運命の人発見
無事教室に戻り、先程の出来事を思い出す。
うーむ。
結構可愛かったな。
いやいやいやいや、そんな事を考えてちゃダメだ。
取り敢えず今はこの【探知】の活用法について考えなくては……。
と言っても、どうせ無くしちゃった物とか探してる物の位置が分かるって感じだな。
……いやまあ確かにありがたいけどさ。
幸せを届けに来たんだったらもうちょっといいのあったんじゃない?
【カンニング】とか【身体強化】とか【催眠】とか。
……最後のやつは私情挟みまくってたわ。
まあでも十分【探知】も便利スキルか。
文句言ってても何かが変わる訳はないし、この授業終わったら【探知】でなんか色々やってみよう。
そう思っているとチャイムが鳴って古典の授業が終わる。
……やべぇー殆ど聞いてなかった。
ま、後で教科書でも読みなおすかな。
体に力を込めて試しに読みたいと思っていた本を探知する。
……図書館の奥の方にあるらしい。
言ってみるか。
「……あった」
マジであった。
……夢……じゃないよな?
「いよっしゃー」
小さな声でそう呟いてガッツポーズをとる。
これまで無くした物って結構あるからそれを探そう。
それから学校で無くした物をひたすら【探知】で見つけていった。
流石に全部とはいかなかったが、大半の物は帰ってきたので良しとする。
ふぅー……このスキル日常的に使う事あんま無いな。
皆よく考えてみてくれ。
探し物をしている時は重宝するがそれ以外の時に使うか?
いや、使わない。
これならもうちっと良いのが欲しかったかもしれない。
下校時間になったので下駄箱へ向かう。
「岩井」
ん? 何だ?
目の前には先生……俺なんかやっちった?
「この書類を
早是君とは、この学園の人気者の一人だ。
コミュ力が非常に高く、いつも友人が彼の机の周りにいる。
いやいや待て待て何で俺に? こんな影の薄い奴に何で頼む?
「じゃあ頼んだよ」
そう言って先生は言ってしまった。
……重い。
早是君は俺とは違うクラスだが、どのクラスかは分かる。
まずこの学校には四つの組があり、A B C D に分けられている。
別に成績順に分けられているわけではないので、Dの奴が馬鹿にされるとかは無い。
そして彼がいるのはC組だ。
重い書類を持ちながらゆっくりと階段を登ってC組へ向かう。
やっぱり重いのやだなぁー。
あっ、因みに俺はA組だ。
そして何とかC組に行ったが……
「いない……」
まあ友人に囲まれまくってる彼だ。もうカラオケとかそういうところに行ってるんだろう。
でもまあ、まだいるかもしれないので探す。
先程俺が下駄箱にいた時には早是はいなかったはずだ。
いたら周りの奴らがはしゃいでるからすぐ分かる。
校内に残っている事を祈りながら歩く。
あぁー早是君どこにいるんだ?
そう思っていると足がもつれてつまずいた。
「やべ!」
体に力を込めてなんとかセーフ!
だが、その瞬間頭の中に立体的な地図が描かれ、赤ピンが刺された。
そしてそのピンは現在進行形で移動中である。
「これってもしかして……早是君の位置?」
え? 何で【探知】が発動してるんだ?
……あ、さっき力を込めたからか!?
ていうか【探知】って人にも有効なの!?
ラノベとかじゃ大体探知出来るのって物だけだから人に出来るとは思わなかった。
マジかー、人探しも出来るのか。
そう考えると結構便利スキルかもしれない。
俺の中でコロコロと【探知】に対する評価が変わってるのは気にしないで頂きたい。
一応まだ校舎の中にいたので書類を届けるために歩いた。
しっかりと転ばない様に気を付けて階段を降りて早是君のいる階に着く。
そして
「いた……」
早是君とその友人達。
「はっ、早是君!」
「ん?」
早是と友人達が全員こちらに振り向く。
「どうしたの?」
「あっ、えと、その」
一つ言っておく。
陰キャが陽キャの輪の中に入って会話をするのはほぼ不可能だ!
さらにこんなに凝視されれば
緊張して声が出ずに終わるくらいしか無い。
「あ、もしかしてその書類を届けに来たのか?」
「そ、そう」
ほっ、空気の読める人で助かった。
「ありがてぇー、マジサンキュー!」
「どっ、どういたしまして……」
そう言って彼は俺の手から書類を取って友人達と共にどこかへと向かった。
「な、なんとか渡せたぁー」
その場にへたり込む。
「お疲れ様」
聞き覚えのある声がした。
「あ」
幸天さんだ。
「【探知】が人にも対応してるのに気付くの遅すぎ」
「だったら最初に説明してくれよ!」
「だから最初に名前通りって言ったじゃん」
「というかどうやってこれで幸せになれるんだ!? 幸せを届けに来た天使って言いながら全然幸せじゃないしむしろ不幸なんだが!?」
そう言うと彼女は少し真面目な顔になって
「陽キャ中の陽キャと少し話せたじゃん」
と言った。
「……」
確かにそうだ。
この【探知】がなければ早是君を見つけられず、少し話すということは起きなかっただろう。
「幸せってね、大半は一度にドンってくるものじゃなくて、ちょっとずつ、ちょっとずつ来るものだよ」
そう言って幸天さんは夕焼けになった空を眺める。
「ま、この調子で頑張れば幸せになれるよ」
「……ありがとう」
「じゃ、私はもう行くよ」
そう言って彼女は昼と同じ様に走って行ってしまった。
「はぁー」
幸せ……ねぇー。
ま、ちょっとずつ来る幸せを楽しむとしよう。
そう思いながら廊下を歩き出すと……
「ねーえー◯◯くぅーん」
「どうしたんだい僕のプリンセス」
「今度の土曜日デートしよぉー」
「勿論だとも。プリンセスのためならプリンスはどこにでも行くものだからね」
「やったぁー!」
……何だ? あのカップルは?
彼氏ヤバイ奴すぎじゃないか?
てか彼女の方は本当に何で彼と付き合ってるんだ!?
……え? 流石にこれはちょっとずつ来る幸せにカウントされてないよね?
違うよね?
こんな見るだけでなんか不快になるやつな訳ないよな。
うん、そんな訳ない、大丈夫だ。
「……カップル……ねぇー」
手を頭にやり、下駄箱へと向かう。
あっ、そうだ。
俺の運命の人って誰なんだろう?
さっきのカップルを見て思いついた。
【探知】ならそれが分かるんじゃないか?
そう思いながら発動しようとするが……。
「いやいや、俺に出来るわけ」
俺に彼女が出来るなんておこがましい事考えてはだめだ。
……でも……まあ……試すくらいは良いよね?
まず何処にいる人なんだろぉーなぁー?
そう思いながら発動する。
そして頭の中に地図が描かれ始めた。
俺の運命の人存在したんだ!?
そしてまず地図が完成した……が。
「え? この学園……?」
地図はこの学園を描いていた。
そして赤いピンが立つ。
ピンは動いていない。
「場所は……生徒会室!?」
つまり俺は将来この学園の生徒会の人の誰かと結ばれるという事か!?
走って生徒会室の前まで移動する。
そして扉についている細いガラスから中を見てみる。
「…………………………………………え?」
生徒会室にいたのはたった一人だけだった。
その人物は――――
「生徒……会長……?」
嘘だろ? 俺の運命の人って花園さんなの?
とんでもない事実に驚きを隠せない。
でも流石に生徒会室の前にずっといるわけには行かないな。
下駄箱へと音立てないように急いで向かうのであった。
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