第4話

時計ばかりが並んでいる部屋。

全てアナログではるが、色も大きさもサイズも様々。

丸も四角もあれば、鳩時計や猫に模したものまである。

だが、一段と目立つのは部屋のど真ん中に立つ、大きな柱時計だ。

木製で出来た何十年、いや何百年も経ったような古時計。

その古時計の前に机を置き、双子は優雅に紅茶を嗜んでいる最中、それは訪れた。


「過去をください!」


バンッ!と勢いよく開けた扉の音と共に突然の来訪。

予定をしていないお客様。

いつもなら冷静沈着でいられる二人も少し慌てた様子で、少年は扉の前へ向かう。

「い、いらっしゃいませ!」

少女は、一度は驚いたものの、一瞥した後そのままティータイムを楽しむ。

「せっかちなお客様が来たみたいですね」

「俺は、小野田光!頼む!!過去を……くれ……!」

少年は、少女を見た。

少女もまた、少年を見た。

お互いに目を丸くしながら。

その後、少年は咳払いをし、ゆっくりと招待されていない客を見た。

「ここが何の店なのか、知ってやってきた方は、光様、貴方が初めてです」

「どうやら、願う気持ちが強かったみたいね」


光は、少年の肩を掴み懇願する。

「頼む……。頼むよ……!」

その姿を見て、少年はにこりと笑った。

「貴方の願いを叶えることは他愛もありません」

空になったティーカップを机に置き、少女は尋ねる。

「ですが、代金のことはご存じで?」

「あぁ……全部、全部知ってる……」

肩に置いた手に力を入れる。

「だから、早くしてくれ……!あいつが、あいつが死んじまうんだ……!」

少年は、肩に置いてあった手を払って肩をすくめる。

「やれやれ。せっかちな方だ」

少年少女は目を合わせ、口を合わせる。

「ここでは、『時』が止まっているというのに」


「まあ、仕方ないわね。光様、ドアの前に立って。貴方の思い描く『時』を考えて」

光は足早に扉の前に立ち、目を閉じて願う。

「幸せな『時』に、いってらっしゃい!」


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