4-4話 伯爵になる グリーン伯爵登場



「この生徒が、フランです」


 学園長室で、応接ソファーセットに、学園長と、いつかのおじさんと、おばさんが座っています。


 学園長が、私を紹介してくれました。



 とっさに、カーテシーで、挨拶します。これは私の勘です。


「顔を上げなさい」


 学園長の命令に従い、足をそろえた令嬢立ちをとり、顔を見せます。


「この生徒が、フランです、間違いありませんか、グリーン伯爵様?」


 やはり、このおじさんは伯爵でした。


「はい、この生徒さんです」


 何が起きているのか解りません。



「フラン、こちらの伯爵ご夫婦を覚えていますか」


「先日、学園の玄関でお会いしました」

 警戒しながら答えます。


「あの時はありがとう、フラン嬢」

 目下の者にもお礼を言える、優しい伯爵のようです。


「いえ、当たり前のことを行っただけです」

 人生の先輩に対して、敬意を払うのは、当然です。



「楽にして」

 心遣いもできるご夫婦です。


「ありがとうございます」


 顔に微笑みを浮かべます。でも、お気持ちはうれしいですが、警戒したままです。


「実は、私たちは、貴女を養女にしたいと思っているのです」


「え?」

 これは、どう答えればいいのでしょうか?



「私には、家族の記憶がありませんので、家族が何なのか分かりません」


「よろしければ、私に家族を教えて頂きたく思います」


 正直に話しました。



「決まりですね」


 グリーン伯爵ご夫婦は、喜んでいます。


 窓の外は青空、白い雲が浮かんでいます。



   ◇



 後日、グリーン伯爵の屋敷に招かれました。

 私が養女となる屋敷は、予想以上に大きいです。


 ドレスに着替えさせて頂き、王族の使者を待ちます。


「第一王子様」

 使者として、第一王子が来てくれました。


 伯爵様は第三王子の後ろ盾なので、第三王子が来るものだと考えていました。


「国王は、フラン嬢を伯爵家の養女と認めたことを伝えます」


「おめでとう、フラン女伯爵」


 国王の名代である第一王子が、私のドレスに、伯爵を表す黄色のサッシュをかけてくれます。


「これからは私を名前で呼んでくれ」


 彼は、以前交わした約束を覚えていました。


 今回も、お顔が近いです。



 でも、今回は、伯爵ご夫婦の喜ぶ顔の方が、とても嬉しいです。


「フラン、これからは、私たちのことを本当の親だと思ってくれ」


 伯爵から優しい言葉を頂きました。


「はい、お父様、お母様」

 なんて響きの良い言葉なのでしょう。



 伯爵、いえ、お父様が第一王子と、なにやら話しています。


「第一王子様、少し疑問な点があるのですが、よろしいですか」


「先ほど、フラン女伯爵と呼ばれましたが?」



 言われてみれば、私は、伯爵家の令嬢のフランになったはずです。


 呼称がフラン女伯爵だと、私が伯爵になったような雰囲気です。



「まずは、フラン嬢はグリーン伯爵家の養女として認められた」


「さらに、もう一つ、フラン嬢自身が伯爵となった」


 第一王子が説明してくれます。



「え?」 そんなこと、前代未聞ですよね。


「今回、セレーナ嬢とフラン嬢に、伯爵の爵位を授与したのだ」


 第一王子が、これ以上は言えないよと、ニコニコと笑っています。


 王子は、セレーナ嬢との婚約を狙っていたと思っていましたが、彼女が第二王子と婚約しそうなのに、落ち込まないのでしょうか?


 もしかしたら、私だけに心を向けてくれたのかも。



「領地は与えないため、それぞれの親の加護の下、伯爵として仕事してもらう」


 伯爵の仕事と言われても、領地がないのですから、税の徴収はできませんし、治安の維持もできません。


 あとは、御前会議やパーティーに顔を出すくらいでしょうか。



 お母様は、何か心当たりがあるようです。


「フラン、王妃様は先を読むお方です」

「ここは、素直に喜びましょう」


「わかりました、お母様」


 実は何も分かりませんが、この先、何があろうと、女神さまの導きで歩むだけです。




「まずは、この夏休みは、伯爵としてのお勉強ですね」


 お母様、手加減をお願いします。




(次回予告)

 なぜか伯爵になったフラン。次回は、王宮での夜会に出席します。

 そこで、第一王子と、、、



あとがき

 読んでいただきありがとうございました。

 18話で完結しますが、現状を、星などで評価していただけると嬉しいです。

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