3.子爵になる(2年生3学期)

3-1話 ロリコン令息 ティファニー嬢登場



「同級生なのに、こうやって見合いの席となると、恥ずかしいものですね」


 学園の食堂の横、パーティションで仕切られた貴族用のスペースです。


 生徒同士のお見合いは、ほとんどこの場所で行われます。


 相手は金髪の子爵令息です。


「僕は、同級生を恋愛対象としては見ていない」


 早速、子爵令息は毒を吐きます。


 はい、知っています、伯爵令息からの言いつけですよね。


「伯爵令息様のご紹介ですから、仕方ありませんけど、何か趣味とかのお話は無いのですか」


 話が、まるで盛り上がりません。


「僕は不満だ」


 今回もダメですね。でも、私の何が不満なのでしょうか? さっぱり分かりません。



「あ、すまん」

 第二王子が、貴族用スペースに入って来ました。


「入口の札が“空室”になっていたんだ、すまなかった」

 謝罪して、出ていこうとしています。


「待って下さい、もう終わりましたから」

 私が引き止めます。


 これは、お見合いを切り上げる、絶好の機会です。

 心の中で、第二王子に感謝します。



 ◇



 数日後、朝の教室です。


「可愛い~」


 私の従者として、見習いの女の子を紹介しました。


 クラスメイトから可愛いと言われ、すぐに人気者になりました。



 そこに、お見合いをした子爵令息が割り込んできました。


「フラン、君との婚約は破棄する」


 しかも大きな声での宣言です。



 同級生の視線が、一斉に私たちへ向きましたよ。


「またお見合いしただけですから、皆さん気にしないで下さい」


 私は、半笑いです。


「なぜか理由をお聞かせ願えますか」



「僕は、年増とは婚約しない」


 は? 年増? 私たちは同級生ですよ、それが年増なんですか。


 教室中の令嬢が、私に視線で合図してきます。


「ど、どのような令嬢をお望みでしたか」


 まさかと思いますが、皆さんからの命令なので、一応、訊ねてみました。


「妹のような女の子がいいんだ」


 うわ、教室中の令嬢が、ロリコン子爵令息を睨んでいます。


 あら? ロリコンの令息が、私の従者見習いの女の子を見つけました。


 いやらしい視線です。これはマズイです。


「婚約破棄ですね、承りました、私、用事があったんです、失礼します」


 私は、急いで、従者見習いのジジを教室から逃がします。



 ◇



 お昼休み、ジジを従者の控室に戻し、一人でお弁当を頂くため、中庭の、いつものベンチへと向かいました。


「あら、大変」


 中庭で、ロリコンの令息が、中等部の女子に、壁ドンしているのが見えます。



 ちょうど、第二王子が通りかかりました。


「第二王子様、助けて下さい」とお願いします。


 第二王子と並んで、あの栗毛の美人、セレーナ嬢がいます。


 セレーナ嬢が左腕に着けている金の腕輪ですが、宝石が増えています。男爵家は景気が良いようです。



「あいつは俺に任せて」


 第二王子が、ロリコンの令息を連行していきます。


 多くの令嬢に声をかける第二王子ですが、ロリコンではないようです。


 と言うか、"同世代の栗色の髪の女性だけ”にしか興味がないのではと、最近思っています。



「フラン様、ありがとうございました」


 中等部の女子からお礼を言われました。

 礼儀正しい小さい令嬢です。


 なぜ、この女子は、私の名前を憶えているのでしょう?


 私は、中等部で名前が知られるような事はしていませんけど。


 容姿が段違いに可愛い女子です、これは狙われますね。


「フランお姉さまと、呼ばせて下さい」

 手を握られました。


 あれ? この感触は、光魔法ですね。

 彼女には、聖女の素質があります。


「私は、辺境伯の孫娘で、ティファニーと申します」


 アッと驚く伯爵家の中でも上級である辺境伯の孫娘でした。


 子爵令息はそれを知らなかったようですね、これはマズイ相手に迫ったものです。



 一代男爵の私よりも、数段上の令嬢ですが、

 でも、この子は、たぶん聖女になれます。


「辺境伯令嬢様、どうか私をご友人に加えて頂けませんか」


「私のことはティファニーと呼んでください、フランお姉さま」


 青空に白い雲が浮かんでいます。


 私には家族がいませんが、この子が妹になる、そんな予感がしました。



 ◇



「ロリコン子爵令息が退学になったそうよ」

 教室の中では、噂話で盛り上がっています。


「女児への暴行の罪で、第二王子様が告発したそうよ」


 あの件ですね、結果として、未遂でしたけど、重罰にすべきです。


「バツとして辺境の騎士団に送られるようです」


 掲示板には書いていない情報まで、どこから仕入れたのでしょうか。


 辺境ですか、それは、追放よりもキツそうですね。


 あの中等部の女子のお爺様こと、鬼の辺境伯が治める領地に、、、これは、とてもキツイ未来が待っていますね。


 今日も、透き通るような青空です。



 そういえば、私は男爵になったけど、領地は無いのでした。


 領地からの税収が無いということは、これからも貧乏のままですよね。




(次回予告)

 ティファニーと知り合ったフラン。次回は第一王子と領地視察に出ます。

 そこでフランは、秘密の力を、、、



あとがき

 読んでいただきありがとうございました。

 18話で完結しますが、現状を、星などで評価していただけると嬉しいです。

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