第5話 新しい世界

私は、彼に導かれるままいろいろな風景を見た。

楽しそうに説明する彼は、生き生きとしていた。

「ここは、人魚が歌う湖。人魚の歌には過去を思い出す力と、元気になる力、治癒の力があると言われてるんだ。でも、この数百年誰も見たことがない」

小さくて、深いエメラルドグリーンの湖。

奥まで見えそうなのに、人魚らしきものは見えない。

「じゃぁ、下に急降下するよ!!」

一気に下に落ちていく。

ちょっと待って。

私、息できない。

どぶん!!!

大きな音ともに風の音がやむ。

『ここに人魚がいたんだ』

彼は口を開いたまま話す。

不思議と私も呼吸ができていた。

《あら、可愛い女の子だわ》

頭の中に響く言葉。

奥底から、きれいな金髪の人魚がでてきた。

「!!」

私の長い鮮やかな黄色っぽい赤を触る人魚は彫刻のように美しい。

《きれいな髪ね。でも、傷んでる》

人魚が触れる場所から少しずつ、髪がきれいになっていく。

《あら、怪我がたくさん。今、治してあげる》

そういうと他にも人魚がでてきた。

私たちを囲むように舞いながら歌う。

体中の痛みが消えていく。

足の傷跡もない。

《さぁ、可愛い娘かわいいこ私たちと一緒に歌いましょ》

人魚の1人に手をとられ、私は自然と歌を歌っていた。

心がぽかぽかする。

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