第17話

 バレないよう一旦来た道を少し戻り、対リッチ作戦会議を始める。

 まず、4メートルほどの魔法陣の上には10体ほどのスケルトンがいた。

 コイツらは余裕、まともに動いてないうえに武器を振り回せる程度の広さがある、距離を考えても5秒も有れば片づけられる。

 

 問題はリッチ、5秒で魔法は撃てるのか問題。持っている杖が魔法武器の可能性も大いにある、なんか光ってたし。

 リッチを一撃で倒せるならスニークから初手リッチに全力アタック、で済む話だが、魔法のバリア的なものが有るかもしれないよな。あのローブもマジックアイテムの可能性もあるし。

 物語に出てくるリッチって結構上位の魔物だったりする?エルダーとかロードじゃなかったらそうでもないか?うーん、わからん。物語によるか。

 実はエルダーかロードのリッチだったらどうしよう。そこまで大層な見た目はしてないけど可能性はゼロじゃないよな、初対面だし。生前は清貧で高潔で徳の高い邪悪な魔法使いだったんです、みたいな。

 

 やばい、ネガティブがループしてきた。

 最悪お願い全力スイングで倒せなければカタリナちゃん頼みでよくないか?

 それほど分の悪い賭けでもないだろ。バリアあっても貫けるかもしれないし。

 死ぬのは最悪中の最悪で確率的には殆どない。大丈夫、大丈夫、自分を信じて。

 いや、ネクロマンサー相手に死体になるってダメじゃないか?

 これ、無茶しちゃダメなパターンじゃない?逃げた方が良くない?でもぉ、お宝がぁ。


 ここまで作戦会議開始から約3分、しかも敵のすぐ側。

 判断が遅いうえにクソ。


 よし、中間択で行こう。

 人類の武器、投てきだ。

 まず石を全力でリッチに投げ、スケルトンの集団をフルスイングで煙幕代わりにする。いち早く状況判断をして、投石が効いていればそのまま攻める。

 効いていない、もしくは外れたら全力逃走、こんなんどうでしょう?

 

 よし、ネガティブモードに入る前に行こう。

 天使も見てるかもしれないしな。


 鞄を置き、手頃な石を見つけ気配を消し覗く、状況は変わってなさそうだ。

 動き出すまでにはそれなりに時間が必要なようだ、そりゃそうだ。でなければ地上はアンデッドで溢れかえってるだろう。おいアホ、集中しろ。


 魔法に集中しているリッチに狙いを定める。

 大丈夫、2メートル先のゴミ箱にティッシュ投げ入れ選手権が有れば都道府県代表にはなれる逸材だ。自分を信じて。

 

 武器を置き集中して、全力で投げる!

 骨が砕けるような音が鳴る、リッチはひるんでいるようだ。確実に効いている!

 急ぎ武器を手に取り、スケルトンを薙ぎ払う。

 そして、返す刀でリッチへ全力で飛び渾身の突き!


 は、外した! いや、避けられたか?

 なんで散らばる骨と土煙で見にくいのに突きなんてするんだよ!

 足場も良くないのにド素人が、馬鹿じゃねえの!

 

 リッチはコチラを魔力が灯ったような眼で見ている。

 もしかして、怒ってらっしゃる?

 いや、まだだ、更に全力で薙ぎ払う!


 が、リッチの目の前で何かに遮られるように武器は止まる。

 バリア張られてるじゃん、うーんバッドチョイス。

 正解は、隠密から初手全力リッチか戦略的撤退でした。


 廃鉱の奥から恐ろしく多数の足音、アンデッドの大群が向かって来ている!

 よし、逃げよう。

 その時退路に魔力の膜のようなものが出来る。武器で一撃!しかし弾かれる。

 うーん、これぞボス戦。逃げられないらしい。

 

 中途半端に下がった事により、リッチはアンデッドの援軍の中に隠れていく。

 間違えるときはどこまでも間違う。ど壷にはまる、ってやつだな。クソ判断ここに極まれり。絶体絶命か。


 いや、勇者や英雄はココから輝くから語り継がれるんだろ?

 まともに出来ることは薙ぎ払うだけ、間合いに入られる前に振り回す。

 スケルトン、ゾンビは軽く砕け散っていく。コイツらは物の数ではない。

 

 しかし、リッチ以外に初めて武器を止められる。


 完全武装で眼が怪しく光るスケルトンが混じっている。

 ここに来て上位種、スケルトンナイトか?盾で受け止め、明らかに剣技といった動きで踏み込まれ斬りこんでくる。こちらも盾で受けるが、捌ききれない。下手くそが。

 敵の剣が体を掠めるたびに力が入らなくなっていく。

 下手な守りはコイツには無駄か、一か八か剣目掛けて全力で盾で払う。

 体勢を崩せた!全力で薙ぎ払う。 

 真っ二つに砕けるスケルトンナイト。当たりさえすれば行ける!

 

 しかし脇から剣を差し込まれる、そりゃそうだ。一体だけなはずねえよな。

 痛てえ、膝を突いてしまう。こりゃ動けねえわ。クソ。

 さらに何かに頭を殴られる、痛い、敵の攻撃は止まらない。クソが。

 しだいに痛みもよく分からなくなり、意識が遠くなっていく。俺はクソだ。

 

 何かが顔を伝う。

 目を開くと涙を流すカタリナの顔。

 ああ、やっちまったな。

 

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