第19話

 考えてみると負けて当たり前かもな。

 リッチって元人間だろ?あのプレッシャーに逆らって魔に堕ちて、リッチになってまで突き進むって俺より格上じゃない?リッチ先輩すげえな。

 いや、全然違う可能性もあるけど。

 いや、リッチの事なんていまはどうでもいいよ。

 

「いや、カタリナの方が辛いよ。逆なら俺は耐えられない。ごめん、もっと頑張ります」


「死ぬほど頑張らないでください、無事に帰ってきてください」

 堂々巡りだな、言わないとどうしようもないかな。


「本当は俺もそうしたいんだけどね、天使の方針が許してくれないんだよ。天使から命を貰った訳だし、従わないと命も終わっちゃうのかなって怯えてるんだよね。」


「方針?なんですかそれ?」


「迷うくらいなら死ねって感じかな?勝てるか分からないなら死んで確かめろっていう」


「なんですかそれは」


「なんですかって言われると……ゲームっていうか」


「ゲームですか?天使様の遊びでこんな事になってるんですか?」

 いや、そのゲームじゃなくて、いや考えてみると似たようなものか?


「過去に巫女から魔に堕ちた者がいました。なにがあったかずっと不思議でした、でも今は少し気持ちが分かります」

 お、ヤンデレルートか?違うか。いやいや、待て。


「ちょっと待て、待て待て待て!」


「安静にしてください!」


「はい」


「流石に魔には堕ちませんよ?大罪を犯すでもないとそう簡単には落ちないので安心してください。今の天使への信仰をやめて、天使からの加護を切ろうとしただけです」


「ああ、そうなんだ。天使の加護を切る?」

 あと大罪を犯さないとって、考えるもの嫌だけどアレはそんなにか?

 そもそもだ、本当にアレは魔に堕ちるってやつだったのか?

 分からんが思い出したくもないのが正直なところ。やめよ。


「そうです、少し力は落ちてしまいますが蘇生は出来るので問題ないでしょう。巫女は辞めることになります。でも!アベルさんについて行くことも出来ますね!そもそも回収できる範囲は広いですが、他の地方までは厳しいものがあったんで丁度いいですね」

 言いたい事言えてスッキリみたいな顔、急展開にちょっとついていけてないっすね。


「あ、そもそも天命を放棄するなら魔の討伐もしなくてよくなりますね……」

 さては、俺に凄く優しかったり魔法好きみたいなのって冒険や英雄譚に憧れてるからだな?なるほど納得。あれ?もしかして戦う気だったりする?


「分からないけど続けると思うよ、今の力が無くなってしまうとかじゃなければだけど」

 金良さそうだし、何より負けたままだしな。


「大丈夫だと思います!そこまでは変わらないはずです!という事で、さっそくアベルさんの加護外しますね」


「そんな事までできるの!?」


「加護による巫女の能力です、これでアベルさんに手を出せないはずです。もう出来なくなりますが」

 あ、その前に戦闘力確認したいな、と思ったけど鞄の中だ。置いてきちゃったな。

 目の前で祈るカタリナちゃん、なんと言うか神々しい。


「できました、じゃあ私も」

 天使からの邪魔とか入らないんだな。俺が死んだの見て満足して寝たか?天使スヤスヤで、やめようフラグとかいらんぞ。


「じゃあ確実に完治させるために寝てください、私はココを出る準備しておきますね!」

 ウキウキっすね、そんないきなり寝られないんだけど。


「我が声に応え静かな夜を 迷える者に 神の安らぎを与え賜え」

 いきなり魔法!フワッとするな、こんな感じなんだ。

 

 うーん、でも本当に天使からの妨害無しって……マジで寝てたり忙しかったりするんだろうか?そりゃずっと見てる訳はないだろうけど、どういう存在?

 戦いは続けそうだしこれでもいいかとか?わっかんねー。

 こんな簡単に天使との縁が切れるとは……俺のここまでの悩みは一体……

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