009 「気管支に入っただけ」
『――むかしむかしの話! テレビに出たとある超能力者はスタジオから念力を飛ばして、視聴者のスプーンを曲げたらしいよ! それをアケノさんにもやってもらおうというこのコーナー! アケノさん、魔女ってそんなことまで出来ちゃうの!?』
『普通はできない! じゃが、ワシだけはできる!』
自信満々な声がスピーカーを震わせる。
おお、と教室も震える。
『ワシの固有魔法はほぼ全てを見通す! 見通しながらであれば、どんなに離れた物にも魔法をかけられるのじゃッ!』
アケノの固有魔法、「ほぼ万物を見通す目」。
そんな使い方もできるんだ……ずるい。
『それはすごいっ! 果たしてアケノさんはどんな魔法を見せてくれるのかー?』
『ムフフフフッ、それはかけてみてのお楽しみじゃ! そしてかける対象はもう一人の魔女ッ! 二年三組、雨宮理珠じゃ!』
――――――は? 私?
「……あんにゃろうっ!!! また嫌がらせかっ!」
好奇の視線がびしばし突き刺さる。
それは教室のみならず、廊下からも向けられていた。
なんか他クラスからも来てる……ていうかどんどん集まってきてるよ!
「リズ、大丈夫……?」
「大丈夫に見える?」
『ムハハハハハ雨宮理珠! 怖気付いたのか? すでに固有魔法は発動させておる、おぬしの表情も行動も声もワシはすべて見通しているぞッ!』
「ああ!? 受けて立とうじゃないっ!」
「ええ……リズそれでいいの……」
ナオの呆れ声は聞こえないふりをした。
スピーカーから満足そうな笑い声がして、すげえ本当に通じてるぜ! なんて声がちらほら上がる。
外野は気楽なもんだ。まったくもう!
『――それでこそ我が配下にふさわしい!』
「あんたの配下になるつもりなんてないっ!」
『ではいくぞ……ゴビ•ガッヘン!』
「無視しないで――――うっ!」
――――がくん、と衝撃がきた。
それも喉のあたりにダイレクトに……かはっ……。
「リズっ!」
「大丈夫、なんともない……なんか気管支に入っただけ」
んっ。ん゙んっ! よし。
私はスピーカーを睨みつける。
「アケノ! 私に何をした!」
衝撃はあったけど、特に変わったところはない。
あいつ、なんの魔法をかけたんだろう?
次の授業は発表もあるし、変な魔法じゃなければいいんだけど……。
『ずばり! たまに語尾が変になる魔法じゃッ!』
「ピンポイントで最悪な魔法かけてくるなァ!!!」
ばん! と机を叩いて叫んだ。
何してくれとんじゃ! 前出て発表なんだけど! 語尾が変ってあれだよね、ニャンとかワンとかぺことか付くってことでしょ?
公開処刑じゃんっ!
「だ、大丈夫だよリズ。ボクは笑わないから」
……なんというか、ナオの言葉がちょっぴり心強い。
そうだよ、真剣に喋れば大丈夫かもしれない。真面目な空気の中でなら、スルーされるかも。
私はナオに微笑んだ。
「ありがと、ナオはやっぱり優しいね(プロモーションを含みます)」
「…………えっ?」
「あれっ(プロモーションを含みます)」
…………。
……………………。
「…………なんで動画広告みたいになるのっ!?」
「ボクとは上辺だけの付き合いってこと……?」
「いやどう考えてもアケノの魔法でしょ!!!」
クラスメイトから歓声が上がる。
ムハハハハハとスピーカーが高笑いして、勝ち誇ったように喋りだす。
『どうじゃ参ったか雨宮理珠! 魔法を解いて欲しければワシの配下になることじゃなッ! でなければ効果が切れるまでずっとそのままじゃ、ヌゥッハッハッハ!』
『ここからではよくわからないけど、みんなの歓声は聞こえるよーっ! これは成功したってことかな!? 現地にいる子は魔法を見れたかっ!?』
『ではワシはこれで失礼ッ! ドヒューン』
『ああっちょっと! ええーい時間も押してるし、今日のL-WAVEはこれにて終了だよっ! みんな、また明日ーっ!』
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