第27話
「貴方のお力が必要なのは、モデルを打ち破る終局的誤差の探索。どちらかというと、モデルそのものというよりも、こちらの方が我々にとっては重要なんです」
「我々、とは?」つい、私は好奇心にそそられて話の腰を折ってしまった。
「申し訳ありませんが、こちらの事情は詳しくお話し出来ません。しかし、反社会的な集団ではない、という点だけは保証致します」
「そちらの事情は詮索しない、という点も依頼内容の範疇ということですね?」
「ええ、そのようにご認識頂けると助かります」
まあ良い。別にこちらだって、依頼主の機嫌を損ねる必要もない。金は受け取ったし、あとは仕事をするのみだ。
「一点、確認をさせて下さい」
「どうぞ」
「もしも、仮に数列を分析して、規則性を見出せなかったら、どうします?」
「仕事を途中で打ち切って頂いて結構です。言うまでもなく、その場合も、支払い済みの報酬は返還を求めません」
その点だけ確認を出来れば十分だ。
あとは、「仕事のデッドラインは?」
「そちらにお任せします。逆にどれくらいの期間が必要ですか?」
私は悩みつつも、一旦1ヶ月という回答をした。無論、期限内に仕事が終わらない可能性も示唆しつつ、逃げ道を作った。
その後も、完成物のイメージについての擦り合わせがしばらく続いた。
「では、1ヶ月後に。何かあれば、この携帯に電話して下さい」
そう言って、クゼは電話を打ち切った。
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