6-4話 プロポーズ



「覇!」


 隣国の王妃が、両手を胸の前で組み、赤い気を発します。なるほど、これが“王家の力”ですね。


 これは、私が発する気とは、少し違います。


 

 隣国の王妃から、自分の娘ではないと言われたセレーナ嬢が、苦しんでいます.


 あれ? 王国の貴族も何名か、苦しんでいます。

 

 隣国の王妃が発した赤い気の重さに耐えられないようですね、なぜでしょうか?



「貴女は、何者ですか」

 隣国の王妃が、隣国の王女であるはずのセレーナ嬢を問い詰めます。



「え?」

 セレーナ嬢が、横に立ち苦しんでいる第一王子に口づけをしました。


 第一王子が老化したように見えます。



「破!」

 セレーナ様が、両手を胸の前に組み、黒い気を発します。これは、見たことのない力ですね。


 近衛兵が倒れました。

 貴族たちも、倒れはしませんが、動けないようです。


「強力な、、、こいつ、、、何人の力を吸い取ったんだ」


 隣国の王妃様も、魔力が枯渇寸前のため、動けないようです。


 昨晩、もっと魔力を渡しておくべきでした。



「爵位に縛られた弱き者たちが…」


「私の、爵位の低さに、貧乏に、苦しまされた恨みに、押しつぶされるがよい…」


 セレーナ嬢が、醜く笑っています。


「王族から吸い取った力は、最高に美味い。どうだ動けまい!」



 あれ? 私は動けますよ。


 セレーナ嬢だった女性が、第二王子に近づきます。


「こいつも美味そうだ」


 口づけするつもりのようです。



 私の、彼を護りたいと想う気持ちが、膨れ上がります。


「ひざまずきなさい!」

 私の気が、秘められた力が、セレーナを押しつぶします。


 セレーナがひざまずき、左手の腕輪が、割れて落ちました。



「動けるぞ」

 貴族たちの呪縛が解けました。


「化け物が!」


 王妃様が、ひざまずくセレーナに拳を振り下ろしました。


 第二王子が、考えるより先に体が動くのは、この王妃の血筋ですね。


 床に叩きつけられ、横たわるセレーナは……あれ?

 干からびています。



「国王は体調がすぐれません、私が代行します」

 王妃が宣言しました。


「この化け物は、爵位を全てはく奪、神殿の牢にぶち込みなさい」


「第一王子は、廃嫡とします」

「第一王子の個人資産は、全額を、被害にあった令嬢たちへの慰謝料とします」


「第二王子、いや、バート大公を王太子とします。いいいですね!」


 王妃は、一言で、御前会議の承認をとりました。


「新しい王太子の婚約者は、フラン女公爵で変わりはありません」


 王妃の、荒れ狂う大波のような反撃です。



   ◇



 私は屋敷に戻りました。


 お父様は、あの御前会議の後始末のため、王宮に残っています。


 お母様、ジジと三人でディナーです。


「お父様は、侯爵となり、たぶん第二王子の後ろ盾になります」


「辺境伯様も、侯爵となり、たぶん第三王子の後ろ盾になります」


 私は淡々と説明します。



「そうじゃなくて」


「第一王子は廃嫡、被害にあわれた令嬢たちには賠償金が払われます」


「セレーナは、神殿の牢に入れられ、たぶん拷問を受けることになります」


「ロペス伯爵家は、取り潰しになります」



「貴女のことよ!」



「第二王子が王太子に、私は婚約者になりました…」


 おめでとうと、皆さん喜んでいますが……

 私は、プロポーズされていないのですよ。



「若奥様、大変です。第二王子様が来ました!」

 執事長が、あわてています。


   ◇


「どうしたの? こんな時間に」

 玄関ホールで待つ第二王子に訊ねます。


 彼は、手ぶらです。少し期待しましたが、違ったようです。


「遅くなって、すまなかった」

「受け取ってくれ」


 玄関前の馬車の扉が開かれ、中には、たくさんの赤いバラが積まれています。


「フラン、愛してる、俺の妻になってくれ」


 プロポーズです。

 ぶっきらぼうな台詞ですが、これはプロポーズです。


「はい、よろこんで……」

 不意打ちなので、気の利いた返答ができません。


 彼がハグしてくれました。

 次に、あれが来ます。


「ジジは、見てはいけません」

 お母様の声が聞こえます。


「「キャー」」


 いつの間にか、周りに、家族と使用人の方々がいて、全てを見ています。


 祝福してくれていますが、恥ずかしいです。




(次回予告)

 第二王子のプロポーズを受け入れたフラン。次回はラスト、大団円を迎えます。


 フランの「みんなが美味しい弁当を食べれる国」という夢は叶うのでしょうか?



あとがき

 読んでいただきありがとうございました。

 次回18話で完結しますが、現状を、星などで評価していただけると嬉しいです。

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