第12話

 贔屓しすぎは他の人にも申し訳なくなるしこれで良し(キリッ

 きっしょ、死ね。



 祭壇部屋を出て考える、本格的にどうしよう。



「大丈夫ですか?」

 カタリナが心配そうに声を掛けてきた。


「いやー、元の世界では魔法なんて物語の中でしかなかったからね。憧れてたからちょっと熱くなっちゃったかも」


「そうですか……でも、大丈夫です。魔法なら魔導書や魔法武器、魔道具といった物もありますよ!」

 マジか、もう少し質問すればよかった……



 部屋へ戻る途中カタリナちゃんが慰めてくれる、なんとなくテンプレ臭を感じる。ココで燃え尽きるやつ多いんだろうな。部屋へ着くとお茶まで入れてくれた。ありがてえ、沁みるわ。



 少し落ち着いたところで魔法の説明を受ける。 

 

 魔導書は呪文や魔法陣が書いてあり、目当ての呪文のページを開き魔力をそそぐ。

 相応の魔力が貯まり、発動準備が出来たら簡易化された呪文を詠唱で発動するらしい。

 基本的に書いてある内容で消費する魔力や威力は既に決まっており、過剰に魔力をそそいでも威力や速度、発動までの時間が変わる事は無いらしい。希少で特殊な魔導書はその辺り自在だったりもするらしいが。


「炎の加護を我が手に、焼き払え、ファイアボール!」

 カタリナちゃんによる迫真の演技である。本を片手で持つ真似をしながら俺を指差す。 


 魔導書によって同じ呪文でも多少詠唱など変わるらしいが、基本はこんな感じらしい。

 値段は呪文の質や数でピンキリ、発動まで結構かかるとのこと、なので戦闘中使うならパーティー向けかな。初手で狙撃なり戦闘前に補助呪文なんてのはソロでも使えるよな。


 俺のリアクションがなかったせいか、カタリナちゃん凄く恥ずかしそう。

 ごめん、まだ復活出来てないんだ。

 本棚に冒険譚、英雄譚みたいなタイトルが結構並んでるしこういうの好きなのかな?

 

 あ、魔法に憧れてるって言ったから、落ち込んでる俺を元気づける為か!?

 めっちゃええ子やん、惚れてまうで。


 魔法武器は大体イメージ通り。

 炎の魔法の剣なら魔力を流せば刃に炎をまとい敵を燃やす。

 炎の魔法の杖なら、魔力をそそぐと火の魔力が杖の先に貯まり、振るえば火の玉が飛んでいく。

 武器により上限は有るが、そそぐ魔力が多いほど威力も上がる。

 かなり便利だが難点は高価なことらしい。

 

 魔道具は俗に言う魔力で動くコンロやライト、魔力を流すと水が貯まる水筒やポーションなんかも。

 あと呪文の巻物、スクロール、特殊な革製で少ない魔力で即起動。でもかなり割高な高級品。

 さらには風に乗るように走れる靴、周囲の風景に溶け込むカメレオンローブ、俺に使った回収の刻印なんかも。魔法防具もコレと似たようなもんらしい。

 

 カタリナちゃんのような神に加護を貰って生まれた巫女の治癒なんかも一応。

 似たように、後天的にも神に認められ加護を貰い力を得る事もあるとか。

 本当に、俺にも魔法くれたらよかったのに。


 あと、人によっては得意な属性があるとか。

 たまにいる髪の色が特殊な者は、その色が得意な属性な事が多いらしい。

 赤なら火、緑は風か植物操作だったり、ピンクは淫乱みたいな話だろう。

 銀髪のカタリナは全属性得意で、特に治癒が得意な優秀な巫女らしい。

 一緒に旅してくれない?俺タンクしますよ。

 別に才能がないと使えないという事はないが、耐性もあるので魔物も特殊な色の個体の時は気をつけろと。

 

 魔法金貨を授かった時にも、その属性の能力を貰いやすいとか。

 魔法金貨の魔法は、魔力を集めるほど威力が上がったり速度を重視出来たり、自分が強くイメージできるなら結構自由度が有ったりと超便利らしい。超羨ましい。

 

 



 カタリナが咳払いを一つ。


「精霊よ」

 なんだコイツ?


 魔力が集まっているのか指先を光らせ空中に魔法陣を描いていく。


「我が声に応え清き水を この世界に 神の恵みを注ぎ賜え 水の精霊よ 我が願いを」

 

 魔法陣が光り、指先から水があふれ出す。

 

 すげー、ガッツリ魔法!

 魔法金貨の魔法か?コイツ自慢か!?


「凄いですよね!もうほとんど残ってないんですが、古代に使われていたという魔法です!精霊の力を借りて神様の力を直接使うという奇跡です。魔法陣も指が勝手に動くんですよ!」

 まだ少し耳が赤いカタリナちゃん、明らかに俺にリアクションを求めている。


「古代魔法!凄いね!現代に残ってないのかー、残念だ」 

 ちょっと薄いかもしれないがさっきよりはマシだろう。あとなんだその恥ずかしい詠唱は、どうにかしろ。 


「凄いですよね!文献など残っているものも有るにはあるんですが文字も言語も今と違うので詠唱が分からないんですよ。さっきの詠唱も澄んだ水を出すために精霊の力を借りる為の言葉らしいくらいしか言葉の意味が分かってないんです!」

 

 お、早口になっちゃうオタクじゃん。親近感感じちゃうね。

 

 あれ?言葉の意味が分かってない、言語も今と違う??


「もう一回魔法唱えられる?」


「はい!大丈夫ですよ!」

 美少女が楽しそうで何よりっす。


「精霊よ」

 指先が光り魔法陣を描く。

「精霊よ」

 指先に集中すると光る、そして指が自動的に魔法陣を描きだす。


「我が声に応え清き水を この世界に 神の恵みを注ぎ賜え 水の精霊よ 我が願いを」

 「我が声に応え清き水を この世界に 神の恵みを注ぎ賜え 水の精霊よ 我が願いを」

 正直詠唱が恥ずかしい。


 双方の指先から水がこぼれだす。

 俺の方が少し弱いか?属性得意のアレかな?

 テーブル、床をびちゃびちゃにしながら笑顔のカタリナちゃん。なんだこの画は。


「凄いですよね!誰にでも簡単に出来るんですよ!魔力もそこまで消費しません!本当に失われたのが惜しい魔法、神の奇跡です!」

 凄いですよねbotと化したカタリナちゃん。


 詠唱ね。

「精霊よ 我が声に応え清き水を この世界に 神の恵みを注ぎ賜え 水の精霊よ 我が願いを」

 んで、

「精霊よ、我が声に応え清き水を、この世界に、神の恵みを注ぎ賜え、水の精霊よ、我が願いを。」

 どや?


「え?なんですか、それ……」


「俺は同じ音で喋ってるし聞こえてるんだけど。どうなってる?」


「古代の言語と現代の言語です……?どういう……そんな事が出来るなんて。私からかわれてないですよね?」


「天使が特別に作り替えたらしいからね。何がどうなってるのか、俺もよく分からないけどそんな事もあるのかな」

 

 

 翻訳チートか、分かりやすく使えそうなモノ持ってるじゃねえか!

 勝ったな!ガハハ!

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