第3話 電気製品の安全性の話①の3

~~~ 安全性が確保されているかどうかわからない電気製品の話 

    第1話 リチウムイオン電池編③ ~~~

【互換バッテリー購入の際に最低限押さえておきたいチェックポイントについて1】


本来、この種の危険性が高いものは、特別な管理を追加するなり、極力市場に出回らない様に弾くなり、なんらかの規制を行う必要がある。

日本でこの種の規制を公的に行うのは、基本、経済産業省と呼ばれる役所の仕事で、実際にこの省の下で、製品安全4法と呼ばれる法律が施行されており、それなりの影響力を持って運用されている。


この中に有って、一般のユーザー(所謂パンピー)が使う様なリチウムイオン電池類については、その一部は電気用品安全法と言う法によって規制されているらしい。


ここで、かなり微妙な表現を使わせてもらった事にお気付きだろうか?

そう、このたった2行の文章に、…一般の…とか、その一部は…とか、…されているらしい等と言った表現を使って若干論調をぼかしているのだが、それにはちゃんとした理由がある。


この電気用品安全法は、昭和三十六年法律第二百三十四号と言う謎の番号が振られている法律で、法令としてかなり優先順位の高いもののはずで、目指すところは素晴らしいのだろうだが、それを達成するための状況が整えられていないと言うか…

ぶっちゃければ、罰則が温過ぎて、もうかりすれば良いんだ的な考え方をする奴らからすれば、破った者勝ちな感じになっているのだ。


一番問題なのは、たぶん、何か問題が出た時に、事実上、売り手(流通事業者)に罰が課されるリスクが無い事ではないだろうか。

現在、日本で売られているこの種の電気製品(法律上は電気用品と言うそうだ。)には、国内で製品を販売している製造業者、国内に製品を持ち込む輸入業者には規制がある。

要は、法の組み立ての関係で、国内を流通する電気製品を国内製品と海外製品と考えて、国内は、作り手段階で規制して、海外は持ち込む段階で規制する事で、国内を流通する製品を規制できると考えた訳だ。


ぶっちゃけると、一時代前までならそれで問題なかった。

上記の様な流通形態を除くと、残りは個人輸入位しか考えられなかったし、そうであれば、それは個人個人の責任で行われる事で、通関手続きやらなんやらも結構めんどくさかった事もあって、その数は極めて少なく問題にならなかったからだ。


ところが、昨今の状況はネット通販の形態の中に、プラットフォームのみを用意して、その中に場所を借りた事業者がそれぞれ物を売る、と言う形が出来上がってきた。

これまで、業者間取引で自社製品を細々と商ってきた小規模業者が、大手通販会社が用意した場所を借りて消費者と直接取引できる様になり、消費者は個人の責任でそれを購入できる様になったのだ。


この場合だと、大手プラットフォーマーは、あくまで物の見本を置く場を貸しているだけの立場で、法的な責任が一切ない。

販売業者は、個人取引で物を個人に売っているだけで、商品も販売時点で日本の国内になければ、法の適用を受けることはない。

と言う状況がありうるのだ。

問題は、物を買う消費者がその事をほとんど知らない、と言う事だろう。

消費者側は、大手プラットフォーマーが用意した場で物を買って、それが暫くして届くのを待てば、安価に欲しいものが手に入る。


これで、物が安全なものならば、三方良しの近江商人の逸話の様な感じになれるわけだが…、ところが問屋がそうは下ろさない。


・大手プラットフォーマーは、場を提供しているだけなので、責任を一切負わない。

(実際に裁判で、プラットフォーマーに責任は無いと言う判例が出ているそうです。現在実例調査中。)

・販売業者は、ネットを経由した個人輸入ベースの取引なので、買い手の国(少なくとも日本)が行っている規制に対応する必要はなく、その為のコストをカットできるので、儲けが増えてウハウハなわけだ。

・買い手は、有名なプラットフォーマーの所で売っている製品だからと安心して買う訳だが、実はその製品が大丈夫なものなのかのどうかの確認すら行われていない可能性がある事を知らないので、ものを安く買えたと喜んでいる。

と言う状況が出来上がっているわけだ。


問題は、販売業者が、ちゃんと安全な製品を売っているかどうか、と言う事になる。


ここで個人的な意見を言わせてもらえば、別に日本の法律通りに製品を作らなくても、安全な製品を作る事はできるので、そこまで日本の法にこだわる必要な無いと思っている。

ただし、それは安全に配慮して製品を作らなくても良い、と言う事ではない。


あくまでも、きちんと安全性に配慮して製品を作っているなら、日本の規制にこだわる必要性をさほど感じない、と言う事だ。

実際の話、製品の安全規制と意う話になると、日本の規制は、世界的に見て、ゆるい方だと言って良い位だろう。


そこで、安全な電気製品を見分けるコツ、今回の本題である、《互換バッテリー購入の際に最低限押さえておきたいチェックポイント》の話になってくる。

(前置き長くてゴメンなさい。m(_ ^_)m)


先ず、覚えておいて欲しいのが、電気用品安全法の法定表示だ。

https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/

を見てほしい。


これは日本の経済産業省の中の電気用品安全法に関するページだ。

このページの上方に『電気用品安全法』と書かれていると思うが、その左側にひし形の中に『PS』・『E』、丸の中に『PS』・『E』と書かれているマークがあると思うが、ここれが、電気用品安全法の法定マークだ。

通称、ひし形PSE、まるPSE、と呼ばれている。


ひし形PSE(海外ではダイアモンドPSEとも呼ばれているそうだ)は、特定電気用品と呼ばれる、比較的安全性に配慮が必要な製品群に使われているマークで、このマークが製品に貼られているという事は、少なくとも、その製品に類似した製品が審査機関の審査を受け、問題無い事の確認を受けていると言う意味になる。


まるPSE(海外ではサークルPSEと呼ばれていると聞いた事がある)は、電気用品安全法の規制の対象内で、ひし形PSEに指定された製品群以外の製品群に使われているマークで、このマークが製品に貼られているという事は、本来、その製品について、自社で安全性を確認していますよ、と言う意味になるはずなのだが、あくまでも自己宣言なので、どれだけきちんとやっているかは、業者次第という事になる。


それと、大切な事なので、あえて書かせてもらうが、ひし形PSEではないからと言って、危険性が低い、安全性への配慮が不要な製品が指定されている訳では無い、と言う事を覚えておいてほしい。

現在、電気用品安全法は、ひし形PSE製品を116品目、まるPSE製品を341品目のカテゴリーに分類して規制しているが、この規制から漏れている製品も少なくなく、まるPSE製品の中にも、安全性に十分に配慮しなければ不味いものも少なくないのだ。


実際、今回のこのコラムを書く気になった原因のリチウム電池類も、まるPSE製品にカテゴライズされているし、キッチン火事の原因の一つとして近年注目を浴びているIHクッキングヒーターなども、まるPSE製品だ。


この辺は、これらの製品の振り分けを行った時の社会情勢や製品の運用状況なども関係していて、今がどうだからその時の判断が間違っていたとは一概に言えない問題になってくる。

覚えておいて欲しいのは、まるPSE製品や規制の対象外になっている製品にもヤバい物が結構ある、と言う事だ。


そして、その中に、今回のお題のリチウム電池が含まれている、と言う事だろう。


ここでもう一度、すみとも商店のリコール関連ページに戻ってみたいと思う。

https://www.meti.go.jp/press/2021/12/20211217005/20211217005.html

をご覧いただいたい。

このページは、すみとも商店(現時点で倒産して姿形も残っていません。)が販売した互換電池がヤバいやつで、放っておいても燃えるかもしれないから放電させてね、と言う旨の告知の為のページだ。


ページの下の方に実際の電池の写真と銘版(表示部)のクローズアップ画像が掲載されている。

注目してほしいのは、銘版(表示部)の方で、その中に共通して表示されている3つのマークがあるのにお気付きだろう。

その内の一つは、リチウム製品であることを示すリサイクルマークで今回の話には関係ないので除外するとして、問題は残りの2つのマークだ。


片方は、先ほどから話に出てくるまるPSEマークで、もう片方は、CとEをデザイン化した様なマークで、CEマークと言い、商品がすべてのEU(欧州連合)加盟国の基準を満たすものに付けられる基準適合マークなのだ。これを表示することをCEマーキングと言う。


問題は、このマークは、ちゃんと安全性の確認をしているか否かを置いておいて、どちらも自己宣言で表示できるマークだという事だ。


通常、この種の宣言をするには、その製品がちゃんと作られている事の確認を行って、その証拠を残しておく。これをエビデンスと言うのだそうだが、自分の所でやったのであればやったなりの証拠の様なものを残すのだ。


自社のその能力が無い、もしくは、低い場合、他社にお願いして検査をしてもらいその結果をエビデンスとする事が多いようです。

日本の場合だと、最も有名な検査機関(第三者検査機関と呼ぶことが多いです。)は、JET(電気安全環境研究所)でしょうか?

その他にも、得意分野の多少がありますが、沢山の検査機関があります。

日本の電気用品安全法関連の検査ができる第三者検査機関は下記URLで確認できます。

https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/cab_list.html


ここで、話を少し戻しますが、これまでの説明で、まるPSEマークとCEマークだけでは、安全性の確認を行った事のエビデンスとしては、信頼度がかなり弱い事がわかったと思います。


要は、この2つの表示だけでは、ちゃんと安全性の確認をしているのか否かの確認が、部外者には出来ない訳です。


そこで、下記URLを確認してください。

https://item.rakuten.co.jp/2cube02/pn1ergc72k7658/?iasid=07rpp_10095___ev-lxww3hyk-5r-54df9e18-de0e-4282-8eb0-61a6f6274268

これは、パナソニックのACアダプタの写真ですが、製品の右側に色々な情報が書いてあります。

この中で特に重要なのが下側にある

ひし形PSEの表示と

丸にデザイン化されたSのマーク

とその下のJETの文字、

更にその下に、パナソニック株式会社

とあって、最下段にMade in Chinaの表示です。


ここに記載された情報を読み解く事ができれば、

この製品は、

・ひし形PSEとJETの表示から、電気用品安全法の特定電気用品にカテゴライズされる製品で、電気用品安全法の特定電気用品としての妥当性の検査をJETが行った事を示しています。

また、丸にデザイン化されたSのマークとJETの表示から、Sマークと呼ばれる電気製品の安全性確認に関するサービスの認証を受けている製品であることがわかります。

更に、パナソニック株式会社とMade in Chinaの表示から、中国製で、パナソニック株式会社が輸入していて、この製品に関する責任を負っている事を示しています。

その他に、この製品の性能に関する記述もあり、ここからも記述の妥当性の確認ができますが、その為には規制の詳細な内容や基準の詳細な知識が必要になるので、説明は割愛させてもらいます。


以上のことから、この製品は、適切な手続きを経て安全性の確認を適正に行っているものだと判断できるわけです。


すいません。1回では説明しきれなかったので、次回に続きス。













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