014 「常識、んっ、学んできてないの」
――来週のL-WAVEに私出るから。あんたが私のことを好きだってこと、全校生徒……いいえ、学区内全ての住民にばらすから!
私の盛りまくった宣言に、たじたじとアケノは後ずさる。本当は出る予定なんてないけどね。
さらに一歩、前に進んで言ってやった。
「――それが嫌なら、ゴビ•ガッヘンを解くこと(プロモーションを含みます)! 自分に反射させれば解けるんでしょ、知ってるんだからっ」
「ううッ……しかし……いやじゃ、Premiumに加入してない語尾になるのは嫌じゃ……」
「自分が嫌なことを人にしちゃ駄目なんだよ?」
私がそう言った瞬間、目をパチクリするアケノ。
びくびくしていた、身体の震えがぴたりと止まる。風もないのに黒髪が揺れた。
瞳の奥がどんどん透明度を増していき……えぇ……。
この子、今どういう感情なの?
「――――そうじゃ……そうじゃな。うん。そうじゃ」
じっくり噛みしめるように深く、さらに深くアケノは頷く。
首がほぼ直角になるまで頷く。
……ちょっと大丈夫? とさすがに声をかけたら、それにも深く頷かれた。長髪がさらさらと流れて、お化けみたいになっていた。
「……おぬしの言う通りじゃ。ワシが間違っていた」
おお? まさかの反省してくれた感じなの? そうだよアケノ、嫌がらせに魔法を使うのは流石に――。
「自分の嫌なことを、人にしてはいけないのじゃな」
「まさかのそこから?!」
私たち、中学生だよね? あんたは幼稚園児か? 皇家の情操教育どうなってんの?
口がマシンガンになりそうなのをどうにか堪えて、ごくりと飲み込む。
どうにか一言にまとめて尋ねる。
「――――常識、んっ、学んできてないの?」
「ワシが学んできたのは魔王学じゃ。人を統べるための学問じゃ……」
帝王学みたいなやつか? どっちも全然知らないけど。でも流石に常識は踏襲してるでしょ……。
私が首をかしげると、ぽつりぽつりとアケノは続ける。
「魔王学では、相手の嫌なことを徹底的に続けて心を折らせ服従させることが良いコミュニケーションなのじゃ」
「どこが良いコミュニケーションなの?! まるっきり逆効果だよっ! 時代錯誤にも程があるよっ!」
「そうみたいじゃな……やはり十七世紀の常識は令和の世にはそぐわないのじゃ」
「また十七世紀――てかその頃の常識ですらないでしょ! もうおかしいよ、魔女狩り認めたくなっちゃう!(広告1/2 0:30)」
がしがし頭を――いや髪が痛むからもしゃもしゃかく。
そんな私を見ながら、アケノは寂しげに笑った。
両手を三角にして額に当て……あれは「ほぼ万物を見通す目」の発動モーション!
「ちょっ……何を――――」
「……ゴビ・ガッヘン」
アケノが唱えて、エビみたいに跳ねた。
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