3-2話 領地視察 王家の力?



「領地が、不作で困っています」


 教室で、金髪で美乳の男爵令嬢から、領地が不作で困っていると、悩みを聞きます。


「これ内緒よ。男爵令息からプロポーズがあったのだけど、領地が不作なので結婚資金が心配で、答えを出せないでいるの」


 彼女は、お相手の男性が好きなようです。


 この場合、誰かに背中を押して欲しいと、そういう事ですね。


「それは困りましたね」

「私に出来ることがあれば、お手伝いします」


 彼女は、美乳だけでなく切れ者でもあるので、良い関係を作りたいです。



   ◇



「フラン様、この馬車は乗り心地が良いですね」


 従者見習いの女の子ジジと一緒に、美乳令嬢の領地へ馬車で向かっています。


「私は、学園長から騙されたのかしら」


 数日前、学園長から領地視察に同行するよう言われました。


 美乳の男爵令嬢の領地です。


「第一王子様と一緒と聞いて、飛びついたのは軽率だったわね」


 お忍びで王子が領地を訪れると言われて、内容をよく聞かないでOKしてしまいました。


「この馬車は王族用なんですって、しかも、第一王子様が、変装して馬に乗って横にいるなんて、贅沢の極みです」


 従者見習いの女の子は、はしゃいでいます。


「第一王子様は、不作領地への補助金の査定でお仕事、遊びじゃないのですよ」


 本当は、彼と二人きりでの馬車の旅を想像していたなんて、言えません。


 そうは言っても、今日一日、彼と一緒に過ごせるのはうれしいです。



「今日も良い天気ですね、フラン様」

 女の子に言われて、窓の外を見ます。


「そうですね、若葉には元気がありませんね」


 空は青空なのに、広がる畑には、元気がありません。

 このままでは、今年も不作になります。


「水路に、水が少ないですよ?」

 女の子が気が付きました。


「聖女様と回った貧困地域に似ています」


 こんな時、聖女様ならどうするのでしょう?



 まずは敵のボスを潰せ! これが聖女様の教えです。


「決めました」


「第一王子様に伝えて下さい、行き先を少し変えますと」


 女の子に指示します。


   ◇


 美乳令嬢の話によると、領地の水源は、隣の領地と共用であり、その水源からの湧水が減少しているのが不作の原因らしいです。


 神殿で調べたところ、美乳令嬢の領地と、隣の領地は、税収が減少したとして補助金を申請していました。


 美乳令嬢の領地は、不作で税収が減っていました。


 しかし、隣の領地は、新しい水源税で、農家が困っているのが原因のようです。


 税収のほとんどは、派閥の伯爵家に貢ぐという流れができていました。


 本当の原因は、隣の領地にあると、私の勘がささやきます。




「ここが隣の領地の屋敷ですか、裕福そうですね」


 ジジは素直な感想を言います。


 王家の紋章が付いた馬車が来たので、屋敷は大騒ぎのようです。


「フラン、何をするつもりだ」

 第一王子は困惑しています。


「聖女様ならどうするか考えました」



 私は気を集中します。


 昔、出会った金髪の少年のことを想うことで、私は気を通常以上に集中できます。



「こんにちは、昼食中に失礼します」


「なんだテメエ!」

 雑魚どもが私たちを取り囲みます。


 かまわず、先に進みます。

 私の気に押しつぶされ、雑魚どもがひざまずきます。



 こいつが、ここのボスですね。


「水源に細工をして、自分の領地だけに水が来るようにしたのは、貴方たちですね」


 これは、はったりです。


「不作でもないのに、不作のフリをして差額を横領していることも、認めますね」


 これも、はったりです。


「沈黙をもって罪を認め、女神さまに懺悔したことを確認しました」


 聖女様の真似をしてみましたが、上手くいったようです。



「第一王子様、水源を国王の直轄として頂けますでしょうか」


 あれ? 後ろにいるはずの王子が、いません。


「第一王子様は、具合が悪くなったので、外で休んでいます」


 従者の女の子が教えてくれました。



「久しぶりの遠乗りで、酔ったのかしら」

 王子の体調が心配です。



 光属性の魔法で、王子を内緒で軽く治癒しました。

 王子に手を触れるなんて、今日は幸運な日です。



 体調が回復した第一王子が、取り調べを始めました。

 邪魔にならないように、外で待ちます。


 ここのボスは、男爵ご自身でした。



 見上げると、青空に白い雲が浮かんでいます。


「女神さま、ありがとうございました」

 感謝の気持ちを伝えます。

 


   ◇



 帰り道、馬車の中です。


「水路に水がたくさんありますよ、フラン様」

 水路には水が満たされ、若葉は輝いています。


「隣の領地は、高額な賠償金を払うそうですよ」

 この女の子は、大人の会話まで聞いていたようです。


 賠償金で、困っている農家さんを救い、残ったお金で、美乳令嬢の結婚資金になると思います。



 学園に着く頃には、日が落ちます。


「一緒の旅も、もう終わりですね」


 一抹の寂しさを覚えます。



   ◇



 教室の中、今朝は何だか騒がしいですね。


「美乳令嬢様は、プロポーズを受けると答えたらしいですよ」


 従者の女の子は平民ですが、男爵令嬢を美乳令嬢と呼びます。


 これは不敬です。でも、クラス中で、そう呼んでいることが判りました。


「恋話は、令嬢の栄養源です!」


 キラキラと目を輝かせる女の子は、女子力と噂話の収集能力が、私より桁違いに優れているようです。



 はぁ、私も美乳になれば、あの方に振り向いて頂けるのかな。


「よし、毎日の腕立て伏せを100回増やしましょう」


 また第一王子に近づける、その時が来る気がします。




(次回予告)

 第一王子と視察に行ったフラン。次回は、視察での成果で褒美を受け取ります。

 彼は二股なのか? チャラ男は優しいのか?


 心が揺れます。



あとがき

 読んでいただきありがとうございました。

 18話で完結しますが、現状を、星などで評価していただけると嬉しいです。

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