第4話 乱入者
「ヨル、一緒に寝ようよ」と、わたしは誘ってみる。
「紙が喰えるならそれでいい」と、ヨルは言う。
「じゃ、決まり」と、わたしは同じベッドに入る。
扉を叩く音が聞こえる。
「勇者ヨル・ダルフォン様、ご依頼が来ました。出て来てください」と、マリアンナの声だ。あの修道女めぇ。
「ヨル、暗殺の依頼だって。まあ、それがここで暮らしていい条件らしいし、行こうか、ヨル」
「…リズ。すまないな」と、ヨルは突然正気に戻ったのか、わたしの目を見てそんな事を言う。
「ううん。大丈夫よ、ヨル」
わたしは恥ずかしさからか、地面を見てしまう。ヨルはすでに正気を失ったのか聖書を破って食べている。ちょっとかっこよかったのにぃ。
わたしたちは祈りの部屋に来ていた。教会で
「で、あなたが依頼者?こんな時間にどんな用なの?」と、わたしは聞いてみる。相手はやっとわたしの方を見て、
「……金貨は3枚あります。暗殺してほしいんです」と、テーブルに金貨を依頼者は置いた。
「やっと見てくれたわね。それで誰を?せめて写真ぐらい持って来ているんでしょ」
「はい」と、依頼者は写真を三枚、胸の谷間から出して来た。
三人とも青い髪をした人物だ。男二人と女一人。
「ほんとに暗殺していいの?」と、わたしはテーブルに置いてあった金貨を取る。ヨルはずっと聖書を破いて食べている。
「お願いします」【ウィーグルド家、教会の設立時から出資金等で協力してくれている貴族家だ】
「ウィーグルド家……。この教会に貢献してくれている一族よねぇ。三人とも。まあ、深くは聞かないわ。正直、あなたにもそんなに興味があるわけじゃないし。ヨルのリハビリにでもなればって思ってるだけだし。この仕事は」と、わたしはヨルを見る。
「うん?おいしいぞ、聖書」と、ヨルは相変わらずだ。ただ視覚を共有しているので、写真の…うん?そういえばヨルの思考が流れてきたような。
て、ええ。ヨルといつでも念話みたいな会話ができるのぉ。
【目の前にいるのは末の娘だ。絵がうまくてな、絵を金貨300枚で何回か購入させてもらっている。ああ、どうやら、念話の方がまともに会話ができる】
「あ、あの…受けてくれてありがとうございます」
「そ、それどころじゃにゃい」と、わたしは顔を抑えてしまう。
「暗殺というか、この3人は君が呼び出せ。そして君がGOサインを出すんだ。背負う事になる。名前はテラサだったか」と、ヨルがまともに話している。
どうしちゃったの?急に何かまともになるモードでもあったのかな。
【何かの周期でリズの父親と入れ替わるようだ。今はオレだ。これからもよろしくな、リズ】
「は、はいぃ」と、わたしは顔を隠してしゃがみこんでしまう。
「明日の朝いちばんに噴水のある中央公園に呼び出しています。GOサインは人差し指と中指をくっつけて”バーン”または”さよなら”はどうですか?それで背負うっていうのは?」
「GOサインはそれでいい。リズとわたしでしっかりと聞いておく。背負うって言うのは殺せばわかる。まあ、ようするに魂のことだ」
「魂?」
「霊魂って言った方がいいかしら」と、わたしは補足する。
「れいこん?ああ、霊の事ですね」
「まあ、ちょっと違うけど。おおむね方向としては合っているわ。もう一度聞くけど、ホントにいいのね。あなたのお兄さんとお姉さんでしょ」
「もう耐えられないんです。だからお願いします」と、テラサこと、依頼者は腕をまくって見せた。青く滲んだ跡がある。それも片腕だけで3ヶ所も青く滲んでいた。
【暴行を受けて、かつ、お金をせびられているのだろう。大金を突然手に入れてしまったからな】
「……。わたしたちは魔王の娘と元勇者であり、元魔王。簡単な仕事だわ。でもね、あなたの意思で殺すという事はあなたが背負うという事なのよ。そこをよく考えて。一生背負うのよ」
「そんな事言うならお金返してください。いいかげんにしてください。私、善人じゃないんです。どうしてもダメなんです。受け入れられないんです。お願いします」
「引き受けよう。どうなるか、本人に任せよう、リズ」
「ヨルがそういうなら」と、わたしは下を向く。
【背負ってみなければわからないものさ、苦しみも痛みもな】
「ヨルぅ」と、わたしは抱き着いてしまう。
「じゃあ、明日の朝6時に中央公園噴水前でお待ちしてます」
出て行った。いいのかな。
ヨルはまた聖書を食べている。
【寝るとしよう】
うん。一緒にね。わたしとヨルは手をつないで一緒に寝た。
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