第1話 私とあなた

大丈夫、下を向いてれば何もおこらない。

私は、空気。透明人間。

何も感じない。聞こえない。

誰からも見えない。

そう、誰からも。

それなのに。

「ねぇ」

肩を叩かれうつむいたまま振り向く。

顔とかはみれないけれど、声からして男の人かな。

「……」

私は何も言わずに相手の言葉を待つ。

「どこかで、会ったことない?」

私は顔をちらりとみて前を歩く。

「え、ちょ!!」

ついてくる男の人がめんどくさくてうれしくて

私は、スピードをあげてどんどん進む。

息切れするけれど、気にしない。

もう、誰とも関わらないって決めた。

私は、全力で走る。

顔をまっすぐあげて。

足を大きく動かして。

「待って!!」

だけど、男の人の方が足が速くて。

あっという間に捕まった。

私は肩で息をしてるけど、相手は荒い息遣いとかではなく。

「何をそんなに、怖がってるの」

「……」

「どうして、俺の顔を見てくれないの」

「……」

私は何も答えない。答えちゃダメ。

顔を見せるのもダメ。

私とあなたは



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