第9話
剣を構え、体を動かし軽く身体能力を確認する。
行けるかもしれない。
再び体当たりに来る猪、今度は加減をしながら大袈裟に避ける。結構な早さだが楽に反応出来る。
また体当たり、今度は剣の届く範囲で避けながら全力で足を狙い振り抜く――
しかし、剣は折れてしまった。
安いだろ!じゃなくて安物なだけじゃねえか!
だが、ダメージはしっかりあったようだ。足が折れのたうち回っている。
牙に気を付け、折れた剣で目を狙い、全力で突き刺し、かき混ぜる。
動きが激しくなるが、かき混ぜながら眉間の辺りを全力で蹴りまくる。
魔物の動きが鈍くなり、そして止まる。勢いでやれたけど、冷静になると肉の感覚が気持ち悪い、慣れるまでは勢い大事だな。
魔物の体が薄れ消えていく、これが魔力になるというやつか?
後には牙が残る、思ってたドロップと違う。魔力のこもったアイテムではあるのか?一時は死も覚悟したんだから値打ち物であってほしい。
荷物と牙を回収し街へ向かう。
しかし、なんとなくで剣を買ってしまったけど技術がないと駄目だな、腕力は恐ろしくありそうだからメイス辺りを試してみるか?いや、アホっぽいけど剣の方がカッコイイと思ってしまうから迷うな、モチベも大事だろう。
取り合えず雑貨屋に一振りで折れたクレームをつけてみよう、新人が戦う相手ではないと言われればそれまでだが。もっと強力な魔物と遭遇するかもしれないし、遠距離の武器も見ておきたいしな。
門を通り雑貨屋へ着く、精神的に疲れたのでおっさんの顔よりカタリナちゃんの顔が見たいところである。
「おう!どうした、買い忘れか?」
「いや、剣が一振りで折れたから一応文句を言っておこうかと思って」
「一振りで?何を切ったんだ」
牙を取り出し見せる。
「これを落とした魔物だ」
「マッドボアか?いや、大きさ的にビッグボアだな!」
マッドボアが魔物の猪で、大きいとビッグボアか?そのままじゃねえか、いいんだけどさ。
「ビッグボアを倒したのか、いいパーティーが組めたんだな、よかったじゃねえか」
「いや、ソロだぞ。冒険者登録したときに、南の森の奥に入らなければ新人でも安全だと言われたんだけどな」
「新人が一人でビッグボアを?魔法持ちか技能持ちか?お前戦闘力いくつだ」
「5だったぞ。一般的じゃないのか?魔法やスキル的なものはないぞ」
「5はそれなりだが……魔法も技能もなしで、武器も使えないんだろ?それで5は……」
どうも戦闘力は技術的なものと、授かった魔法や技能、身に着けているマジックアイテムが数字に出やすく、元々の身体能力があまり反映されないらしい。
オーガという種族がいるらしいが、強靭な肉体を持ち魔法の扱いが不得意で戦闘力が低く出るらしい。多少武器に慣れた程度のオーガでも、並みの冒険者数人分戦えるとか、そんなオーガの戦闘力が2や3で出るらしい。もし本当の素人で戦闘力5と出たのなら、俺には想像もつかねえ……いや、どっかで聞いたことあるような……?らしい。
パッとしない説明だ。
肉体が強いのは分かったが、結局技術をつけないと宝の持ち腐れだな。
もしくは魔法や技能の取得、魔法金貨の方を狙ってみるか?武器の扱いが上手くなる能力、なんてのも言ってたから魔法金貨を優先したいな。
必死だったからしょうがないが、魔物相手でもあの仕留め方はどうかと思う。
「強さは分かった。ところで、牙って売れたりするか?」
借金返済もだが第一に宿代が欲しい、流石に。
「魔物が落とした物は、大抵は城で買い取ってくれるぞ、ツテがあるならそっちの方が高いがな。サイズも良いから城でも7000くらいは行くと思うぞ!」
7000!?70万か!借金返せるじゃねえか!異世界楽勝か?
「そうか、あとなにか武器が欲しいんだが良い武器ないか?取り合えず俺の腕力に耐えられるならなんでも良いんだが」
「俺の店にある物は駆け出し用だからな、さっき言ったドワーフの店に行ってみたらどうだ?」
店の場所を教えてもらい、先に牙を売りに行くと伝える。近所だから口利きしてやるとかなんとか。せっかくだからお言葉に甘えておく、サンキューおっさん。
城へ行き、さっきの受付に向かう。
「素材の買い取りってここで大丈夫?」
「大丈夫ですよ。あ、先ほどの!大丈夫でしたか!実はあの後、南の森でビッグボアが出たと報告があってですね、心配してたんですよ。私そんなところ紹介しちゃって。いつも街の近くで討伐してる方も大怪我したらしくて、アナタに、いや新人の方にもしものことがあったらと、私、気が気じゃなくて」
そういや教会出た時に大怪我した冒険者いたけどソイツのことかな?報告遅いって言いたいけど、そういう事ならしょうがないか。良い物も手に入ったし。
魔法の治療って結構時間かかったりするだろうか?
受付嬢はなにかをしゃべり続けているが、気にせず牙を取り出し目の前に置く。
「ごめん、コレの買い取りをお願いしたいんだけど」
「あ、すみません、買い取りですね。えーっと、えっ?」
「倒せましたんで大丈夫ですよ。怪我も無いんで気にしないでください」
多分手に入れたばかりの、イケメンスマイルも一応出しておく。
この気恥ずかしい感じ、異世界転生って感じで正直キツイ。でも正直一回はやってみたかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます