第30話
まるで自慢をするように得意げに話す灯牙。
真面目な話をしていると、体躯の良さも相まってどこか怖く映ってしまう彼だが普通に会話をするとそうでもないのかもしれない。存外、やはり人は見た目ではなくしっかりと話した後にどう思いかを考えないといけないな、と内心で思う理玖。思ったところで、次回からそれを活かすのか、と言われて仕舞えばそうでもないのかもしれない。
何せ思っていても、それを実際にすることはきっと難しいのだから。
「あの学長、森を持っていたんですか。それは初耳でした。……今度プライベートで森の探索許可を貰うのもいいかもしれませんね」
「おいおい、森の中で何をするつもりだい。……まぁ、別に俺は関係ないから良いが蝶梨ちゃんの邪魔をすることだけは止めてくれよ。うっかり手が滑っちまうかも?」
「まさかぁ。菰是さんがうっかり手が滑る時には、きっと私もうっかり指を鳴らしてしまうかもしれないですね?」
なんともないそのうっかりの話。
理玖は、二人が邪魔をしたら異能力を用いて攻撃をすると暗に言っていることに気づいて遠くを見てしまう。穏やかな声色、何でもない雰囲気。そして、にっこりとした笑顔。だが、どことなく二人を纏っている雰囲気は冷たくも鋭利なものを感じてしまう。
――この人たち、絶対に敵にだけはしたくないな。
「……えっと」
「ああ、そういえば。どうしてアンタらも来たんだい? 死体について気になる点があれば、蝶梨ちゃんと一緒について行くだろう?」
「死体についてもありますけど、私が見ても良く分からないので。餅は餅屋、という言葉通りに後で鳴無先生に解説を貰うんで大丈夫ですよ」
馨は欠伸をしながらも告げる。
だが、その言葉の話で行くと彼女がここに来る意味はないに等しい。だからこそ、馨の言葉を聞いて灯牙が眉をひそめて怪訝そうな表情をしているのだろう。理玖は彼の行動原理などを知らないが、話の中に蝶梨が出てくることが多い。おそらく、彼からしてみれば蝶梨は特別な存在なのだろう。
「ほう? ということは、アンタは別の理由があったここに来たということだ」
「まぁ、そういうことですかね。そもそも、そちらが探偵ごっこなどしなければ良かったことでは? ……じゃあ、ここからはお仕事の話と行きましょうか」
馨は伸びをして、部屋にある明らかに高そうなソファに腰を掛けて足を組んだ。
腕を軽く組んでおり、まるでどちらがこの屋敷に住んでいるのか分からないような態度を示している。灯牙は、彼女の態度には慣れているのか。もしくは分かっているたのかは分からないが、そっと馨の手前にあるソファに腰を下ろした。
「ほら、高砂少年も座ったらどうです。ずっと立ちっぱなしは疲れるでしょう?」
「えっと……じゃあ、失礼します」
「ああ、どうぞ。アンタよりも勝手知ったるなんとやら、といった具合で座っている女がここに居るから気にすることもないだろうな」
視線では馨を一瞥し、声色は彼女の態度について嗤っている。
気にすることもなく馨は足を組みなおして、理玖に早く隣に座るように視線で訴えている。彼は、軽く会釈をしてから控えめに隣に座ってはそのソファの座り心地に一瞬だけ驚いてしまう。
「じゃあ、話を進めようか」
「私は腹の探り合いなどは苦手なので、今日は直球で行きますね。まずは、昨日は楽しい茶番ありがとうございます。既に、うちの莉音さんがあの探偵役をしていたのは貴方たちであると把握済みです」
「貴方たち、ねぇ?」
「言い方が良くなかったですかね。貴方たちが所有しているパソコンから行われていたことは把握済みです、ね。話の仕方や展開の仕方などを考えるに蝶梨さんではなくて菰是さんが探偵だったのでしょうね」
「あの学長、森を持っていたんですか。それは初耳でした。……今度プライベートで森の探索許可を貰うのもいいかもしれませんね」
「おいおい、森の中で何をするつもりだい。……まぁ、別に俺は関係ないから良いが蝶梨ちゃんの邪魔をすることだけは止めてくれよ。うっかり手が滑っちまうかも?」
「まさかぁ。菰是さんがうっかり手が滑る時には、きっと私もうっかり指を鳴らしてしまうかもしれないですね?」
なんともないそのうっかりの話。
理玖は、二人が邪魔をしたら異能力を用いて攻撃をすると暗に言っていることに気づいて遠くを見てしまう。穏やかな声色、何でもない雰囲気。そして、にっこりとした笑顔。だが、どことなく二人を纏っている雰囲気は冷たくも鋭利なものを感じてしまう。
――この人たち、絶対に敵にだけはしたくないな。
「……えっと」
「ああ、そういえば。どうしてアンタらも来たんだい? 死体について気になる点があれば、蝶梨ちゃんと一緒について行くだろう?」
「死体についてもありますけど、私が見ても良く分からないので。餅は餅屋、という言葉通りに後で鳴無先生に解説を貰うんで大丈夫ですよ」
馨は欠伸をしながらも告げる。
だが、その言葉の話で行くと彼女がここに来る意味はないに等しい。だからこそ、馨の言葉を聞いて灯牙が眉をひそめて怪訝そうな表情をしているのだろう。理玖は彼の行動原理などを知らないが、話の中に蝶梨が出てくることが多い。おそらく、彼からしてみれば蝶梨は特別な存在なのだろう。
「ほう? ということは、アンタは別の理由があったここに来たということだ」
「まぁ、そういうことですかね。そもそも、そちらが探偵ごっこなどしなければ良かったことでは? ……じゃあ、ここからはお仕事の話と行きましょうか」
馨は伸びをして、部屋にある明らかに高そうなソファに腰を掛けて足を組んだ。
腕を軽く組んでおり、まるでどちらがこの屋敷に住んでいるのか分からないような態度を示している。灯牙は、彼女の態度には慣れているのか。もしくは分かっているたのかは分からないが、そっと馨の手前にあるソファに腰を下ろした。
「ほら、高砂少年も座ったらどうです。ずっと立ちっぱなしは疲れるでしょう?」
「えっと……じゃあ、失礼します」
「ああ、どうぞ。アンタよりも勝手知ったるなんとやら、といった具合で座っている女がここに居るから気にすることもないだろうな」
視線では馨を一瞥し、声色は彼女の態度について嗤っている。
気にすることもなく馨は足を組みなおして、理玖に早く隣に座るように視線で訴えている。彼は、軽く会釈をしてから控えめに隣に座ってはそのソファの座り心地に一瞬だけ驚いてしまう。
「じゃあ、話を進めようか」
「私は腹の探り合いなどは苦手なので、今日は直球で行きますね。まずは、昨日は楽しい茶番ありがとうございます。既に、うちの莉音さんがあの探偵役をしていたのは貴方たちであると把握済みです」
「貴方たち、ねぇ?」
「言い方が良くなかったですかね。貴方たちが所有しているパソコンから行われていたことは把握済みです、ね。話の仕方や展開の仕方などを考えるに蝶梨さんではなくて菰是さんが探偵だったのでしょうね」
馨の言葉一つ一つに何がしらの反応を見せる灯牙。それはあえてのことなのか、この場の空気に圧倒されて胃痛を感じ始めている理玖にはわからない。ただ一つ言えることは、探り合いは無しにしようと言いながらも二人は肝心なことをあえて言わずに話を進めている可能性があるということだ。
今回は完璧に置き物になるか、と脳内で結論づけながらも早くこの重たい雰囲気から逃げることはできないかと考えてはすぐに諦める。トイレなどでこの場から一時的にいなくなることはできるかもしれないが、場所がわからないために逃げられるのは二人からの空気だけであり灯牙の雰囲気からは逃げれる可能性が低い。
――ここは大人しく、死体確認組が戻ってくるまで置き物に徹するしかないのかもしれない。
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