2.男爵になる(2年生2学期)
2-1話 巨乳好き令息 セレーナ嬢登場
「パーティーで着用するドレスは、私には無いです」
さっきの授業での、教師の説明にドレスコードの話がありました。
学園で、夏休み明けのパーティーを開催するそうです。
平民は制服での参加が認められていますが、私はレディの称号を得たため、ドレス着用という面倒なドレスコードに縛られます。
夏休み中のレディ研修で、平民の見本となるよう行動するように、と教わりました。
「フランなら、神殿で支援者からドレスをもらえるでしょ?」
同級生の令嬢が不思議がっています。
「ドレス生地を贈りたいとの申し入れはありますが、全て断っています」
女神さまへの供物を、聖女見習いが使うわけにはいきません。
「私はいつものドレスね」
男爵令嬢であっても、貴族の中では貧乏なので、同じドレスを使いまわします。
「手直しするなら手伝いますよ」
私は、裁縫も得意です。
「いや、フランの腕は確かだけど、センスがアレなので、従者に頼みます」
従者を雇えるだけでも、男爵令嬢は平民の私よりは裕福です。
てか、私のセンスがアレって、どういう事ですか。
「まぁ、私は、制服でいいかな。誰も気が付かないでしょ」
独り言です。
「俺は気が付くぜ」
突然、隣の席の第二王子がつぶやきます。
夏休みが終わり、新学期の席替えで、第二王子が私の横の席に来ました。
平民を差別していないことを、目に見える形にするという、学園側の都合です。
最初は、多くの令嬢から嫉妬の目を向けられました。
彼は、憧れの第一王子の実の弟ですが、私のタイプではありませんので、どうでもいいです。
今は、仲の悪い二人だと思われています。
そんな関係ではないのに。
◇
「平民学生寮のお弁当のサンドイッチも、値段を考えれば十分美味しいですね」
中庭で昼食中です。
「黒い雲」
青空なのに、黒い雲が一つボッカリと浮いています。
「おひとり? フラン」
通りかかった同級生の美人令嬢、セレーナ嬢から声をかけられます。
「セレーナ様」
彼女は男爵ですが、私は、彼女から名前を呼ぶ許可をもらっています。
第二王子と仲が良いと噂の、栗色の髪の令嬢で、学園でピカイチの美人です。
噂では、孤児だった所を、男爵から養女として拾われた令嬢だと言われていますが、たぶん美人に対する周りのネタミですね。
「貴女はレディ称号を得たのでしょ。パーティーのドレスは決まりましたか?」
この話題はキツイです。
「私は、ドレスを持っていませんので、制服で参加するつもりです」
「まぁ、それなら私の着なくなったドレスを贈りましょう」
美人が着た高級ドレスなんて、市場に出したら相当高額な値段になると聞いています。
「それは助かります、ありがとうございます」
もちろん、売りませんけど。
◇
「フラン、お前との婚約を破棄を宣言する」
パーティ会場です。楽しいはずの場なのに、先日、お見合いした男爵令息から婚約破棄されました。
「お見合いしただけですが、なぜ婚約破棄なのですか」
婚約ではなく、お見合いだとはっきりさせます。
「何が不足だというのですか?」
「お前は胸が小さい」
驚きです、原因は、私が巨乳じゃ無いから…ですか。
「高等部2年生ともなれば、メロンのような胸だろ」
いやいや、そんなわけ無いですから。
「あの男爵令息、許さない」
会場の令嬢たちに殺気が生まれました。
令嬢たちが、彼に詰め寄って来ます。
「男爵令息様、それはセクハラですよ!」
「胸がどうかしましたか?」
そうです、胸の大きさと令嬢の魅力は別物です。
「令嬢の品格は、胸じゃありませんよ」
なぜか、巨乳の同級生も加わっています。
「皆様、この令息は、第二王子様と私とで、説教しますので、パーティーを楽しんで下さい」
美人のセレーナ嬢が、混乱を治めに来ました。
彼女は、胸が大きいです。
第二王子の名前が出されたので、集まった令嬢たちは解散します。
「フラン、そのドレスは、ずいぶんと質素なデザインですが、どうしたのです?」
巨乳の男爵令嬢から言われます。
彼女は、栗色の髪で、女性の私がホレボレするほどの巨乳です。
「セレーナ様から頂いたドレスを、自分で手直ししたものです」
私の胸とサイズが合わないので、自分で小さく手直ししました。
「フラン、そのドレスが原因よ」
巨乳の同級生からアドバイスがありましたが、どうゆう事でしょうか?
「みんな、胸パットを入れるか、フリルで盛ってるのよ」
そうなのですか?
「知りませんでした、教えて頂き感謝いたします」
「フランは、成績はトップなのに、令嬢としての一般常識が欠けているのよね」
返す言葉がありません。
「ちょっと私の巨乳を触ってみなさい」
巨乳令嬢の手が、私の手を掴んで、彼女の胸に、、、
「あれ、硬い?」
「コルセットの胸の部分に鉄板を入れているのよ、これは、内緒よ」
「この胸で、王族を落として見せるわ」
私には無いバイタリティーに、唖然とします。
「私も、寄せて上げれば……」
あ、意外といけます。
私に不足しているもの、それは女子力でした。
(次回予告)
胸パットを知ったフラン。次回は、爵位の申請結果がでます。
一代男爵になれたのか? 第一王子に近づけたのか?
従者見習いの可愛い女の子“ジジ”が登場します。
あとがき
読んでいただきありがとうございました。
18話で完結しますが、現状を、星などで評価していただけると嬉しいです。
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