第10話

 牙の買い取りと、街周辺の危険な魔物の討伐のボーナスだとかで、合計8000ルド程貰えた。緊急の依頼も出す直前だったらしく、それも達成したことにしてくれるらしい。

 ちょっと散歩して80万、えらい世界に来たものである。


 冒険者カードを見てみるとレベル2戦闘力6、少し身体能力に慣れただけで伸びている。伸びしろの塊なのかもしれない、実際出来立ての肉体だしな。

 ある程度落ち着くまで戦闘力も言わない方がいいのかな?


 ドワーフの店に向かう。

 イメージ通りのドワーフが迎えてくれた。

「お前か?ハンスが言ってた、えらく強いらしい新人冒険者は」


「雑貨屋の店主のことならそうだ、技術がないのもあるんだろうけど、武器が力に耐えられなくて困っているんだ」

 

「折れた剣を見せてみな」

 剣を見せる、見ただけでわかるんだろうか。

 

 武器の希望などを聞かれたが、おすすめされたのは2メートル程の表面と両端が加工されている棒だった。

 剣が良かったが専門家の勧めは聞いておこう。いのちだいじに。

 以前テストで作った、ミスリルなども少し混ぜた丈夫さだけならかなり自信がある両手棍らしい。よく分からんが魔法発動体としても使えるとか。まあ今は関係ないか?

 値段は折れた剣を回収し差し引いて5000で良いらしい、クソ高くない?

 少し使ったミスリルが高いらしい。ほぼ素材代だけだとか。

 というか、折れた剣もいい素材らしい。おっさんが400で売ろうとしてたと伝えると絶句するドワーフ。少し悩み4000に値下げするらしい。

 おっさん共商売する気ないな、そして安物なんて思ってすまんかった。

 ついでに、戦いの途中気になった、武器の両手持ちが出来るタイプの盾を見せてもらう。予算オーバーだったのを伝えると、今の盾と交換してやるとのこと。装備の手入れの仕方を教えてもらい、簡単なメンテナンス道具もサービスしてもらえた。

 雑貨屋のおっさんにライバル心があるらしい。

 ドワーフに礼を言い店を出る。

 

 教会へ行くか、先に宿をとってしまうか。

 おっさん続きだし美少女の顔が見たいな、教会へ向かおう。ちなみに棒は歩くのに結構邪魔だった。失敗したかも。


 教会へ着き門番に伝えるとカタリナちゃんの部屋まですんなり案内される。

 なんて紹介したんだろうか。適当にイスに座り待つ。

 

 暇だし魔法金貨のことでも考えてみるか。

 たしか、鉄貨1枚でも貰えることがあって、山ほど捧げても確定はしないとかだったかな。でも金額高いほど出やすいと。

 なんとなく、捧げものの価値だけでそのまま確率ガチャの線は薄そう。

 ゲーム的に考えると、経験値システムで討伐とかで経験値が貯まってて金額と足して確率ドンみたいな。こっちの方があり得そう。

 いや、単純に手にするのに本人が苦労した物を捧げるほど貰える確率アップとか?

 そもそも確率じゃなくて、神だか天使が判定してそうかな、実際いるんだし。

 考えすぎか?なくはないよな。


 適当に考えているとカタリナちゃんがやってくる。

「買えたみたいですね、よかったです」

 にっこり微笑むカタリナちゃん、癒される。

 

 雑にあったことを伝え、金を返す。

「思ってたよりずっと良い肉体を貰っていたみたいだ。おかげでやっていく自信が少し出たよ、天使様に感謝しないとな」


「そうですか、流石天使様ですね」


「感謝といえば、祭壇で捧げるってどうすればいいのかな?作法とかある?」


「特に作法はありませんよ。私は心をこめて祈ることが一番だと思っています」


「そっか、大した金額じゃなくてダメかもしれないけど、心をこめて一度祈ってみるかな」

 口にした途端、眩暈が起こり倒れる。カタリナの声が遠くなっていく。



 声が聞こえる。

「お前が蘇生出来ることなんてバレても構いません。ゲームを見てたと私は言いましたよね。倒せるか分らない敵にも挑んで、生きるか死ぬかで判別してたでしょう。死んでも良いと思ってましたよね。ハッキリ言います、死になさい。私がお前に望む英雄の姿はそれです、魔力と肉体は十分な物を与えました。祈りなどいりません」

 あの天使の声だった。


「気が付きましたか?大丈夫ですか!」

 カタリナの声が聞こえる。あんまり大丈夫じゃないかな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る