5.侯爵になる(3年生2学期)

5-1話 第一王子アレックスへの想い



「伯爵家のフランと申します、よろしくお願いいたします」


 秋の訪れを祝う夜会が、王宮で開催されています。

 実質は、セレーナ嬢と私のお披露目です。


「お話はきいております、よろしくお願いいたします」


 私は初めての夜会なので、お父様と一緒に、皆様へ、挨拶に回ります。


 イブニングドレスは、私の瞳に合わせた濃い青紫色です。


 華美な飾りは無いですが、肩の露出が多く、胸の詰め物も多目で、少し恥ずかしいです。


 お父様からエスコートされていることもあり、伯爵家の養女であることを強調して、挨拶して周ります。



「ご令嬢様とは、同級生として仲良くさせていただいております」


 学園の同級生のご両親も多いです。

 爵位とお名前は、夏休み中の伯爵教育で頭に叩き込んでいます。



 会場の反対側では、セレーナ嬢が、一人で挨拶に回っています。


 彼女のイブニングドレスは栗色で、髪の色とマッチしています。


 肩回りや背中の露出が多く、胸も詰め物で強調されており、華のある大人の雰囲気が香るドレスです。


 彼女の側に、第二王子がいます。

 なにか、胸のあたりがモヤモヤしてしまいます。


 私の、胸の詰め物が多すぎるためですね、きっと。


「こんばんは、フラン様、私とお話をしていただけませんか」


 どこかの子爵おじさんが、私がロペス伯爵に挨拶をしようとしたタイミングで、急に、挨拶回りに割り込んできました。



「グリーン伯爵家の養女は、挨拶の順番も知らないようだな」


 自分への挨拶が遅いと、ロペス伯爵がイチャモンを付けてきました。


「申し訳ありません」

 これは、罠ですね。


 割り込んだ子爵おじさんは、この伯爵の手下です。


 そして、このロペス伯爵は、第二王子の後ろ盾になっており、さらにセレーナ嬢を養女とした伯爵です。


「挨拶の順番も知らない養女でしたか」


 割り込んだ子爵おじさんが、笑いながら、私から離れていきます。


「キャ」


 横の令嬢がよろけました、子爵おじさんがドレスの裾を踏んだようです。


 お父様に、令嬢が持っていたグラスの飲み物がかかりました。


「伯爵家の養女は令嬢のドレスも踏むのか」


 子爵おじさんは、私が踏んだと、責任転嫁してきました。


 あら、令嬢は、辺境伯の孫娘のティファニーでした。


「申し訳ありません」


「問題ありません。フランがいつもお世話になっています」


 辺境伯の孫娘が謝罪し、お父様は笑って受け入れています。



「辺境伯、私が罰します」


 辺境伯と話をしていた第一王子が、こちらに気が付いたようです。


「子爵、貴女がドレスを踏んだのを見ていましたよ」

 第一王子が子爵おじさんをとがめました。


「自分の罪を他に転嫁する貴族は、この夜会にふさわしくない、以後、貴方は王宮への出入りを禁止とする」



「ぺロス伯爵、知人は選んだ方がよい」

 第一王子は、伯爵にも釘を刺します。


「あのような子爵は、私の知人ではありません」

 伯爵は、子爵おじさんを切り捨て、離れていきます。



「第一王子様」

 お礼を言うため、話しかけました。


「フラン嬢、私のことは名前で呼ぶ約束だったよね」

 そっか、この場は、従うのが礼儀ですよね。


「アレックス様、ありがとうございました」


 初めて名前で呼びました。

 とても恥ずかしいです。


「ダンスが始まったら、私と一曲踊ってもらえるかな」


 この誘いは、意味が深いですよね。


「わかりました」

 顔では落ち着いているフリをしますが、内心はドキドキしています。



 やはり、私を選んで下さったのですね。

 王子と手をつなげる時が、来た〜!!!



 王族とのダンスは、これほど注目を浴びるのですね。


 この緊張の中を、優雅に会話しながらのダンスを楽しむなんて、私には無理でした。


 あっという間に、ダンスが終わりました。


 何を話したのかも覚えていませんが、第一王子のダンスのリードは、超一流だという事は分かりました。




(次回予告)

 第一王子とダンスを踊ったフラン。次回は、恋のライバルが第二王子とお見合いします。


 そして、フランと第一王子は、、、



あとがき

 読んでいただきありがとうございました。

 18話で完結しますが、現状を、星などで評価していただけると嬉しいです。

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