第2話 電気製品の安全性の話①の2

~~~ 安全性が確保されているかどうかわからない電気製品の話 

    第1話 リチウムイオン電池編② ~~~


初回のコラムで言及したが、リチウムイオン電池と呼ばれる電池は、再充電できる

2次電池タイプのものであれ、そうで無い使いきりの1次電池タイプのものであれ、小型化が可能でありながら大容量化も可能であり、更に充電できる2次電池タイプものは何度も繰り返し利用出来て、ニッカド電池の様なメモリー効果による容量の目減りや、カドミウム類の様な汚染物質の含有に由来する土壌汚染など、廃棄時に環境汚染等に十分な配慮を要する様なリスクもさほど無い、夢の様な電池だ。


また、動作温度範囲はおおよそ-20℃~60℃位の範囲になる事が多いそうだが、これは、マンガン電池やアルカリ電池が0~45℃位、酸化銀電池で-10~60℃位、ニッケル水素電池が0℃~40℃位である事と比べて、かなり十分広い環境範囲、特に氷点下以下の低温下で実用的に使える事を示している。


良いことづくめのリチウム電池に見えるが、小型でありながら大容量の電気を貯める事ができるものだけに、そのメリットに由来する問題も抱えている。

その問題の一つが、小型のボディに大容量のエネルギーを内包している為に、自身に何か問題が発生した際にきちんと対応出来る様に設計・製造されたものでいないと、思わぬ大事故を起こす可能性があると言うものだ。


もう少し具体的に言うと、リチウムイオン電池系の製品の事故として近年問題になっているのが発火・火災の原因となっている事だ。

元々他の電池と比べると高いエネルギーを内蔵できるだけに、製品自体に問題が生じた時にそのエネルギーを瞬間的に放出して、爆発・燃焼することがあるのだ。


ぶっちゃけ、自身の放出するエネルギーで自身だけが燃えて済むのならさほど問題にはならないのだろうが、リチウム系電池の場合、内包するエネルギーが大きいだけに、エネルギー放出の影響が自身の内部に収まりきらない事が多く、自身の発した炎が周囲を巻き込むだけではなく、小火や火災事故の原因になりかねないのだ。


また、燃え方が『爆発的に燃焼する』傾向にあるのも問題で、この『爆発的』と言うのが、あまり比喩的な表現の意味だけに収まらず、燃焼で高温化した破片を自壊の影響で周囲をまき散らし、まき散らした先でも燃焼を続けるという、禄でもない状況を作り出す可能性があるのだ。


実際、すみとも商店と言う今は無い有限会社が販売したリチウム電池(所謂非純正互換電池と呼ばれるもので、この場合は某D社製コードレス掃除機用が主用途だったらしい)が製品事故を多発して、経済産業省を始めとしたリコール情報サイトで、充放電をしていない保管状態であっても発火のリスクがあるので、対象製品の所有者を対象に、製品の使用の中止の要請、廃棄をせずに安全な方法で保管するようにお願い、安全にこの電池を放電させる方法などの情報を公告している。


この事例は、かなり極端な例にではあるが、nite(通称ナイト/正式名称は独立行政法人製品評価技術基盤機構)という若干意味不明な長ったらしい正式名称を持つ公的団体がまとめた報告書(最新版が2022 年度事故情報解析報告書という形で2023年10月にweb上に公表されている)には、所謂、電池・バッテリー類(電池単品のみの事故ではなく、スマホやタブレットなどに内蔵されている電池が原因の発火なども含む)、自転車(メカ的な故障事故だけではなく、電動アシスト系の電池が原因の事故も含む)がそれなりの比率で含まれている事で事態の重大さが伺える。


実際、この報告書には、2022 年度にniteに届け出(重大な事故に関与した業者は、ここにその旨を報告をする義務があるらしい)のあった事故発生製品の情報が掲載されているのだが、統計を取っている 106種の製品群のうち、件数順に上位の 20 製品群で全体件数の約 63%を占め、上位 5製品群だけでも約 27%を占めているという数字が確認できる。


このうち、一時的に多くの事故報告を受けたため上位にランクされた電気調理器具や家具などの製品群(どうも業者が一軒づつ細かに報告するのではなく、ある程度まとめて報告するらしい)についてはともかく、バッテリー類、自転車、エアコンなどのは、昨年以前からの主要な事故原因として、引き続き報告の重大なファクターとなる製品群なのだそうだ。


niteでは、製品群ごとの事故リスクを比較するために、事故それぞれの危害の程度を 0~4 の 5 段階で数値化し、製品群ごとの合計値を危害スコアと定義した形での情報も公表している様で、この加工によって、事故発生件数が多く危害の程度が大きい、所謂リスクの高い製品事故を判断することが可能となるそうのだが、その結果として一時的に多くの情報を受け付けた製品よりも、エアコン、充電器、石油ストーブの事故リスクが高いことが分かりる。

特に上位 5 製品群で全体の危害スコアの約 30%程を占めており、これらの製品群の事故への対策を行うことで、効果的なリスク低減が期待されるそうだが、現実は…と言う状況の様だ


この中で、バッテリー類での事故原因を見てみると、危害スコアの高い事故のかなりの製品がリチウムイオンバッテリー(以下「LIB」という。)並びに同電池搭載製品の事故によるものだと言う事が分かる。

他の上位 20 製品群の中にも電動アシスト自転車やポータブルスピーカー、ハンディファンなど、それなりに電気を消費する製品に LIB が搭載されており、LIB 搭載製品と言う括りで纏めると、全危害リスクの高い製品の約 26%を占めている事が分かるそうで、LIB 搭載製品の事故への対策を行うことで、効果的なリスク低減が期待される事が分かって来るそうだ。


因みに、前出のnite(ナイト)では、リチウム電池を含む事故原因として有力な製品が何らかの原因で事故を起こした場合の再現実験を行い、その動画を公開しているので興味があれば一度、下記URLのサイトを見てもらいたい。

https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/index.html


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次回、【互換バッテリーの最低限押さえておきたいチェックポイントについて】です。

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