第10話

目を開けると、真っ白な空間……ではなく、真っ白な天井。

見覚えがある、何年もずっと見てきた光景だ。

天井に手を伸ばそうと、体を動かした瞬間、周りを囲っていたカーテンが突然開く。

そこには、見慣れた顔があった。

「……!!夢!よかった……よかったなぁ……!!」

兄の海だ。

私が伸ばそうと布団から出した手を握り締め、地面に膝をついた。

「あれ……海兄ちゃん……?」

顔をゆっくりと声の主の方に向ける。

「手術成功したのに、数か月意識が戻らなくて心配したんだからな……」

手術……?

あぁ、そうか、思い出した。

成功率30%の手術で、成功率のほうが低いと知り、嫌だ受けたくないと泣き喚いていたのだ。

「私……治ったの……?」

「そうだぞ。これからは何だって好きなことできるからな!一緒に学校に行こうな!……一緒に泳ぎに行こうな。一緒に……ハイキングに行こうな!」

「ハイ……キング……?」

突然、目から涙が溢れてきた。

そうだ、あんなに行きたがっていたじゃないか。

みんなと学校に。みんなと夏に泳ぎに。みんなと木々の周りを歩きに。

「あぁ!……夢、どうした?」

突然目から涙を流した私を見て、海が心配する。


そういえば、あれだけ嫌がっていた手術を受けるように説得してくれたのは誰だっただろうか。

海兄ちゃんでもない。あれは……

「ううん……なんだろう、何か大事な人を忘れてる気がして……」

誰だっただろう。誰かいた、そこに確かにいた。

常に横にいた。

私を支えてくれた、不安がる私を支えてくれていた、誰かが。

「誰、だったかなぁ……すごく、大事な人だった気がするんだけどな」


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