第18話

 やっちまった、けど、帰ってこれた。

 ありがたい。が、コレはキツイ。

 いや、生き返れるんだぞ?これくらいは受け入れなきゃ。じゃねえよ

「ごめん」

 まずはこうだろ。蘇生直後で混乱してるんだろうか。無駄に喋らないようにしよう。

 

「ダメです、許しません」

 許されなかった、どうしよう。

「ごめんなさい、許してください」

 君の頼みならなんでもします。


 結構な間カタリナちゃんは泣いていた。

 多少混乱が収まってきたのでカタリナの顔を見ると涙をぬぐっていた、目が合うと顔をそらされた。


「今日は安静にしててください。治癒もまだ完全には終わってないんで」

 だからまだ頭がフワフワしてんのか、なるほど。


「かなり酷い状態だったので一気に治癒できません。後遺症が残らないよう、あと負担も少ないように掛けるので、明日の朝まではゆっくりしてもらいます。」

 明日の朝には治るんだ、すげーな魔法。


「辛いなら答えなくて良いんですけど、いったい何と戦ったらあんな事になるんですか」

 しゃべったら怒られそう、いや怒られるべきかな。

 リッチと戦ったことを伝えると顔がこわばっていた。

 ネクロマンサーにやられたら蘇生はどうなるんだろうと聞いてみると、滅茶苦茶説教された。指輪からの反応が怪しいから祈っていたら反応が途切れて絶望したことや、即回収出来てなかったらとんでもないことになっていたなど。

 悪い予想だけ当たるね。


 あまり出来ないやつと思われても悲しいので、ことごとく運が悪かったアピールでもしてみる。多少話を盛りながら先程の戦いを語る、思ったよりもカタリナが興味津々だったので熱くなってしまい死の間際まで語ってしまう。涙が止まらなくなるカタリナちゃん。無駄に喋るなって自分で分かってたじゃないか、なんだこの出来ないやつアピールは。


「ごめん、まだ混乱してるみたいでいらない事まで言っちゃた、本当にごめん」

 涙が止まらないようだ、今度こそ無駄に喋らないようにしよう。自己嫌悪がマッハ。

 

「いえ、呼び戻した時のぼろぼろの肉体、割れた盾や防具、死してなお硬く握りしめて離さない杖、想像は……想像……」また泣いちゃった。

 

 正直なところ、慣れてもらわないと困るんだよな。天使的な意味で。


 死してなお硬く握りしめて離さない杖!?一緒に回収できたのか!

 よくやった俺、全ロスかと思ったがあの武器さえ有ればどうにでもなる。あのリッチとスケルトンナイト覚えてえろよ。近いうちにぶち殺す。

 いや、まず努力や積み重ねもなしに勇者や英雄気取りするのがおかしい。

 よし、そう遠くないうちにぶち殺すにしよう。今度こそレベル上げとドロップ狙いだ。


「すみません、痛い思いしてるのはアベルさんなのに。待ってるだけの私が文句なんていっちゃって」

 いや、俺よりそっちの方が辛くない?

 定期的に仲良くなっていく知り合いのグロ死体回収させられる、狂ってしまいそうな、いや、慣れるか?慣れるというより、壊れるみたいなよくある話?

 

 冷静に考えると、俺の命がクソ安いこの世界、守りたいものなんてカタリナちゃんくらいしかないぞ?でも戦わないと、天使に命没収される可能性があるかもで戦う、天使は死んで覚えろと。ロクな結末が待ってないな、確実に。


 そもそも天使に命没収されるなんて俺の感想じゃねえか。

 打倒天使で行くか!なんて考えると魔に堕ちる可能性が有るぞ危ない危ない。

 打倒リッチ編からリッチ先輩よろしくお願いします編に変わるぞ?

 そっちの方が面白い可能性は高い。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る