第9話:永遠に。

翔太郎は蘇生したあと猛勉強して、そこから自分になぜ天使が見えるかと

言う不思議な現象について研究を始めます。


そして霊界を始めオカルトや宗教まで、研究してその分野の専門家になって

いきます。

《まるで荒俣宏さんみたいです》

そのことが結果、過去の翔太郎の人生にも関わって来ることになるのです。


さて、ここで過去において肉体から離れてしまった翔太郎の魂を蘇生させるために

奔走したアリエラですが・・聖杯と聖水のアイデアをアリエラにアドバイスした

人物はいったい、どこの誰だったのか?

アリエラはどこへ、誰に、その方法を聞きに行ったのでしょう。


これは物語の中では謎の部分になっていますが、アリエラは翔太郎を救うために

遠い未来へとタイムスリップしたことは確かです。


いったい、誰に会いに行ったんでしょうかね。


過去において未来にタイムスリップした天使がいたと言う伝承があります。

それは守護天使が未来の書物を携えて現れる サミュエル・マッデンの

「20世紀回想」と言う書物です。


英文学において「最初のタイム・トラベラーは、1998年から1728年に 国家文書を

持ち帰った守護天使である」と述べています。


ただし、本書では天使がそれらの文書を入手した手段は明らかにされていません。

でも、当時から守護天使は時間を行き来できたようですね。


アリエラもこれと同じで時間を飛び越えたわけです。



さて、アリエラが未来から翔太郎の元にもどって、翔太郎の魂が蘇生してから

出戻り守護天使となってから、すでに30年あまり年月が過ぎ去っていました。


翔太郎は独り身のまま50才になっていて、今は一戸建ての古ぼけた洋館に

アリエラとふたり仲良く暮らしています。


人間の女性と結ばれないままと言う意味において、少なくとも翔太郎は50才現在までは、アリエラの愛情と献身のおかげでなにごともなく無事に生きて来たようです。


アリエラも守護天使としての役目をちゃんと果たしています。


そして翔太郎は相変わらず非科学的なことを研究しているわけで、

その分野においては、すでに第一人者になっており、また何冊かの

専門書も出しており、贅沢ではないが、充分な暮らしを得ていたのです。


ミステリーやオカルトを取り上げた番組にも出演したりして世間的にもそこそこ

知られた顔にもなっていました。


ある日、翔太郎は自分のアトリエ?とも呼べない雑多な本たちに囲まれた、

カビ臭い部屋で、いつもの研究に没頭していた時でした。


翔太郎は自分の後ろに誰かの気配を感じてゆっくり振り向きました。


「なんだ・・・アリエラか?」


この屋敷には翔太郎とアリエラしかいない。

でも翔太郎は、そこに立ってるのが今のアリエラじゃないことにすぐに気が

ついたのです。

パールピンクのままのアリエラ・・それに背中に生えた小さな羽根が見えたから

でした。

今のアリエラには羽根はありません。


アリエラは翔太郎と結ばれた時、背中の羽根がなくなったからです。


「おや・・・君はいつの時代のアリエラなのかな?」

「どうした?アリエラ・・・」


そのアリエラは30年前から、時を超えて翔太郎に会いに来たと言ったのです。


「翔太郎、あなたを救うため未来のあなたに会いにやってきました・・・」


自分を救うために過去から来たと言う。

アリエラは翔太郎の未来のすべてを把握してるわけではないが、未来において

翔太郎が霊界やオカルトなどの分野を翔太郎が研究していることを知っていた

のです。


アリエラに事情を聞くと、過去にいる翔太郎は事故に遭って魂が冥界の入り口で

彷徨ってると言う・・・。


まだ死んではいない状態で、魂が冥界へ行ってしまわないうちになんとか、人間界に

戻したいと言うことでした。


でも方法が分からないから未来の翔太郎に聞きに来たと・・・。

そこで翔太郎はアリエラにアドバイスします。


「アリエラが天国へ戻って聖杯の中に聖水を汲んで飲ませれば 魂は元に

戻るかもしれない」


とアリエラに提案したのです。

確証はないけれど、試してみる価値はあると・・・。


それだけ聞いて


「ありがと、未来の翔太郎」


そう言って、アリエラは去って行きました。


過去のアリエラが去った後、しばらくして今のアリエラがやって来ました。

翔太郎から今しがた起きた出来事を聞かされたアリエラは


「覚えてるよ、過去からあなたに会いに来たこと・・・」


「君は僕を救うための未来の僕に会いに来てたんだね」

「長い間、分からなかった疑問が解けたよ・・・」


そこにいたアリエラは過去から来たアリエラとちっとも変わっていなかった。


翔太郎は歳をとったが、今のアリエラはちっとも変わっていない。

守護天使も歳を取るが、人間ほど速く歳を取らないからいつまでも変わらないままのアリエラがいた。


「僕が今日まで生きてるってことは、僕の助言は正解で過去の僕は君の

おかげで助かったってことだね」


「私・・・と言うか・・・翔太郎は自分の命を自分自身で救ったことに

なるね」


「アリエラがいたからだね」

「ま、特別気にするわけじゃないけど、これからの未来、僕はどうなるんだろう?」


「未来のことは知らない方がいいよ」

「未来を知らないからこれから先も希望を持って生きていけるんだよ」


「まあ、いいさ・・・僕が望むことは 君がずっとそばにいてくれること、

それ以外何も望むことはないんだ・・・」


「ただこれだけは私にも分かるの」

「翔太郎は、これからだってすばらしい人生を生きると思うよ」


「でも、いずれ僕は君より先に逝く時が来るからね」

「君は、ほとんど歳を取らないから、確実に僕のほうが先に逝く」

「そうなったら、ひとり残された君はどうなるの?」


「そうなったら私は役目を終えて天国に帰るだけ・・・」

「そして誰の守護天使にもならない」

「私が守るのは生涯ただひとり・・・翔太郎だけ」

「愛してるのは翔太郎だけ・・・」


「もし翔太郎が亡くなっても、翔太郎の魂は私と一緒に天国へ行くから、

それからもずっとふたり一緒だよ・・・永遠にね」


翔太郎は安堵したように小さく微笑んでアリエラを抱きしめた。


可愛い守護天使は小さな窓から差し込む日差しを浴びて、いつにも増して眩しく

輝いていた。

そしてもう翔太郎と出会った時のパールピンクの天使ではなくなっていた。


そこにいた天使はパールホワイトの髪にパールホワイトの衣装を身につけていて

地上に島流し的な形になっていたアリエラの罪もすでに解けていた。

だから守護天使としてもランクアップしてパールホワイトになったのだ。


きっとこれからも今と同じように翔太郎とアリエラの暮らしは穏やかで平和であって

そして、いつかふたりが天国へ旅立っても、この愛は永遠に続いていくだう・・・。


この物語は人と守護天使が結ばれた唯一の物語なのです。


おしまい。


読んでくださってありがとうございます、感謝です。m(_ _)m

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