第10話 トイレとお風呂場ご案内

「前回のおヌ、ぅ……。

異界から来たかたの魔道具開発に、回路研究の分野で僕も関わることが多くてね。

折角だから自分の家でも実際に使ってみて、使用の改善点とか気付けたら良いなと思って。トイレやお風呂も最新のものにリフォームしてあるんだ。

地球仕様だけど国によって、随分異なったりもするって聞いてるから、一応一緒に見て、使い方の確認をしようか?」


 そう言って、トイレのドアを開けてくれた。


 ふぉ。広くて綺麗。

 なななぁんと、ウォシュレットだ!

 こんだけ近代的な建物において、「最新」というからにはぼっとん汲み取り式ではないな、と思ってたけど予想以上だ。


「ええ、これなら分かります。ボタンのイラストも私の見知ったものです。

例えば渦巻きの大小で流す水量が違ったり、これがウォシュレット機能、ビデ、で合ってます?」


「合ってるよ、じゃあ大丈夫だね。

でもコニー、言葉が丁寧語だよ。友達みたくしてくれるんでしょ?」

ひょこっとかしいで、私を覗き込んでニヤっとした。


 綺麗系成人男性のちょっと意地悪な笑顔も良いもんですな。


「はは、そだったね。クレールさんの悪戯いたずらっ子っぽい笑顔、なんか可愛い」


 からかいの返り討ちにあってちょっと驚いた表情のち、視線をパッと外した彼は、

「じゃあ次はお風呂だね!」


 トイレのドアを閉めて、私に背を向けいそいそと移動し、次のドアを開けた。


 立派な洗面台コーナー、お風呂の脱衣コーナ、洗濯籠に沢山の収納があるお部屋。

 綺麗でスッキリ。


 ドアが三つある。お風呂場以外のどこに繋がってるのかな?


「こっちがお風呂場だよ」


 わ~お!

 ここも広ーい。

 三人ぐらい入れそうな丸い湯船に、乳白色のお湯でグレープフルーツみたいな良い匂い。

 ちゃんと身体洗う場所もついてる。カラン&シャワーも二つある。


 しかも、こ、これは…。


「もしかしてサウナと水風呂ですか?」


「うん、そう。知ってるんだね。毎日じゃないけどときおりね。僕とエタンは好きなんだ、コニーも好き?」


「うん! 私も好き! お家にあるなんて凄いね!」


 またクレールさんちょっとだけほっぺ赤いよ。

 褒められて照れちゃったのかな?


 しかーし。開放的過ぎない?

 外に向けて一面、ガラス張りだよ。

 居間に続いてこっちもかい。

 露天風呂感覚?

 外はテラスになっていて、中から出れるようにドア付いてるし。

 寝っ転がれるチェアーとかテーブルセットみたいなの置いてあるし。

 中庭? 芝生広場っぽくなってて向こうには四阿あずまやらしき物が見える。


 ガラスの向こうがただの鬱蒼とした森で、人は絶対に通らないんですよ~ならいざ知らず、他人がくつろげそうな空間が外に用意されてるって、落ち着いて裸で風呂に入れないよ。


 裸族らぞくなの?

 彼らのように美しくて自信が有ればなんともなくなるのか?

 顔は綺麗だけど身体は知らんが。

 きっと美しいに違いない。

 エタンさんのタンクトップ姿は鍛えられてカッコよかったような気がする。


「広々として豪華で素敵なお風呂だけど、でも丸見えな感じちょっと落ち着かないっていうか……」


「ああ、それならここと、このボタンを押すと……」


 壁や天井にある明かりが灯り、ガラスだと思ってた壁面が、真っ白い不透明なものにさっと一瞬で変わった。


「わっ! ええっ?!」


「クリア素材に魔道具回路を組み込むと、切り替えができるんだよ。お風呂場の設定は二通り。

周りの壁に合わせたこの白い壁風と、もう一回押すと曇りガラス風、もう一回押すと元の戻ってクリアに。

シャワーとかの使い方は水栓を上げるだけ。

こっちの操作盤本体で温度が変えられたり、このボタンで、ほら」


 ふおおお~

 ジャグジー機能が……ゴージャス極まりないっす。


「じゃあ僕は居間のほうで待ってるね。

脱いだ服は、脱衣所の籠に入れたままで。今日はさっきのエプロンと合わせて洗濯屋に出そうと思ってるから。

お風呂から上がった時用の着替えは、なんか見繕って湯上がりタオルと一緒に入れて用意しておくね。

上がった時タオルが取りやすいように足拭きのところに籠ごと置くようにしよっか。

えっと……もしも新品や女性ものの手配がすぐに出来なかったら、僕の服とかで我慢してくれる?」


滅相めっそうもないことでございます!」


「ぷっ。なにその言い方、あははは」


「ありがた過ぎてかしこまりまくっちゃったじゃないのぉ。こんなにお世話になって、貸してくれるだけでなんだって感謝だよ!

お言葉に甘えてお借りします。それにクレールさんの服なんだか良い匂いだし」


 そういえばお風呂の香りと一緒?


「え? 僕の匂い? いつの間に嗅いだの? 

もしかして離れてても僕からなんか匂ってるってこと?!」


「あ、おんぶしてくれて、背中に張り付いてた時です……。

それにくっついて意識的に嗅がないとしないレベルで、今嗅いだお風呂と同じ香りだと思う……」


 どさくさに紛れて美男子の匂いをクンクン嗅いでる変態と思われたらどうしよう……。


「そっか。はぁ~。香水とかつけてないから僕なんか匂ってる? ってちょっとビビっちゃった。

へえ~お風呂の香りか……よく気づいたね。最近気に入ってるグレープフルーツの入浴剤でね、残り湯で洗濯するから。濯ぎは真水なんだけど、香りが残ってるとは思ってなかった」


「私、鼻には自信があるので!」


 ドヤっちゃった。


「そ、そっか。お手柔らかにね……」


 そんな積極的に人の匂い嗅いだりしないよ〜。

 まぁビビる気持ちは分かる。

 生活臭嗅がれるの恥ずかしいもんだよね。

 もしもイケスカナイなんか変な匂い嗅いじゃっても、野暮は言わないから安心したまえ。


「はい」

 とりあえずニコニコしといた。


「シャンプーリンスは僕ら髪が長いからわりと良いもの使ってるんだよね。女の子でも悪くないと思うけど。

石鹸は一応新品を。はい。お風呂用の小さなタオルはこれどうぞ」


 何やら手慣れておりますな。


「クレールさん、何から何までお風呂手配してくれて、気が利き過ぎてびっくりしちゃった。細やかなお気遣いありがとうございます」


「ああうん。ここね、いろんな人が泊まりに来るんだ。初めての時は説明に始まりっていう流れで、案内には少し慣れてるんだよ。

エタンも湖仕事の時は、ほんとしょっちゅうウチに入り浸ってるよ。ヤツは置きタオルも置き服もあるから、僕のを貸したりはしないけど」


「仲良しさんなんですね~」


「うん、まあね。腐れ縁の大事な相棒さ。

長々と話してごめんね。じゃあごゆっくり」






【次回予告 第11話 使ってみよう】



𖤣𖥧𖥣𖡡𖥧𖤣

「異世界なのに豪華じゃん」

「そんなん入りたいわぁ」と思っていただければ幸いです。

次回コニーのお風呂使用はよくあるサービス回ではなく、ストーリー的にラストちょっと重要です。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る