第3話 私は

私に与えられてる部屋である屋根裏に行く。

薄暗い廊下の突き当りにある階段を上れば、そこはベットと机と棚しかない広い屋根裏部屋。

机の前に少し小さい窓がある。

ここからは、裏庭の緑がたくさん見える。

綺麗な花畑。

私は、机の上にのってそっと窓を開ける。

涼しい風が入ってくる。

花の匂いと草や土の匂い。

私は、この自然の匂いが、、、多分好き。

それ以外は何もわからない。

私には名前なんてない。

呼ばれたことがないから、きっと誰も考えてくれなかったのだろう。

私の”親”なんて知らない。

私には”家族”なんてものはいない。

窓枠をしっかりと掴み、体を宙に投げ出す。

あとは、風の軌道をよみ上にあがっていく。

木の間をすり抜けて。

誰も知らない、大きな桜の木の花畑に行く。

靴がなくてもここの地面は柔らかくて。

しっかりと歩いてるのがわかるから。

ここに来るのに靴はいらない。

走って、走って。

大きな木のくぼみに身を寄せる。

「昔、昔」

私は、いつもここで思い浮かんだ言葉を並べて遊ぶ。

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