第14話 田中、説明する
俺はこの世界がリリシアがいた世界とは違うこと。ここはダンジョンの最下層であること。俺はダンジョンを配信する仕事をしているということ、仕事でこのダンジョンを攻略してたまたまここにたどり着いたこと。そして貴女を保護する意思があるのでついて来てほしいことを出来るだけ丁寧に伝えた。
俺が話し終えるまで、リリシアは黙って聞いてくれた。
そして全てを聞き終え、しばらく考え込んだあとリリシアは口を開く。
「なるほど、違う世界か。確かにここは私のいたところとは
「では……」
「しかし」
リリシアは剣を構え直し、敵対的な視線を俺に向ける。
なんだか嫌な予感がする。
「それは貴様を信じる理由にはならない。異世界? ダンジョン配信? 私を騙すならもう少しマシな嘘をつくのだな。そんな荒唐無稽な話、信じるはずがないだろう」
俺は心の中でがっくりと肩を落とす。まあ確かに信じろって方が無茶な話かもしれないけど、それが真実なのだから仕方がない。
「主人は誰だ? わらわをこころよく思ってない周辺諸国か……それとも魔王か? 狙いはわらわの身柄かこの
リリシアの持つ金色の剣が、光を帯び始める。
どうやらなにかしらの特殊な能力を持つ剣みたいだな。『宝剣』と言っていたし、名のある剣なのだろう。
さすがに俺も黙って斬られたくはないが、向こうを傷つけてしまったらもう仲を修復するのは不可能だ。……あれ? これ詰んでない?
"あーあ"
"もう無理ゲーだろ"
"一度敵対したらもう友好化できないタイプの敵だこれ"
"リリシアたんはあはあ"
"どうすんだよこれ"
"田中ァ! あの、その……なんとかしてくれェ!"
"エルフを失ったら世界的な損失だぞ。萌え的な意味で"
"なんとか配信者にしてくれ"
"エルフ系配信者か……いけるな"
"んなこと言ってる場合じゃないだろ草"
「我が宝剣の力の前にひれ伏すがいい!」
リリシアは高く跳躍すると、勢いそのままに斬りかかってくる。
こっちも剣を抜こうかと一瞬考えるけど、怪我をさせてしまったらまずい。迷った俺は右腕を前に出して、防御姿勢を取る。
「血迷ったか! エルフの力を思い知れ!」
勢いよく振るわれた黄金色の剣は、俺の右腕にぶつかり……パキン! という金属音と共に、中心から綺麗に
「へ?」
「あ」
サク、と宝剣の上半分が落下して地面に突き刺さる。
訪れる沈黙。や、やばい、気まずい。
思わず防御してしまったけど、こんなことになるなら白刃取りすれば良かった。
"いや草"
"なんで宝剣に勝ってるんですかね(呆れ)"
"硬すぎる"
"なにしとんねんw"
"なにをしたって……体で防御しただけだが?"
"事実なので困る"
"リリシアたん、呆然としてて草"
"そりゃ大事な剣が腕に当たっただけでへし折れたんだからそうなるw"
"相手が悪かったよ……"
"絶望したエルフの姫様の顔からしか得られない栄養素がある"
"リリシアたんはあはあ"
"空気気まず過ぎて草なんだ"
リリシアはしばらく呆然とした後、ぺたりとその場に座り込んでしまう。
そしてその大きな目に涙を浮かべたかと思うと……急に泣き出してしまう。
「うう……宝剣が折れちゃった……大事な物なのにぃ! 母様に叱られちゃうよぉ!」
そう言ってひんひんと泣きじゃくるエルフのお姫様。
いったいどうすればいいんだ。困惑した俺は彼女を慰めるため、リリシアのもとに近づくのだった。
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