第16話

「飲めるか?」

 若い剣士はうなずきグッと飲み干す。

 苦虫を噛み潰したような顔をする、あ、ポーションってまずいんだ。

 

 一息つく剣士、即効性あるんだな。

「クソッ……感謝する」


「おう、感謝しろ」

 槍使いの方はまだ戦っている。結構しっかり武装しているスケルトンを残してしまったので苦戦しているみたいだ。


「オイ!今コイツ苦戦してるみたいな目で見ただろ!」

 コイツもプライド高い系か?


「いや?武装してるスケルトンって結構強いんだろうなって考えてただけだ」


「クソ!すぐ終わらすから待ってろ!」

 なんで急に喧嘩腰になるんだ?めんどくせえ。

 ただ腕は良さそうだ、華麗に武器を捌きピンポイントで防具の隙間を突くとスケルトンは崩れて行った。どこか弱点とかあるんだろうか?


「あれ?お前それ槍じゃないのか」

 なんだ?ライバル意識でも持ったのか?


「クォータースタッフだったっけ?両手棍ってやつだぞ」


「悪い悪い、同じ槍使いかと思って対抗心燃やしちまったぜ」


「なに持っても腕力頼りで振り回すしか出来ないぞ俺は、対抗心なんか燃やされても困るわ」

 機嫌良さそうに笑い出す槍使い、落ち込んでいる若い剣士。

 面倒だから任せてしまって良いかな?


 というか出て来ないなアンデッド。

「魔物ってもっと湧いてこないのか?」


「そんな頻繁に出て来ねえよ、入り口近くに居れば出てくる。この距離で休んでればそのうち出てくるから適当に待ってろ」


「そうか」

 マジ?なんなら一晩中狩ろうかと思ったのに暇すぎてだめだな。


 よし、思ったより雑魚だし、ちょっと討伐カウント勿体ないけど適当に魔石ランプ?とかいうの借りて入っちゃうか。

 すぐビビっちゃうから行けるときに無茶するべきだろう。

 入り口近くに置いてある魔石ランプを一時拝借し、体に引っ掛ける。

 燃えたりはしなさそうだな、よし!行ってみよう。


「オイオイオイ、お前マジかよ!ソロは無茶だぞ!」


「無理そうならすぐ戻るよ」

 廃鉱の中はひんやり、少しゾンビ臭がするかもしれない。我慢できるレベルだし、有毒なガスとか警戒するために鼻塞ぐのはまずいよな。毒が効かないも確定はしてないし。臭いのない毒?知らん。

 あー、酸素問題もあるか。……でえじょうぶだ、カタリナちゃんがいる。すまん、カタリナちゃん。もしもの時は頼んだ。

 あれ?暗い方も滅茶苦茶見えるぞ。ランプを消してみる。

 流石に滅茶苦茶とは言えないが十分見えるな、この肉体パネェ。

 魔法の代わりにこういう能力を持たされてるんだろうか?天使のキャラビルド悪くないかも。

 

 五感をフルに使ってみるか。集中すればするほど色んなものが分かる。

 なるほど、今まで宝の持ち腐れだったのが分かるな、コレは良い修行になるだろう。息をひそめ気配を探り見つけ次第不意打ちを決めていく。

 光を消して音を出さないよう気を付けると、アンデッドより俺の方が先に気づけるようだ。後は一撃必殺、楽勝っす。俺がこの空間の支配者だ。

 しかし案外魔物がいないな、気合入れてきたのにガッカリ。

 あと武器の取り回しが悪いな、サブウェポンが必要だ。

 狭い場所では盾で殴っていく。

 これでも一撃、なんだこのヌルゲー。

 

 奥へ進み続け結構な数を倒すがたまに硬貨を落とすくらいで魔道具は落ちない。 

 何か変わったものを拾ったら戻ってもいいかなと思っていたんだが……物欲センサー発動である。最初の猪は相当運が良かったのだろうか。

 時計が欲しい、あの金貨を捧げなければ安いのなら買えてたのにな、そんな事を考えながら潜り続けていく。多分戻る時は真っすぐ戻れば帰れるはず、分岐はあったけど帰るだけなら真っすぐなはずだ、なんて不安になりながら数えきれないアンデッドを倒していく。いきなり上位種なんて来ないよな?わかりやすい違いあってくれよ。


 何時間歩いたんだろうか、それともまだ一時間も経ってないんだろうか。考えることが無くなると、集中力が増していき感覚が研ぎ澄まされていくのを感じる。

 更に進むと少し広い空間が見える。

 地面が微かに怪しく光っており、その上にスケルトンの集団。そして、その奥に怪しく光る杖を持ちローブを着るスケルトン、もしかしてリッチと呼ばれる者だろうか。

 

 あのリッチがココで召喚しているのが原因なんだろうか?

 いや、流石に一体であれだけの数を召喚出来るとは思えない。

 思えないが、万が一狩場になってるものを潰すのは不味いかな?いや、定期討伐があるんだから困ってはいるんだろう。完全に潰し切ると困る冒険者が出そうだが……いかにも中ボスという、あのリッチのドロップが気になる!

 まあ、一箇所くらいならバレへんやろ。

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