Lesson 5 ついに習得! 基礎(殲滅)魔法
027 「滅殺じゃ」
「四大魔法」
全ての魔法は、四つの魔法要素から成り立っている。
「土」「水」「風」「火」、これらをどう組み合わせるか、どの要素を強くするかで効果が変わる。
この四大要素、いわば基礎四大魔法を習得することで、理論上は全ての事象を再現することができる。
呪文を覚えるだけでなく、それがどのような要素で成り立っているのかを理解できるようになれば、さらに強力な呪文へ改良したり、新たな魔法を生み出すことすら可能になるのだ――――。
――――――――――――――――
「……理珠よ、ゴブリンを見なかったか?」
「ゴブ――なんてもの学校に連れて来てるのよ!」
「連れてきてないわ! 皇家秘技、魔物召喚ガチャの最低保証がゴブリンなのじゃが、どうも数が多すぎて檻から逃げだしてな。一匹足りないのじゃ」
「逃げ出した背景なんて聞いてないよ! どうするの、危険じゃないの!? 魔物でしょ、小鬼でしょっ!?」
「あぁそれは大丈夫じゃ、大きさはリンゴ三つ分で小さいし、白い帽子を被っているからよく目立つ」
「それスマー◯じゃない?」
「たわけス◯ーフは青色じゃろ! ゴブリンは緑じゃ……でも似ているな……近縁種か?」
やめてよ、スマ◯フを見る目が変わっちゃうじゃん!
……ってそれどころじゃない。私はぶんっと首を振る。
「――ゴブリンが、この学校にいるってこと?」
「おそらく。もし今はいなくとも、最終的にはここに来るはずじゃ」
………………なんで? ここ、ただの中学校なんだけど……。
魔物を惹きつける何かでもあるとか?
「支配を逃れた魔物は支配者を襲う、そう相場は決まっておる。皇家の敷地外へ逃げ出した今、外界にいる皇家の人間はワシだけじゃ。つまりワシを襲いに来るのじゃ!」
原因アケノか!!!
それなら学校休んだほうが安全なのでは――と思ったけど、アケノはこの状況を逆手に取って捕まえるつもりらしい。
自信満々に拳を組んだり開いたりしている。ぽきぽき音を鳴らしたかったっぽいけど鳴らなかった。
「……でもやっぱり危ないよ。小さくても敵意をもっているんでしょ?」
「うーむ……敵意とはまた違ってじゃな……」
「棍棒で殴ってくるとかじゃないの?」
「違う。奴らは雌しか襲わないんじゃ。そしてあんなことやこんなことをするんじゃ。それがゴブリンという生き物の習性じゃ」
「あんなことって………………キモっ! 殺せ!!!」
おおういきなり物騒じゃな、とアケノがびっくりする。
私は無視して、ぐっと拳を握りしめる。こきんと鳴った。
最低! 敵だ!
乙女の敵だ、人類の敵だ! 害獣だっっっ!!!
「なんでそんなやつら飼ってるの! なんで駆除しないのっ!?」
「いや……一応命あるものじゃから。むやみな殺生は駄目じゃろ?」
「い、命ったって……共存なんてできないでしょ」
「そうなんじゃが。ううむ……」
悩むアケノを見ていたら、頭がすぅっと冷えてきた。
……まあ、そうだよね。いくら害があるからって、人間の都合だけで殺すのはよくないよね。
うーん、私もまだまだだ。くだらないことでカッとなっちゃって。
意外というかなんというか、アケノはやっぱり名家の出なんだと実感する。はちゃめちゃな子だと思ってたけど、こういう時は冷静だし。
悔しいけど私よりモラルがあった。
心根は優しい子なんだろう。害虫も殺さず逃がすような、そういう人間なんだろうな。
「……ごめん、アケノが正しいよ。殺すのは言い過ぎだった」
「いや、いいんじゃ。元はといえば皇家の失態なのじゃ」
「聞く限りだとゴキブリみたいに感じちゃって、つい」
ぴく、とアケノが顔を上げる。
ゴキブリじゃと? と呟いた。
「うん、ゴキブリ……むしろそれ以下な印象――」
殺殺殺殺 殺殺殺殺 殺殺殺殺
殺 殺 殺 殺
殺 殺 殺 殺
殺 殺 殺 殺
殺 殺 殺 殺殺
殺殺殺殺 殺殺殺殺 殺 殺
「――うわぁいきなり物騒!!!」
アケノが豹変した。瞳が闇に染まっている。
殺意がめらめらとほとばしっている……!
「ゴキブリ。やつは許さぬ。理由は気持ち悪いからじゃ。生きることは許さん。殺す。滅殺じゃ!!!」
「ど、どうしたのよ。何があったの?」
「思い出したくもないわ。なるほど、ゴキブリと同じかそれ以下の生き物……理珠はそう思うか……」
「う、うん……?」
「ならばゴブリンも殺すッッッ!!!」
あー。うん、そっかー。
そういえば魔女だったなこの子。
気を付けてね、と控えめに言って、私はそそくさとその場を離れた。
ささ、放課後は修行しないと。
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