第13話

 翻訳チートで古代呪文を蘇らせた俺、異世界で英雄になるみたいです。

 何番煎じかは知らんがコレで行かせてもらおう。


 カタリナが本棚から何冊か持ってくる。

 

「これとかどうですか?」

 なぞった指先には謎の記号が並んでいる。

 頁の他の文字は読めるが、なぞった文字列はよく分からない。

 なるほど、くだらん。一場春夢、短い春でした。


「残念だけど、文字は分からないみたいだ」


「そうですか……残念ですね」

 テーブル、床が水浸しなのが余計に寂しい。


「一応こちらも見てもらえますか?これはさっきの魔法らしく確実な古代文字だと言われているのですが……」

 謎の記号の羅列にしか見えない。ファッキューファッキン天使。


「ダメ見たいっすね……」


「そうですか……でもこの文章だけでも完全に解読出来たのは凄い事ですよ!」

 その考え方は出来るか、そのうち何か形になればいいが。


「それもそうだな、取り合えず水拭こうか」

 タオルのようなもので二人で拭いていく。どうでもいいが元の世界のタオルに結構近い質のよさそうなタオルである。素材はなんだろう、文明レベルが謎だ。


 

 拭き終わるとカタリナは本に何かを書き込んでいる。

 さっきの魔法の事だろうか、そういえばほとんど残っていないと言っていたけど、他には何が有るんだろう。


「古代魔法って他にどんなのが残ってる?」


「他にですか?一般的には火種に使われる魔法ですね。他の大陸、あと特定の部族等では受け継がれてたりなんて噂がありますね」

 火種か、便利は便利だけど水の詠唱も既に忘れちゃってるし聞くだけ無駄かもな。


「やりますか!?」

 魔法の事になるとテンション跳ね上がるな、そんなに魔法好きなんだろうか?

 まあ、恩人だし無下にはできんよな。


「お願いします!」


「はい!行きますね!」


 得意げに指を構えるカタリナちゃん。

「精霊よ 我が声に応え小さき火を この世界に 神の力を示し賜え 火の精霊よ 我が願いを」 

 水とほぼ同じじゃねえか。

 

 もしやと思って小さきをなくしてみたり、他の言葉を入れてみたけど発動しませんでした。

 小さきの部分に入れた言葉だけが現代語で聞こえるというよくわからん現象。

 一度その古代語を聞かないとその単語を使えないのか?

 水の呪文の、清き、だと思われる単語を入れると古代語で行けたが魔法は発動しない。そこまで単純なものではないのか?

 実際の魔法を見ないと使えないとか?

 古代語を聞いても自覚できないのが厄介だな。

 

 おまけに詠唱のメモも書いてくれました、ほんま気が利く子やで。

 しかし、今すぐ俺の武器にできそうなものはなかったな…… 

 

「私が魔導書の一冊でも持っていれば良かったのですが」


「いやいや、これ以上世話になってたら申し訳なくなっちゃうよ。というか魔法好きみたいなのに魔導書は持ってないんだ」


「秘密なんですけど……私、治癒以外にも色々な魔法を授かって産まれてるんです。今まで見た魔導書は、私の魔法で再現可能なものにしか出会ったことがなくて……」

 コイツ主人公でよくね?

 転生してきた英雄候補が情けないので実は全属性使いの私が魔王を討伐しちゃおうと思います。コレで行こう。


 

 結局は金貯めて遠距離武器が手に入るの待つかな。

 天使様、流石にそれくらいは待ってくれるよな?

 縛りプレイじゃないんだし、探索とレベル上げも多少は許してくれよ。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る