第12話

部屋の至る所にかかっている時計の埃掃除をしながら、少年は少女に尋ねる」

「明日のお客様のご予定は?」

「4名様の予約が入っているわ」

「なんと。それは用意を急がないと。でないと、僕等も戻れなくなる」

「私達の仕事は、お客様の望む夢を見せること」


二人同時に呟く。

「それが、世界に戻る条件の一つ」


「お前らが人間に戻る……か?」

奥の部屋へ繋がる扉の向こうから光が声をかける。

黒色のタキシードに、緑のネクタイ。

胸ポケットからは緑色のハンカチーフが覗き込んでいる。

「おや、立ち聞きとは趣味が悪い」

聞かれていたのを知っていたかのような口ぶりだ。

「おや、当店の制服、お似合いではないですか」

部屋へ入っていきながら、双子を睨みつける。

「君らは謎が多すぎる」

「これからここで過ごすうちにわかりますよ。僕らの、時屋のことが、よぉくね」


突然、ドアベルの音が鳴った。

来客者の合図だ。

「あら、お客様がいらっしゃったわ。光、お客様を頼むわよ」

光は扉の前に立ち、お客様をお迎えする。

「……いらっしゃいませ」

この方は、どんな『時』を望んでいるのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る