょっとバズっただけの男子高生に左右されるって、この界隈ヤバいのでは...?


コラボしたくない理由と、コラボする利点が天秤に乗る。


リスクヘッジは怠るなと母はいつも言う。

今回のコラボは、やはりリスクが大きい。ナオさんの囲いは一見マトモな人ばかりいる印象があるが、光には影が必ずある。光が大きければ大きいほど、影もまた大きくなる。

理解に苦しむ思考回路をした人間というのは、どうしたっているものなのだ。


男とコラボしたとなれば...どうなるかは想像に難くないだろう。


.....しかし、コラボしなかったら?それはそれでリスクがありそうだ。こんな底辺配信者が人気配信者からのコラボを断った、なんて話が何かしらの間違いで広まれば.....おぉ、考えるのも恐ろしい。とてもじゃないが口にはできない.....


それに、菊月さんの件もある。当然、彼女は僕の逃げ場を無くすためにこの話をした訳では無いだろう。第一、彼女は僕がコラボするつもりで電話かけてきたと思っている訳だし。

勿論、ダメ押しのつもりだという可能性もあるけれども、その線は薄いだろう。本当に、唯の与太話だ。


.....それでも、あの話は紛れもない社会人の悲しき現実。ナオさんがしているというワガママも、上から下された無茶ぶりとやらも現実らしい。


心労、凄そうだな.....。


全ての取り巻く状況、環境、事情。それら全てをまとめ、天秤が動き出す。




これは、同情じゃない。

これは、慈悲じゃない。

これは、諦めじゃない。

全て、自分の決断であり、様々なことを考慮し、慎重に定め、下した判断だ。


『もののべさん?どうされました?』


「.....やりましょうか。」


『はい?』


「やりましょうか、コラボ。喜んでお受けさせて頂きます。どんな内容なんですか?」


『...!ありがとうございます!本当、なんとお礼を言えばいいのか.....』


「いえいえ!こちらこそ、声をかけて頂いてありがとうございます。」


『はい!では内容なんですけれど──』


菊月さんから、コラボの内容や日程などを告げられていく。


生まれて初めてのコラボだ。それも、かなりの有名人と。果たしてどうなるのだろう?

願わくば、この判断が英断となりますように。




それと、菊月さん。コラボの内容は文章にしてメールしてくれると有難いです──。







─────────────────────

見切り発車で書き始めた小説だからプロットはおろか今後のストーリーもあんま無いですなんて言えない──!


引用記事

「明日」

https://dic.nicovideo.jp/t/a/%E6%98%8E%E6%97%A5?from=search_a

「コミュ障」

https://dic.nicovideo.jp/t/a/%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%A5%E9%9A%9C?from=search_a

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