スキル【探知】で運命の人を探したら通ってる学園のマドンナでした 〜 どんなピンチも【探知】でどうにか切り抜けます 〜
鬼来 菊
【探知】って……何これ?
この学校には非常に優秀な生徒が集まっている。
その中でも特に目立つのが『
成績優秀スポーツ万能
そしてこの学園の生徒会長であり、校長先生の娘でもあるのが、彼女である。
一方で俺は……
「ねえねえこの間教えた映画見た?」
「見た見たすっげぇ面白かった!」
「でしょー?」
「今度は君と映画館に行きたいなぁー」
「やっ、やめてよーもぉー」
おっと、この会話をしているのは俺じゃない。
この熱々なカップルの真横の席に座っている陰キャが俺である。
俺の名前は『
成績は普通で部活は帰宅部。
顔は中の中辺りで趣味と言える趣味は無し。
さらにぶっちゃけクラスの誰にも認知されてないレベルで影が薄い。
あー、なんでだろう。頭痛くなって来たなぁー。
ほんとなんでだろぉーなー。
そんな事はさておき、一人の女性が廊下を歩いていた。
次々と教室の扉がガラガラと開く音が聞こえる。
そう、花園さんだ。
「花園さん……今日も美しい……」
「馬鹿野郎、花園〝様〟だろ」
「はっ、花園様ぁー!」
廊下を通るだけでこれである。
この学園大丈夫か……?
取り敢えず、花園さんはマジでこの学園のマドンナなのだ。
彼女がファサァっと髪を後ろにやればそれだけで神風が廊下に吹いたと錯覚するレベルの人気ぶり。
……もう一度言おう。この学園大丈夫か?
俺もそんな花園さんの事が好きではあった。
もちろん人として、だ。
性的に? 無理無理無理無理。
ライバル多すぎ。
サッカー部のエースとか野球部のエース、他にも様々なライバルがいる。
そんな彼らに俺が勝てると?
否ッ! 勝てるわけがないのだ。
だから俺はぶっちゃけ青春を諦めている。
いやだって叶いもしない彼女とのキャッキャウフフな青春を期待しても意味はないだろ?
そんな無駄な事を考えている暇があったら普通にゲームでもするべきだ。
「ほらぁー席につけぇー。ホームルーム始めっぞぉー」
先生がやってきて花園さんを見ていた生徒達を現実へと引き戻す。
「あぁ……
「大丈夫だ! また花園様が来たら
「ああ……ああそうだな!」
花園先輩を見たものは意識が楽園に連れて行かれるとかなんとかそんな噂もあったが……まさか本当だったとは……。
花園さん……とんでもない人だな……。
そしてそのままホームルームが終わり、授業が何個か終わって
当然一緒に食べる人はいない。
今日も今日とてボッチ飯〜♪
こうやって少しチャラい感じにしないと周りのリア充オーラで俺が押しつぶされる。
因みに弁当は手作りである。
昔一回モテようとして料理をしていたが影が薄すぎてぎて誰からも「誰?」と言われる為なんも役に立たなかったと思っていたが、こういうのに役立ったのでやってて良かった。
自分で作って言うのも何だが結構美味しく出来てると思う。
それをどこで食うか? 決まっている。
トイレ……ではなく、普通に中庭だ。
この学園の中庭は中々に広いのでカップルがいてもあまり気にせずに食べられる。
何より外で食うとなんか美味しく感じる。
ただそれだけの理由で中庭で食べていた。
今日の具材は卵焼きとタコさんウィンナーとブロッコリーとトマトとおにぎりである。
……改めて考えてみると結構普通だな。
でもまあ、それの方が良いかもしれない。
ベストイズザシンプルとも言うしね。
もぐもぐと弁当を食べる。
そしてもう少しで完食するというところで
「力、欲しい?」
と声が聞こえた。
「……え?」
なんだ? 今の?
……まあ空耳か。
俺に話しかける人なんていないだろうし。
「力、欲しい?」
「うわっ!?」
まっ、まさか俺に話しかけているのか!?
急いで辺りを見回すと、この学園の制服を着ているが見た事がない女性がいた。
まあ陰キャボッチだから知らなくて当然かもしれない。
というか銀髪だな……この学園髪染めるの禁止だった気が……。
「力ぁー、欲しいー?」
「えっ!? あ、力? ほっ、欲しいです!」
力ってなんだ?
……でっ、でもこんな展開で「力はいらない」と言う男子がいるだろうか?
いない。絶対いない。
「分かった。じゃあはい」
そう言われた瞬間、頭の中に一つの単語が浮かんだ。
【探知】
「探……知?」
「んじゃ、さいなら」
そう言って彼女は校舎へと歩いてく。
「待て待て待て待て! なんか説明とかないのか!?」
「名前通りだよ。じゃ」
いやなんでそんな早く帰りたいんだよ!
「てかあんた誰!?」
「…………幸せを届けに来た天使?」
「なんで疑問系なんだよ」
あれ? もしかして俺間違った選択しちゃった?
「はぁー……ねえ、ラノベとかで【探知】スキルで俺TUEEEEEEEする作品とか読んだ事ないの?」
読んだ事はある。
でもね幸せを届けに来た天使(自称)さん。ここ、
「取り敢えず発動してみて」
「どうやるんだ?」
「こう……グッと」
そう言って彼女は柔道とか空手で最初にやるオス! みたいなポーズをとった。
……説明下手すぎん?
それとも感覚的に分かるもんなの?
試しに手に力をグッと込めてみる。
……何も起きない。
「もっとこう……体全体でグッて」
体全体か……立って彼女と同じポーズでグッとする。
「あ、探したいものを思い浮かべないとダメだった」
……もうお前堕天使じゃね?
じゃあ試しに……俺の数学のノートにしてみるか。
勿論だが教室にある。
数学のノートを思い浮かべて先程と同じ様に体に力を込める。
すると脳内で立体的な地図が描かれ、ノートがある場所に赤いピンが立った。
「おぉ……凄ぇ」
「どうやら出来たみたいだね。じゃあ今度こそさいなら」
「待てぇ! 名前! 名前と学年教えて!」
仮にまた会った時に【探知】の事を聞きたいからだ。
今聞いても……どうせ「じゃ」と言われて終わる。
「学年は三年。そんで名前は、幸せを届けにきた天使だって言ったじゃん」
「そんな名前の奴がいるか!」
「んじゃぁー幸せに天って書いて
騙されるな皆。
幸にしょうなんて読み方は無い。
「てか何で昇天みたいな名前にした!?」
「さっさと天界に帰りたいという今の私の願いを名前にした」
そう言って彼女は手をVサインにした。
「じゃあ私はもう行くから。迷える子羊に幸あれ〜」
そう言って彼女は校舎へと走って行ってしまった。
……【探知】…………ねぇー。
まあ無くしたものとか探すか。
そう思いベンチに座ると
〈キーンコーンカーンコーン〉
と学校のチャイムが鳴った。
「あっ、もうこんな時間か」
弁当を袋の中に入れて教室へ戻るのだった。
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