第13話 田中、身分を明かす

"エルフキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!"

"魚人がいるならエルフもいる。当然だな(眼鏡クイッ)"

"めっっっっちゃタイプだわ、美人すぎる"

"一人称わらわは狙いすぎだろwwwwww好き(真顔)"

"リリシアたんはあはあ"

"そこはかとなく漂うくっころ感"

"姫騎士なんか!?"

"姫エルフではありそう"

"このエルフ、態度と胸がデカすぎる"

"(゚∀゚)o彡゜おっぱい!おっぱい!"

"巨乳デカ過ぎんだろ……"

"もうこれエロフだろw"

"でもこれからどうすんの? エルフ倒すの?"

"そもそもこのエルフってボスなの?"


 エルフを見たコメント欄は大騒ぎだ。

 その気持ちは分かる。俺だって視聴者だったらテンション上がっていただろう。男の子は何歳になってもエルフが好きなのだ。


 でも当事者になってしまったら浮かれてはいられない。

 このエルフは異世界を知る上で『超』重要参考人だ。ダゴ助も一応異世界から来たっぽいけど、あいつはモンスターに片足突っ込んでいる。

このエルフの方が異世界について詳しいだろう。話を色々聞くためにもまずは仲良くならなくちゃいけない。


「はあ……気が重い」


 いち社畜にはあまりに責任が重すぎる仕事だ。もしエルフを保護するのに失敗したら俺だけじゃなくて日本政府が世界中からバッシングされてしまうだろう。考えるだけでキリキリと胃が痛む。

 ダンジョンを調査するだけの簡単なお仕事のはずだったのに。これは堂島さんに手当を出してもらわないと割に合わない。


「なにをごちゃごちゃと言っている! 貴様は何者だ! わらわはあの憎き仇と戦っていたはず……答えろ!」


 凄い剣幕でエルフは言ってくる。

 どうやら彼女もダゴ助同様急にこっちに連れて来られたみたいだ。憎き仇とやらは気になるけど、まずは敵対心を解くとこから始めないとな。


「あー……ええと、私は田中誠と申します。お見知りおきを」


 社畜モードオン。

 俺は挨拶しながら流れるような動作で名刺を渡す。

 リリシアと名乗ったエルフは警戒しながらも剣を持ってない方の手で名刺をひったくる様に受け取る。向こうも情報が欲しいのは一緒みたいだな。


"エルフに名刺渡すの草"

"さす社畜"

"ビジネスマナーって異世界でも通じるんだな"

"マジで目が離せん。どう着地するんだこれ"

"リリシアたんはあはあ"


白狼ホワイトウルフギルド社長、田中誠……? 貴様ギルドの主なのか?」

「ええ、はい。そのようなところです」

「なるほど、多少は話が通じるみたいだな」


 まだ目は険しいけど、少し警戒心が和らいだ気がする。

 社畜経験が活きたな。


 このやり取りで分かったことが一つある。それは相手も『文字』が読めるということ。

 俺の名刺は当然ながら日本語で書かれている。あのエルフはそれをなんなく読んで見せた。つまり相手はもともと日本語が読めるか、未知の文字を読めるなんらかの技術を持っている。


 ……いや、持たされている・・・・・・・と考えることもできるか。

 ダゴ助だってなにもしていないのに日本語を最初から喋ることができた。邪神の配下の使う言葉と日本語がたまたま一致するなんてことはありえない。

 異世界からやって来た知的生物は言葉が自動翻訳・・・・されると考えるのが一番辻褄が合う。そしてその翻訳は文字にまで及ぶということか。

 ま、これも全て仮説に過ぎないんだが、可能性は高いように思う。


「なにを黙っているタナカ! なにか知っているなら全て話せ! ここはどこで貴様はなぜここにいる!」

「ああ、すみません。少し考え事をしていました。ええと、その話は少し長くなりますがよろしいですか?」

「……構わない。話してみろ」


 まだ剣先を向けられている状況ではあるけど、話を聞いてくれるみたいだ。

 信じてもらえるかは別として、聞いてくれるなら全部話してしまおう。

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