第15斤
『索敵しまぁ~す』
『おけ!』
『いい武器あったよぉ~』
『さんきゅ!』
『ごめぇぇぇぇん!』
『だいじょうぶだよぉ~』
『ヘッドショット!』
『ないすぅ~』
リムリムとめろんちゃんは慣れた連携で隠れていた敵や突っ込んできた敵を次々と倒していった。そんな光景を僕と白野さんはビックサイズのポテチをシェアして食べながら見ていた。ちなみにうすしお味で、白野さんがまた「ん!」と言って差し出してくれたものだ。あとこれが今日の夕食になるらしい。こんなので大丈夫なのかと心配したら大丈夫という答えが返ってきた。本当だろうか。
「ねぇ……」
2人で黙ってポテチを食べつつ、リムリムとめろんちゃんがほぼ同時にキルされて絶叫しているのを見ていたら白野さんが唐突に口を開いた。
「なんで……私なの……? 私を……好きになったの……? 声だって……めろんちゃんやムリムちゃんの方がよっぽど特徴的で可愛いし……話も面白くて楽しいし……ゲームだって……私はこんな風にはできないし……誰かと一緒になんて……」
「前にも言ったけど、君と出会ったから、君を好きになったんだよ。理屈じゃないんだ」
僕がそう返すと、白野さんはポテチを摘む手を止めてコップから水を一口飲んでから、
「嘘」
小さな声で、しかしながらはっきりと、そう言った。彼女の大きな瞳が、僕の心を見抜こうとしているかのように真っすぐに見つめてくる。
『わたしに嘘ついたら、ダメだからね!』
頭の中で、いつかの誰かの声が響く。
「私……見ちゃったの」
白野さんはリモコンを操作してリムリムの配信を閉じ、トップ画面に戻した。そして検索履歴を表示させ、一番上にある文字を指さしながら言った。
「舞原麦也で検索したら、これが出てきて……」
白野さんはその一番上の文字である「舞原麦也」という検索履歴を押し、それの検索結果を画面に映し出した。そしてそのまま、出てきた動画のひとつを再生させる。
『おはこんばんちは! マイクロレートのヒナです!』
『ムギです』
『レートです!』
『今回はここ、横浜から渋谷まで――』
みなとみらいを背景に、中学生の女子1人と男子2人が挨拶をした後、ヒナと名乗った女子が動画の趣旨を説明し始めたところで、白野さんは動画を一時停止させた。
「このムギって男の子……舞原くん……だよね」
白野さんは、笑顔のまま画面の上で固まっているムギという少年と、隣に座っている僕を見比べるようにしながら言った。
「どういう……ことなの……?」
そうか。いつかは気づかれると思ったけど、想像以上に早かったな。
人の秘密を暴いておいて自分の秘密は隠し続けようなんて、そんな虫のいい話あるわけないし、許される訳がない。そういうことなんだろうな。
「そうだよ」
だから僕は素直に、白野さんにそう答えた。
「これは、僕だ」
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