お呼び出し

「岩井」


 な、なんでこざいましょーか?


「お前、昨日が提出期限の課題出てないぞ?」


 あ、やべ、昨日の放課後出そうと思ってたら色々ありすぎて忘れてた。


「ごめんなさい。すぐ出します」

「終わってるんだな?」

「勿論です。今持って来ます」


 あちゃー久々にミスったなぁー。


 でも昨日は仕方なくね!? あの状況下で普通に提出できる人いたら教えてくれ!


「これです」

「……よし、ちゃんとやってあるな。次からはちゃんと出せよー」

「分かりました」


「失礼します」と言って職員室を出る。


 朝から災難ばっかだぁー。


 まあ今のは昨日出さなかった俺が悪いけど。


 頼むから、頼むからもう来ないでくれ……。


 教室に戻り自分の席に座る。


 やはり教室ではここが一番落ち着く。


 まあここ以外ほとんど行った事無いからな。


 実家のような安心感!


 もうここが実家なんじゃね?


 あ、先生来た。


 一時間目の古典が始まり、よく分かんない事古代言語を言われて終わった。


 うん、何言ってたのか全然分かんねぇ!


 頭の良さが普通な奴の理解度舐めんなよ?


 というか何で昔の言語を学ばねばならんのだ。別に学ばなくて良くね!?


 はぁ〜取り敢えず今は休める〜。


 あー机がヒンヤリしてて気持ちえぇんじゃあ〜……。


 そんな調子で二時間目も無事終わり少し長めの休み時間になった。


 ……よし、いつも通りにしよう。


 はい、机にグダァ〜


 これがいつも通りの過ごし方だ。


 机に突っ伏してそのまま。


 うん、やはり気持ちいい。


 しかしそんな日常はすぐ崩壊した。


「岩井って奴いる?」


 …………俺をお呼びですかい?


「いっ、岩井ですか? 岩井なんて奴このクラスにいません!」


 やっぱり覚られてないか……。


 ちゃんと再確認すると悲しい事ってあるんだね……。


 というか呼んでるの誰?


「本当にいないのかよ?」


 ………………鴉画叉さんじゃん……。


 うん! このままでいよう! 絶対!


「あっ、いんじゃん。おーい! 岩井ー!」


 クラスにいた全員が俺の方を向いた。


「あいつ誰?」

「あいつの名前岩井って言うんだ……」

「初めて知った……」


 しっ、視線が多い!


 怖えぇ! めっちゃ怖い!


 しかもこの中を通って鴉画叉さんの所に行かなきゃならないという!


 あぁー【探知】で誰もいない所行っときゃ良かった……。


「ほらさっさと来いよ!」

「はいすぐ行きますマッハで行きますどうかお待ち下さい」


 こっちの方が怖い!


「着いてこい」


 そう言って鴉画叉さんは廊下を歩いていく。


 あー俺どーなるんだぁー?


 死ぬのかー? 死ぬのか俺ー?


 はっ! そうだ! 【探知】で今走って逃げてもバレない場所を探せば良いんだ!


 脳内に学園の地図が描かれたが……


 …………赤ピン立たねぇぇぇぇぇぇ!!!


 それが意味する事は逃げても確実に捕まってフルボッコだドンにされるという事……。


 人生終わった。


 あ、なんか教会とかで流れてる音楽流れて来た……。


「何ボケェーっとしてんだ?」

「っは!」


 危ない危ない今俺天国ヘブンに行っちゃうところだった。


「岩井」

「なっ、なんでしょうか?」


「まず最初にそのどもりやめろ」

「……分かった」

「んでよ岩井」

「はい」

「頼みがあるんだ」

「頼み……ですか……?」


「そ、私が朝あの階段にいたの誰にも言わないでくんない?」

「……分かった」


 何で? と思ったが聞けるわけないだろ!


 さっきも言ったが我、陰キャぞ!?


 こんなヤンキーっぽい女子に質問できると思うか!?


 無理! 絶対に無理!


「じゃあそれだけだから」


 そう言って鴉画叉さんは何処かへ行ってしまった。


 た……助かったのか……俺?


 あぁ……生きてるって最高だわ。


 てかそろそろ授業だな。


 ……生きてるってしんどいわ。


 その後も授業を受けてお昼ご飯を食べる時間になった。


 俺さ、今朝の事があったからマジでこう思うんだ。


 ボッチ最高ぉぉぉぉぉぉ!!!!


 だって考えてごらんよ、一人なら誰かに何か言われる事ないんだぜ?


 悪口だの愚痴だの。


 もちろん最近の学校や世間の流行を教えてくれる人もいるが……それネットで良くね?


 You◯ubeとかTik◯okとか見れば大体の事分かるくね?


 だっ、だから俺は友達を作らないのだぁー!


 ……嘘ですめっちゃ欲しいです。


 それはそうと今日の弁当は何と愛花が作ってくれた弁当だ!


 ありがとう! 愛してるぜ!


 もちろん人としてな!


 蓋を開けると卵焼きとタコさんウィンナーとトマトとブロッコリーとおにぎりが入っていた。


 ……うん! いつも俺が作ってるのと一緒だ!


 まあ彼女から教わったんだから当たり前なんだけどね!


 だぁがしかし! 先生の手料理ぞ? 美味くない筈が無い!


 卵焼きを一口。


「…………うっま……」


 は? 塩加減完璧なんだが?


 というか少し甘みもある。


 ちょっと待て待てしょっぱさと甘さがあるのに違和感ないってどゆこと?


 どうやって作ってんの?


 おにぎりも一口。


「…………ほぴゃ?」


 美味すぎて変な声が出た。


 米の硬さ最高か? 具も凄え美味うめぇ!


 因みに具は昆布である。


 もうさ、愛花よ。


 店開け。


 売れる。間違いなく売れる。


 こんなお兄ちゃんほっぽって店開け。


 ……やっぱほっぽらないで。


 そして他にもトマトやブロッコリー、タコさんウィンナーを食べてそろそろ完食という頃……


「ねえ」


 ……何だろう、聞き慣れた声だけど全力で無視したい。


「ねえ」


 無視しろ俺! 無視しないとめんどい事になるぞ!


「そんな事するなら【探知】取り上げちゃおっかなぁー?」

「すんませんした」


 おいおいこんな美人な人を無視するわけないじゃないか! ハハハー!


「その【探知】どお?」

「どおって……まあ便利だよ」


「幸福、感じれてる?」

「……そう言われると微妙びみょーだなぁー」

「何で?」

「ただ探すだけの能力だから……まあ手に入れて最初は幸福感じやすいよ? だって無くし物とか見つけられるし。でもそれ以降はどうよ? 無くし物見つけちゃったあと」


「た……確かに感じにくいね……」

「そゆこと」


 そう言って最後に残しておいた卵焼きを食べる。


「ご馳走様。んじゃあ俺はもう行くよ」

「あ、待って」

「……何?」


 嫌な予感しかしねぇ。


「【探知】の面白い使い方教えようか?」


 …………ほぉ? 聞いてみてもいいかもしれない。


「どうやんの?」

「前に効果は名前通りって言ったよね?」

「うん」

「本当に名前通り〝何でも〟探知出来るんだよ。もし「詰んだ」とか「何したらいいか分かんない」ってなったらそれを発動するとそれを解決できる場所にピンが立つの。もちろん無い時は立たないけど」


 へぇー……面白い事を聞いたな。


 確かにそれなら幸福を感じれるかもしれない。


「ありがとう。普通に助かった。……けどさ」

「ん?」

「突然何でそんな事教えようと思ったの?」

「神様に『お前サボリすぎや。てか説明する内容少なすぎん? もっと説明しとけ』って言われたから」


 神様あざぁぁっす!!


 このスキルマジで有効活用します!


 ただ本人の意思じゃなかったのが少し悲しい……。


〈キーンコーンカーンコーン〉


「「あ」」


 チャイム鳴っちった。


 急いで戻らないと。


「じゃ! また!」

「うん」


 廊下を猛ダッシュ。


 多分今の俺ならフ◯ッシュにも勝てる。


 そしてギリギリ授業前に席に座る。


 はぁ〜……ここ最近授業ギリギリな事多くなってきたなぁー。


 気を付けねば。


 そして昼食後で一番やりたくない授業ランキング1位になるであろう数学最悪の授業が始まった。

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