【探知】の兄貴ぃ!

 放課後


 それは、部活がある者は部活をやる場所に向かい、入ってない者は……


 いや! 部活に入ってない者などこの学校にいない!


 帰宅部があるじゃないか!


 だから俺は部活に入っている超優等生です。


 間違いなく。


 という訳で部活通り帰宅しなきゃならないから俺は学校からさっさと帰るぜ!


 靴を履き替え校門へと向かう。


 ……あれ? 何もない。


 なんか呼ばれて遅くまで帰れないかと思ったのに。


 でもなら好都合!


 まあ念の為【探知】で俺が普通に幸せに帰れる道でも見ておくか。


 そうするとここら一帯の地図が頭に描かれ……目的の場所に赤ピンとそれに続く赤い線が描かれた。


 ……カーナビか?


 まあ良いさっさと帰ろう。


 そんで道を歩いていて思ったんだけどさ……これ、遠回りしてね?


 いやまあ面倒事に巻き込まれるくらいなら全然遠回りした方が良いんだけどね!


 いつもより約15分遅れて駅に到着する。


 いやぁーいつもと乗る時間が違うから知らない人沢山いるなぁー。


『まもなくー、一番線に――』


 あ、そろそろ電車来るな。


 しかしその時、フワァっと風が吹いた。


 ……いや電車が来るから風が吹くのは当たり前だよね。うん。


 なんか皆んな凄い階段の方向いてるけど気にしない気にしない。


 電車が到着し、ドアが開く。


 さっさと乗って現実から逃げよう。


 出来る限り奥の方へ行き吊り革に掴まる。


 因みにカーナビ(?)通りに向かった結果、車両的には最後尾で乗る位置も最後尾になってしまった為、車両替えはほぼ不可能だ。


 この時間意外と混んでるんだね。


 さて……と。一ついいかな?


 関わりたくない現実が近づいてきてるんだが?


 おいカーナビ野郎! 話が違うぞ!


 普通に幸せに帰れる道じゃなかったのか!?


 見てみろ! もしかしたら俺の隣に……?って期待して見事にスルーされた男の今の顔を!


 バイ◯ハザードのリヘ◯ラドールみたいになってるぞ!


 おいおい待て待て今朝みたいな事になるなよ!? なるなよ!?



 …………現実は、真横に来た。



 ほあああぁぁぁー!!


 やばい。


 死ぬ。


 視線? そんなのもう30本くらいブッ刺さってますが?


 マジで痛い。


 はっ、現実花園さん……。


 わざとなの? それとも素なの?


 素だとしたらそれはもう才能だぞ?


 ……絶対才能なんだろうなぁー。


 めちゃくちゃ睨まれながら電車が出発する。


 ダレカタスケテ……。


 花園さんが真横にいるのは良い意味でも悪い意味でもヤバい。


 ……普通に降りればいいじゃないか。


 そうじゃん。もう一つ後から来る方に乗れば万事解決だ。


 そう思いながら次の駅が来るのを待つ。


『⚪︎×ー、⚪︎×ー。お出口は左側です』


 よし、降りるか。


 そして一歩を踏み出そうとした――が。


『ドドドドドドド』


 うわっ!? 凄ぇ人!


 ちょ! 待って! 俺を跳ねけるな!


『ドアが閉まります。ご注意下さい』


 ……降りれなかった。


 というか花園さんの真横から動けなかった。


 あぁー! 新しく乗ってきた人達からも睨まれてるよぉー!


 ほんま助けて……。


 だがしかしここで事件が起こる。


「おいしょっと」


 ……目の前の席が……空いた!!


 朝の地獄の再来だぁー!


 絶望。もうそれしかない。


 でもやる事は決まってる。


「どうぞ」と言う事だ。


 でもな諸君、ふつー陰キャが一日に2回も学園のマドンナに話しかけられると思うか?


 無理だ。


 そんな度胸あるなら今頃陽キャになってるわ。


 ……でもぉ……


 言わないと殺される!


 目線が! 目線が「さっさと言えやあの野郎」って言ってる!


 え? 陰キャは普通に一日に2回くらいマドンナに声かけれるっしょ?


「どっ、どうぞ……」


 言えたぁー! 噛まずに言えたぁぁー!


「えっ、あっ、ありが――あれ?」


 ん? 僕のこと見てます? 僕の顔変ですか? あっ、元から変でしたわごめんなさい。


「朝、電車で会いましたよね?」


 マッ、マドンナ様が僕の事を覚えてくれていただとぉー!?


「はっ、はい! 会ってます!」

「あの時はどうもありがとう。ちょっと気まずかったから」

「いえ、そんな……」


『ジィィィィィ〜』

『ジロロロロロロロ』

『グサグサグサグサグサ』


 視線の効果音がもう人外化してね!?


 ジロロロロロロロってどうやったらそんな効果音になるんだよ!


 リッ、リヘ◯ラドールもこっちを見てる……。


 ……あっ、ラスラ◯ンネになっちゃった。


『まもなくー、××駅ー、××駅ー。お出口は――』


「あっ、私ここで降りるんだ。譲って貰っちゃったのに、ごめんね?」


 そう言って花園さんは絵文字とかである「ごめんね」ポーズをした。


 はっ! まずい! ここでそんな事をやると――


「ウガッ」

「アッ」

「尊……い……」

「あれ? ここは何処? 私は誰? あっ、ここが楽園エデンか……」


 ……言わんこっちゃない。


「きっ、気にしないでください」


 少し苦笑いになりつつそう言う。


「じゃあ〝また〟学校で!」


 そう言って花園さんは電車から降りる。


 ……またって言ったか? また?


 あれ、またってどう言う意味だっけ?


 スマホで見てみる。


====================


         また 


  意味  別。今回でなく、この次。


       「―の機会」


====================


 うん。俺の知識通りだ。


 つまり花園さんはそういう意味で言ったのなら……。


 あば、あばば、あばばばばばばば。


 マドンナにそんな事言われたらオーバーキルってレベルじゃないっすよ……。


 目の前の空いている席に座る。


 なんか凄い見られている気がするけど気にしない気にしない。


 気にしたら残りの20分が地獄になる。


 スマホをいじる。


 最近ダンジョン系ゲームをやってるんだけど、意外と面白いんだねこれ。


 主人公の成長をめっちゃ感じれるし、強い装備を作った時の達成感も凄い。


 このゲームジャンル考えた人神かよ……。


 そしてあっという間に降りる駅になった。


 あったかい視線に見送られながら降りる。


 いやぁーマドンナと2回も話せるなんて……しかも「また」……か。


 今日はいい日だなぁー。


 ……っは! 【探知】!


 そうかお前これを読んで……。


 ……すんませんしたっ! 兄貴ぃ!


 ふんふんと鼻歌を歌いながらスキップして帰る。


 花園さんが隣にいた時よりは大分マシな「なんだあいつ」的な視線が集まるが知ったこっちゃないぜ!


 我、一日だけで学園のマドンナと2回も話した男ぞ?


 あーもうこれ末代まで誇れるわ間違いない。


 …………花園さんって俺の運命の人なんだよな……?


 いや、緊張で忘れてたけどさ。……本当にそうなのかねぇ?


 2回も近くで見たから分かる。


 めっちゃ美人だ。それに声も綺麗だし姿勢もしっかりしてる。


 そんな人がさ、俺とよ?


 信じられるかい?


 近くにある公園のベンチに座る。


 あー、ここのベンチ座ったのマジで小学生以来かもしれん。


 まずこの公園に来る事がなかったし。


 寄った理由は……疲れたから。


 いやだってねぇ!?


 運命の人といえど緊張するもんですよ!?


 今まで生きてきた中で一番大変な日だったと思う!


 てか絶対そう!


 背もたれと一体化してるレベルで疲れた……。


「あれ?」


 公園の出入り口の方から名前を呼ばれる。


「ん?」


 その方へ向くと……


「岩井じゃん」


 鴉画叉さんがいた。

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