第11話 田中、打ち返す
俺みたいな剣士タイプにとって、
遠距離からの攻撃に対処手段がないというのもあるが、一番は動きが読めないところにある。
これは俺だけじゃないと思うが、剣士タイプは相手の僅かな動きから、相手の動きを察して動く。膝の緩みで前進を察知し、目線の動きで狙いを読む。
相手が人間だろうとモンスターだろうと、その動きの機微から次の行動を読むことが出来る。
しかし魔法使い相手だとそうはいかない。
あいつらは杖を軽く振るうだけで多種多様な魔法を使い分けることが出来る。
そんなのパンチを打つモーションでキックやエルボーが飛んでくるようなものだ。動きの読みようがない。
まあ俺は慣れたから相手の魔素の『揺らぎ』である程度読めるようにはなったけど……それは魔法使い系のモンスターを一万体は倒す必要がある。
だけどそんなことをしなくても、有効な手段を俺は確立させた。
「相手がこっちに気がつく前に斬れば、魔法を使われることもない……!」
一瞬で距離を詰めた俺は、
ローブが真っ二つに切り裂かれ、中にあった黒いモヤのような物が霧散し手にしていた杖が音を立てて床に落ちる。
『……!!』
味方がやられたことに気づいた他の
俺は一秒もかけず接近し、スパスパと
"お相手さん、魔法使えてなくて草"
"
"Q.相手の魔法に対処できません A.魔法を使われる前に斬る"
"それが出来れば苦労しないんだよなあ……"
"前に全然歯が立たなくて逃げ帰った
"なんか目覚めている奴いるの草"
"視聴者の性癖はもうボロボロ"
俺が
仲間が五体やられたことであいつらも警戒したみたいだ。
俺はその隙にやられていた探索者のリーダーらしき人物に近づき、話しかける。
「助けに来ました、状況を教えていただけますか?」
「助けていただきありがとうございます……って、シャチケンさん!? 本物!?」
そう驚いたように言うと、他の探索者たちも俺を見て騒ぎ始める。
やっぱりもう顔が覚えられてしまっているんだな……。
「あの、状況を……」
「あ、すみません! つい興奮してしまって」
その探索者が言うには、もともと彼ら五人は別の二組の探索者パーティだったらしい。だけど
「あと少しで上層に出られるのに、こんなこところで
「……状況は分かりました。私が道を切り開きますので、その隙に逃げて下さい」
「いや、しかし……」
「安心して下さい。
俺はそう言ってスーツの内ポケットに手を突っ込んで、そこからビジネスバッグを取り出す。
「ええ!? どこにそんなのが入っていたんですか!?」
「このスーツは特別製でしてね。ポケットの中にたくさん物を入れられるようになっているんです」
"は? 次元拡張系のアイテムとか超高レアだぞ?"
"売ったら数千万は下らないだろ"
"いいなあ。便利そう"
"深層でしか手にはいらないぞそんなアイテム"
"この人、深層に一人で行ってたし……"
"そういえばそうだった"
ダンジョンの中には特殊な効果を持つアイテムが落ちていることがある。
俺の持ち物にはそれを利用した特殊な物がいくつかある。ちなみに須田に報告したら取られるので、あいつには内緒だった。
『ウゥ……ラァ!』
痺れを切らした
俺は火球の正面に立つと、手にしたビジネスバッグでその火球を
「せいっ」
『ギャギャ!?』
まるでテニスボールのように打ち返された火球は、
"[悲報]
"勝てるやつがいないだろむしろ"
"あの炎、数千度はあるはずなんだけどなんでバッグ無事なの?"
"ていうか炎って打ち返せるの? まず"
"シャチケンを普通の人間の尺度で考えちゃ駄目だから……"
"田中ァ! ナイススマッシュゥ!"
"あんな方法があるのか。試してみようかな"
"悪いこと言わないからやめとけ……"
"※彼は特殊な会社で働いていました"
他の
この超高硬度ビジネスバッグ、『
あっという間に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます