第4話 田中、しょげる
ミミックを倒すと、中からキラキラのコインや宝石などがジャラジャラと出てくる。
ミミックは食べた鉱石や宝石、人間の装備などを分解してお宝に変える能力を持つのだ。ありがたく貰っておくとしよう。
「わあ! 凄いお宝ですね! あ、でも個人じゃダンジョン内の物を換金できないんじゃ……?」
「まあな。でも今足立が色々と動いてくれてて、それができるようになるかもしれないんだ。そうしたら星乃にも山分けするからな」
「え、い、いいんですか!? 私ほとんど活躍してませんけど……」
「いいに決まってるだろ? 一緒に潜ってんだから。弟たちの学費も稼がなきゃいけないんだし、遠慮なく受け取ってくれ」
「うう、ありがとうございます……」
涙目になりながら、星乃はそれを了解してくれる。
星乃も登録者数が増えて生活がだいぶ楽になってきたみたいだけど、お金はたくさんあるに越したことはない。できる限り力になってやりたい。
"いい話だな……"
"シャチケン、やるやん"
"ていうかなんで弟たちのこととか知ってるの?"
"この前リリたんの食事シーンの動画に映っていたテーブルの模様が、ゆいちゃんの家のテーブルの模様と一致しているって言ってたネットストーカーいたけど……もしかして"
"あーあ、『
"家族ぐるみの付き合い……ってコト!?"
"こいつらセッ**したんだ!!"
"お母さんにも挨拶済みなんやろなあ"
"もうこれ夫婦だろ"
"ヒロインレース遅れてるかと思ったけど、追い上げが凄いなw"
コメントでは俺と星乃の仲を冷やかすものが大量に流れる。
否定したいが……家には実際にお邪魔してるし、
「ジャ、ジャア他二ナニカ残ッテナイカ見テミルカー」
"絵に描いたようなカタコトで草"
"後ろめたいことありそう"
"吐けやシャチケン!"
"田中ァ! 式には呼べよ!"
"本日のご祝儀タイミングはここですか!?"
俺は自然な無視を決めながら、ミミックの残骸を漁る。
ミミックの手足は消えたけど、箱の部分は丸々残っている、砕けてるけど。その砕けた木片を片付けると、その中からミミックの大きな舌が現れる。
「お、舌が残ってたか。しかもデカいな」
「これってなにかに使えるんですか、田中さん?」
「ああ、ミミックの
「た、食べ……っ!?」
"【悲報】シャチケン、ミミックを食べてた"
"オエーーーーッ!"
"あんなグロいものよく食えるな……"
"ゆいちゃんも引いてるよ"
"そりゃショゴスも食えるわ"
"パクパクですわー!"
"好き嫌いない子は大きく育つからね"
"いや、限度があるだろ"
"彼は正気かい!? 精神がやられてしまったんじゃないのかい!?(英語)"
"社畜生活で精神やられた説"
"まあ食うものに困ってモンスター食べたなら、社畜生活のせいだわな"
"おのれ須田ァ!"
"お、俺はゆいちゃんの舌を食べた[このアカウントは停止されました]"
"垢BANされてて草"
"キモすぎコメントはBANされるから気をつけろよ"
ミミックを食べると言ったら、引かれてしまった。
うーん、本当に美味いんだけど……ショックだ。
「今度視聴者参加型モンスター食事会でも開いて美味しさを知ってもらうか……?」
"やべえこと呟いてて草"
"いや行きたいけどモンスターは食いたくねえ"
"珍味好きワイ、普通に行きたい"
"トリコみたいな世界観の食事会になりそう"
"リリちゃんと握触手できるなら行く"
"ショゴス料理でそうで怖い"
"なんだかんだ枠は速攻で埋まりそうだなw"
"リアルイベントは行きたいけど、初回からレベル高すぎるw"
"ふ、普通のもの食べさせてくれ……泣"
うーん、来たい人も少しいるけど、大半の人はやっぱり抵抗があるみたいだ。寂しい。
「星乃もやっぱり嫌か?」
「え゛、そ……い…………嫌なわけないじゃないですか! た、楽しみです!」
「そうか! いやあ、嬉しいなあ」
「あは、ははは……」
"ゆいちゃん汗ダラッダラで草"
"そうよね、断れないよね"
"これが惚れた弱みか……"
"なんだかんだですぐ適応しそう"
"似たもの夫婦やからなあ"
"料理回も楽しみやで"
こうしてミミックの素材をビジネスバッグに詰め込んだ俺は、星野と共に中層に足を踏み入れるのだった。
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