マジでピンチ何だが?
『ピピピピ ピピピピ ピピピピ ピピピピ』
……朝になってしまったか。
うるさい目覚まし時計を止める。
「うぅ〜ん……」
目覚まし時計を止めた手を布団に戻すのがめんどくさい。
そう思いつつ手を布団に戻して……今度こそ寝ようとする。
「お兄ちゃーん、起きて下さぁ〜い」
来たぞ、本命の目覚まし時計が。
「……おにぃーちゃぁ〜ん」
無視だ無視、俺は今寝ているんだから聞こえてないんだ。
「起きないと私もう家事やりませんよ?」
「起きます起きます直ぐに起きます」
この脅しをされると起きるしかない。
愛花のお陰でこの家の家事は回っていると断言できる。
それがストップしたら……うん、
「朝ごはんも出来てますから、早く来て下さいねー」
そう言って愛花は去って行った。
…………学校かぁー……。
昨日の事がフラッシュバックする。
花園……先輩……。
いや、今考えるのはよそう。
普通に学校行って普通にすりゃあ良い。
制服を来て妹の待つリビングへと向かう。
「やぁ〜っと来ましたか。おはようございます、お兄ちゃん」
「うん、おはよう」
「どうですかお兄ちゃん?」
「いつも通りバカ美味い」
実際料理を教えてくれたのは愛花である。
家事が出来なかった俺にこれなら……という思いで教えてくれたらしい。
洗濯や風呂掃除が出来ないのに何で料理を教える事にしたのかは謎だが……。
マジ女子力高すぎ……。
ハンパねぇっす。
ふと時計を見るとそろそろ学校に向かう時間になっていた。
「んじゃあ俺はもう学校に行くよ」
「はい! いってらっしゃいお兄ちゃん!」
そして玄関を出て最寄駅まで向かう。
目的の電車に乗ったが、あいにく席は空いていないようだ。
まあこの時間はサラリーマンとかが乗るからこれが普通だ。
吊り革に掴まること約20分
突然電車内にフワァ……と神風が吹いた。
そう、花園さんが乗って来たのである。
移動する彼女を誰もが見つめる。
見られているのに気付いているのかいないのかは分からないが、彼女はスピードを変えずにスタスタと歩いて来ている。
…………待て、何かこっち来てね?
ちょ! マジで待て! どんどん近づいて来てるんだが!?
そして花園さんは俺の直ぐ真横に来た。
し、心臓がバクバクしてるのを感じる。
やべぇ、近くで見るとここまで美人なのか。
いやでもジィーッと見るのは失礼だからここら辺で見るのはやめておこう。
じゃないと
それにしても……
『ジィ〜』
『ジロォ〜』
『ジロジロジロジロ』
『グサッ』
視線が! 視線が痛い!
あとなんか絶対視線が物理的に刺さった音がした!
別に体に異常無いけど!
てか花園さんが隣に来ただけでそんななります!?
いやまあ確かにとんでもなく美人だけど!
こんな陰キャボッチには釣り合ってないってレベルじゃないけど!
流石にヤバすぎじゃないですかねぇ!?
……ふぅ、一度落ち着こう俺。
別に〝たまたま〟学園のマドンナが隣に来ただけじゃないか。
そんな焦る事じゃな…………焦る事だわ。
花園さん?
隣に来られると周りから痛ったい視線喰らうんですわ。
まあ気付いてないんだろうけど!
はぁ……朝からとんでもない目に遭うな俺……。
するとその時、目の前の席が空いた。
そしてここで起きる問題が一つある。
そう! 『お互い席譲っちゃう事件』だ!
目の前には空いた席が一つ出来た時に高確率で起こるこれは、その椅子の目の前にいる二人の内一人が「どっ、どうぞ」とか言わなくてはならない!
そして仮に性別が違った場合、男子はほぼ確実に女子に席を譲らなければならない!
そしてその時相手に話すのは必須!
そんな凶悪過ぎる事件が今俺に降りかかった!
こういう時どう話しかければ良いんだ!?
普通に「どうぞ」なんて言えるわけないだろ!?
思い出してくれ皆。
相手:学園のマドンナ 俺:クラスの誰にも認知されてないレベルの陰キャ
これで普通に「どうぞ」なんて緊張しすぎて言えるわけないだろぉ!
で、でもここで席をお互い譲らずに席が目の前に一つポッカリと空いているのは気まずいにも程がある!
こっ、ここは勇気を振り絞るしかない……
頑張れ俺! 妹には普通に話せてるだろ!
「ど、どうひょ……」
あ、終わった俺。
「え、あ、ありがとうございます」
そう言って花園さんは譲った席に座る。
……………………やっちまったぞ俺。
噛んじゃったぞ俺。
ま、まあ向こうは気にしてないっぽいし? 多分大丈夫だし?
……これ俺の中で一生後悔する事になるだろうな……。
何故だか電車の揺れが俺を慰めるように感じた。
♪
学校に着いたわけだが…………緊急事態発生! 緊急事態発生! 今まで人生で体験した事ない事象が起きています!
何故だか皆に睨まれています!
うん、心当たりしかねぇ。
花園さんと電車内で隣になったからだろう。
おい待て皆! ただ隣になっただけだぞ!? そこまでなるか普通!?
「ガルルルルル」
あ、人外の方がいらっしゃいましたか。
ッな訳無ぇだろ!
ちょっとこれ以上睨まれるの嫌だしホームルーム始まるまで誰もいない所へ行きたい……。
こういう時こそ【探知】じゃないか!
早速発動するぜ!
頭に学校の地図が描かれて赤いピンが複数箇所立つ。
おや、結構誰もいない場所あるもんなんだね。
一番最初に目に付いた所に走って向かう。
「ここは……」
その場所は普段鍵がかかってる扉に繋がる階段だった。
確かにここなら誰も来ないだろう。
ホームルームが鳴るまであと七分はある。
それまでここで大人しくするとしよう。
…………あれぇー? おかしいぞぉー? なんか階段をカツカツと登る音がしてるんだが?
…………ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。
階段の上の方に
マジかよ何でこんな所に来んだよ!
頼むからここまで来ないでくれ!
そう願いながら目を瞑る。
……あ、足音が止んだ?
そろ〜りと見てみる。
「ッ!?」
そこにはこの学園の有名人が一人、『
この学校に似つかわしくないヤンキーっぽい人である。
髪は地毛らしいがかなりの茶髪。
俺が見つかったら終わる。
「おい」
……僕の事じゃないですよね?
「お前だよお前、何私の事ジロジロ見てんだ?」
あっ、俺終わった。(本日2回目)
恐る恐る階段に立つ。
「えと、ごめんなさい」
こういうのは先に謝っとくが吉!
「何でお前はそんな所いんだよ?」
「その、ホームルーム始まるまで誰もいない所いたいなぁーって」
けっ、結構話せてんじゃん俺。
電車内ので少し耐性付いたのかな?
「そうか、ならば行ってよし」
そう言って鴉画叉さんは親指で下りる方の階段を指さす。
「しっ、失礼しました〜」
そう言って横を通り過ぎようとすると――
「あぁそうだ。お前、名前なんだ?」
「いっ、岩井 了太です……」
「そうか、悪ぃな引き留めて」
「だっ、大丈夫です!」
そう言って階段を駆け降りた。
……朝からマジで疲れたぁー。
幸いホームルームには間に合ったけどマジ怖かった。
……今日この後何もない事を祈ろう。
そう神に祈ると――
「あぁそうだ岩井、後で職員室来てくれ」
どうやら神は僕の味方ではないらしい。
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