6-3話 隣国の王妃 王家の指輪



「明日は、婚約を発表する御前会議なのに、神殿で聖女の修業とはキツイです」


 第二王子と私の仲は、発展もせず、壊れもしないまま、時が経っています。



 修行で、10キロを毎日走っていたら、脚が綺麗になった気がします。


 屋敷のメイドさんも、私の足を見て綺麗だと驚いていましたが、令嬢らしくはないそうです。



「フラン、お客様に挨拶を」


「はい、聖女様」


 珍しく、聖女様がお客様を連れて、聖女の修業を見に来ました。


 カーテシーをとろうとして、修行用のパンツルックだったのを思い出しました。


 とっさに、右手を胸の前に回して、ボウ・アンド・スクレープに切り替えます。



 お客様は、銀髪で美しい女性です。


 王妃と同じ年齢だと思われますが、このクラスの夫人は、年齢が全く読めません。


「この令嬢ですか? 指輪を身に着けずに“王家の力”を発動したのは」


「そうです。しかし“王家の力”とは少し異なるようで、もしかしたら……」


 二人の会話は、私のことを言っているようですが、よく分かりません。



「フランさん、私と両手をつないで頂けますか」


 お客様の要望です。聖女様がうなづいていますので、従います。


 両手をつなぎます。たぶん、私の光魔法の素質を感じ取っているのだと思います。



 あら、お客様の魔力が少なくなっています。最近、大きな魔法を連発したようです。


 私の魔力を、少し渡します。


「ありがとう」

 お客様が微笑みます。


 私と、魔法の相性が、とても良いです。



「綺麗な指輪ですね」

 お客様の左手にある指輪は、とても綺麗に輝いています。


「貴女は、この指輪が見えるのですか!」


「はい」


 お客様は、驚いたような、嬉しそうな顔をされました。


 そして、私の銀髪を、クシでとかして下さいました。


 なぜか、すごく心地よい時間でした。




 ◇




 次の日、いよいよ、御前会議が始まりました。


 大きな会議室です。王族の方々は上座に座り、左右の壁側に並べられたイスに主要な貴族が座っています。


 近衛兵が、王族用の扉に2名、貴族用の扉に2名、配置されています。


 私の席は、貴族のイスの上位、王族のすぐ近くの侯爵の席です。


 セレーナ嬢も同じです。


 もう一人の侯爵は、欠席と告げられました。噂では、登城を禁止されているようです。



「今日は、三つの報告がある」

 国王が話し始めます。


「一つは、貴族の派閥の再編成である」


「王子たちの婚約によって、派閥による後ろ盾に、ねじれ現象が生じる」


「これを解消するため、後ろ盾を務めてきたきた辺境伯と両伯爵を、本日から、侯爵とし、派閥の長を辞任してもらう」


 お父様が、侯爵になりました。



「二つ目は、二人の王子の婚約者を、結婚に備えて公爵とする」


「第一王子の婚約者、セレーナ女侯爵を公爵に」


「第二王子の婚約者、フラン女侯爵を公爵にする」


 お父様から事前に聞きはしましたが、私は、いつの間にか、第二王子の婚約者にされています。


 第二王子も、事前に聞かされているようです。



「三つめは、王太子と大公の任命である」


「第一王子を、この会議の承認を得て、王太子とする」


「第二王子を、本日から大公とし、第一王子を支えてもらう」


 国王の宣言であり、異論は認められません。


 沈黙を経て、形式上、承認されました。




「では、二人の王子の婚約者を紹介する」


 皆さん、すでに私たちを知っていますので、これはセレモニーです。


 第一王子とセレーナ嬢が並んで、国王の右側に立ちます。


 第二王子と私が並んで、国王の左側に立ちます。



 ん? 近衛兵が、扉の小窓から、外の誰かと話をしています。


「会議中、失礼します。隣国の王妃様が到着されました、いかが致しましょうか」


 近衛兵が困惑して聞いてきます。


「すぐに通しなさい」

 王妃が命じます。


 会議室がザワつきました。


 知っていたのは王妃と辺境伯だけのようです。

 国王でさえも、来客を聞いていなかったようです。



「隣国の王妃様、よくいらして下さいました、どうぞ正面にいらして下さい」


 王妃が、隣国の王妃を、国王の前に招きます。


 あら、あの方は昨夜のお客様です。



「こちらがセレーナ嬢です。どうか、親子の対面をなさって下さい」


「栗色の髪、隣国の“王家の指輪”を身に着ける、隣国の王女です」


 王妃がセレーナ嬢を紹介します。



「その方は、私の娘ではありません」

 隣国の王妃が、言い切りました。


「髪の色、瞳の色が違います」

「娘の容姿は、暗殺防止のため、嘘の情報を流していました」


「王家の指輪も偽物です」

「その腕輪で魔力を補っているようですね」


 腕輪を飾る宝石の数が、以前より増えています。



「王家の指輪は私が身に着けています」


 なんてことでしょ!


 これは事件です。御前会議が、大荒れになります。




(次回予告)

 第二王子の婚約者になったフラン。次回は、二人の王妃が暴れます。

 いよいよ終盤です。恋のライバルの正体は、、、


 フランが、自身に秘められた力を開放します



あとがき

 読んでいただきありがとうございました。

 18話で完結しますが、現状を、星などで評価していただけると嬉しいです。

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