第3話 聖ヨルダル教会

「おいたわしや~。あーなんと言う事。勇者ヨル・ダルフォン様の御髪おかみに冥府の神の黒色が混じってしまうなど。大天使ミカエル様も嘆いておられまするぞぉー。」と、白いハンカチを口で噛みながら泣いているのは聖ヨルダル教会の修道女マリアンナ。背丈はわたしよりも大きく、(わたしは161ある。そんなわたしよりも大きいとは)修道女の白と黒の礼服が似合っている金髪の女性だ。

「…ここで世話になるわ。構わないかしら?」と、わたしは聞く。

「…もちろん、構いませんとも。あなたのような魔王の娘だったはずなのに…髪の毛の三分の一ほど金色に輝いていますねぇ。その上、勇者様と同じ世界樹の加護を授かっている翡翠の目、魔族たる赤さはどこに行ったのやら。代わりに勇者様の目に赤い部分がちらほらと。構いませんが、タダという訳にはいきません。働いてもらいますよぉ。お二人なら簡単な仕事ですよぉ。お願いできますかねぇ」と、マリアンナはわたしを見てくる。

「引き受けるわよ。で、仕事ってなに?」

「依頼者からの暗殺をやってもらいたいのです。人間も魔物もね」

「暗殺ね。人間と魔族の頂点にいる”わたし”たちにはたしかに簡単かもね。それで依頼は誰が聞いてくれるの?」

「私が聞きます。金貨一枚で暗殺。それでしか解決しない問題もあるのですよ。それに依頼者を殺すのも有りです。それはお任せします」

「マリアンナさんが中継ぎをしてくれるわけね。いいわ、ヨルもいいよね、ヨル」

「紙がうまい」

あーヨルは壊れたままだぁ。

「ではそういう事でお願いします」

「ちょっとヨルってば!ちゃんと聞いて!」

「紙はうまいぞ」

「ふぅ~」わたしは額を抑えて下を向く。

「ヨル様、壊れてません?」

「そうなのよ。お父様を受け入れてから壊れているの。」

「ははぁ。お父上を。魔王を受け入れ???え?、ええ!」

「そんなに驚くとこ?」

「当たり前です。全くあなたという人は…」と、マリアンナは目をつぶり、わたしに鍵を渡して来た。

「ベッドは2つあります。今日はその部屋で眠ってくださいな。よろしですな」マリアンナはすぐに後ろを向いて立ち去って行く。

「わかったわ」と、わたしは舌を出して、片目をつぶる。わたしはヨルと一緒に寝る事を画策しながらヨルを立ち上がらせて部屋へ向かった。

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