第11話
部屋の中心にある柱時計の下の四角い部分。
そこには、まるでテレビを見ているかのように夢の様子が写っている。
「君は満足か?」
少年は問う。
「あぁ、満足だ。夢を救うことができたからな」
青年は優しい笑みで答える。
「そう、それが貴方の望む過去だったのね」
少女は、興味なさげにお茶を嗜む。
青年は、静かに呟く。
「そして、俺が望む夢の未来だ」
少年が柱時計を横切ると、夢の映像が消え、ただの時計となった。
「君からは、二人分のお代を頂かないとね」
「夢様の分は『記憶』。貴方との大事な思い出。そして、貴方自身の存在の記憶を」
「君の分は……そうだね」
少年は少し考えつつも、何かを思いついたように手を叩いた。
「ここで働いてもらうとしよう」
「今、人手が足りないの」
対価というから構えていたら、労働と聞いて拍子抜けをした。
夢が死ななくなった分、自分が死ぬのだと思い込んでいたのだ。
「俺の命を奪ないのかい?」
そう尋ねると、少年は少し驚いたような顔になった後、すぐに笑った。
「君はすでに生きちゃいないさ」
「今を進む『時』の中では、貴方は生きてはいない。存在した形跡もない」
「それが、時屋」
二人同時に寂しそうな、でもどこか懐かしむような顔をし、答える。
その表情に、疑念を抱いた。
「もしかして、君ら二人も……」
同じような理由で仕事をしているのか尋ねようとしたら、言葉を遮られた。
「それは内緒」
「それを聞くのはまだ早い」
二人の目を見て、これは、何度聞いても答えてはくれなそうなことは容易に判断できた。
「……わかった、受け入れよう」
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