第160話 据え膳魔石は食うべし(三人称視点)

 コニーの作る魔石には、この世界における万物の魔素の源、虹の方様の力が込められている。


 といっても、丸い魔石には微々たるもので、一般的魔石の七倍の効力を持つ程度である。

 だが棒状の魔石はなかなかに特別であった。


 49倍の持続効力を持ち、体内に取り込んだ魔生物の知能向上、体内にある魔素の器の拡大と、それに伴って身体機能の各種向上をもたらす。

 おいそれと簡単に体内に取り込める代物ではない。

 そもそも不相応な生き物が口にした時点で、千の針で刺すような電撃的痛みが全身を襲い、吐き出したのち泡を吹いて気絶する。

 とはいえ殺傷能力はない。


 ポンポネットは、コニーの前に現れた三頭の羽馬たちの身体に取り付き、棒魔石も能力的にイケると判断して一本づつ与え。

 ロクムには様子を見つつ、追加でもう一本、さらには特製品をもう一本与えた。


 ——『これ以上はダメ。普通の羽馬は丸いのだけ。三ぴきは棒の食べても倒れないから、子分にちてやったの。運が良いの分かってる? むむぬぅコニーのために、ちっかり励めなの』——


 ポンポネットに聞かされたことを踏まえて、ロクムは丸魔石を、臣下へ投与することを決めた。

 もちろん、主人を万全な体制でお探しし安全にお迎えするためとはいえ、主人に断りもなく貴重な魔石を配る行為。

 叱責を免れないことは覚悟の上であった。



 『何やら良い匂いがする』


 当初よりここに集りし羽馬は、皆そう思ってはいたものの、視覚が羽馬王に釘付けであったゆえ、嗅覚がなおざりになっていたのだが。


 羽馬王の横にじっと立っていた人間のオスが、えもいわれぬ芳しい物を、その手に取り出した。


 羽馬たちは思う。


 あの人間の生み出したものとは到底思えぬ、神秘的な芳醇な香り。

 我らの理性を焼き切る作戦か? 


 いや否。

 客観的に考えても、我らが王は何者かの魔石によって、素晴らしい進化を遂げた。


 この美味そうな力の源を食わずして、翼の色うんぬんこだわることが、誇り高き羽馬として矜持を守ることといえるのだろうか? 

   

 いや否。

 それは進化を拒むこと。

 受け入れる勇気なきものこそ、羽馬の矜持を持たぬ、腰抜け羽馬。

 ただの馬と鹿にも劣る。


 静寂を破ったかのようにあちこちから、ブルッブルンッ、ブフーッと鼻を鳴らす音が徐々に上がる。


 羽馬たるもの未来へ飛ぶべし!!


 前搔きや、フレーメン反応匂いもっと嗅ぎたい、ヒヒーンと肯定のいななき持って、満場一致で、七色の翼の染まり変わりにつき受け入れを、こぞって羽馬たちが表明した。


 馬と羽馬の大きな違いは、翼の有無や魔動物であることに加え、馬よりは知能が高く、王が存在しうることであった。

 王は常にいるわけではなく、その地域で覇者と認められた場合のみ、王として立つことができる。


 統率力、身体能力、知性、優しさ、雌雄問わず惹きつけるカリスマ性、そして美しさ。

 美しさとは、美醜の面もそうだが、体内魔素の大きささがパッと見てわかる、身体に顕れた輝きを指す。

 空を駆ける羽馬の性質上、翼の煌めき具合が最も重要であるのだ。


 この羽馬聖岩には、王ロクム夫妻の他、大まかに三種の群れが存在していた。


 ロクムに忠誠を捧げた力あるオス四頭と、彼らをカシラとするそれぞれの群れハーレム


 一般的なオスがカシラの、平和な幾つかの小さな規模の群れ。


 元の群れから自分の意志で離脱した老若のメス、体に欠陥があるなどハーレムの群れ行動に着いていきづらいメスなどで構成されたメスのみの群れ。


 ロクムは忠臣四頭に魔石を与えた。

 他の岩の有力ハーレムのカシラを呼びいくように命じ、戻り次第一頭だけ拠点に残り、残りは羽馬湖上空の見回りを指示した。


 メス馬群れのリーダー、長老牝馬ひんばにも魔石を与え、頂の魔素水の泉の任を命じ、万が一のコニーとポンポネットの出現に備えた。


 七色のマーブル模様の翼で飛び立った四頭の使いに応じ、瞬く間に集まった別岩のカシラたち全てに魔石を与え終わると。


「お? 俺の尻をグイグイ押すってことは、上に乗れってわけか。もう残りのビーダ魔石はしまっていいんだな? ようやっとギャロ爺と合流か。

んあ? 違うのかよ。

おい、ポケットの魔石を……ま、まさか……違う岩に飛んで行くんってんじゃないだろうな?!」


 その通りだ、とほくそ笑むロクム。

 父、兄、二番手オス、今では自分のほうが優に格上であるが、呼びつけるのはいさかいの元。

 王自身で各々の拠点に乗り込んで、同様に彼らの配下に見せつけたほうが、制圧制定するのに早い。


 人間の笑う顔は、どうやら我々のフレーメン反応の顔に似てるので、返事はそうするのがよかろう、と。

 ロクムは上唇をめくるように歯を剥き出しにしてヒヒンと答えた。


「マジか……ロクム大先生、お手柔らかに頼みます」


 エタンセルは高所撹乱メガネを装着し、眉間に皺を寄せ溜め息を吐きながらも、素早く飛び乗った。


 いち早くコニーを見つけ、安全に出迎えたい。


 その思いがエタンセルの勇気に火を付け、恐怖の闇を祓う灯りとなるのであった。




 ******(三人称視点・終)




【次回予告第161話 各所へ連絡(クレール視点)】


𖤣𖥧𖥣𖡡𖥧𖤣

*132話でロクムだけ呼び石が生まれた答え。

通常は月一個で5年以上の魔石が必要なところ。コニーのヨコジ魔石は1個で49個分だったから。

12ヶ月×5年=60個以上必要

49×2本=96個相当←ロクムが食べたヨコジ魔石2本


*今の段階のエールで解説

クレールの1個

コニーの49個分(ヨコジ魔石1本)

・コニーがビーダ魔石(7個分)を追加で2個あげたら、エールの呼び石もコニーゲットできます。

49+14=63個分

・もしもクレールが今月中に59個あげても、呼び石生成は不可。

なぜなら幾つ食べても呼び石生成的には月1個カウントが固定だから。コニーの魔石だけが特別で、そういう性質なのです。ただし「いつも美味しい飴ちゃんくれる良い奴」的にとても懐いてくれるでしょう。


𓃗群れのリーダー𓃗

馬の社会では。ハーレムの種馬オスとは異なる存在、長老のメスが群れのリーダーを務めます。


𓃗フレーメン反応𓃗

上唇をめくり、歯や歯茎を見せるようにする独特の表情で、これは匂いをより詳しく分析するための生理現象。

写真近況ノートにその顔をしてるお馬の写真載せています。

(133話のあとがきで書いた木の頭絡ウングイも見れます)

https://kakuyomu.jp/users/ayaaki/news/822139839754337003

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