第8話:出戻り天使。

アリエラは翔太郎の命を守れなかったため天国へ帰って行った。

翔太郎にはアリエラの代わりに新しい守護天使がつくらしい。


後任の天使が来ることはアリエラから聞いていた。


「私の後任が来ますから・・・翔太郎には新しい守護天使が ついてくれます

からね・・・」

「大丈夫ですから・・・心配いりませんから」

「私よりずっと可愛くて、気の利く天使だったらヤキモチ焼くかもしれません

けど・・・」


後任が来たとしても翔太郎にはアリエラしか考えられなかった。


なんのために守護天使が存在してるのか・・・

守護天使は神様が人間を守るためにつけた命綱だからだ。

どんな人間もおぎゃ〜と生まれた時から守護天使はつく。


自分の未来にある、障害を察知することなど人間にはできない。

唯一守護天使だけが、その人の未来を見て守護することができるのだ。

本来はそうなのだが・・・

アリエラは翔太郎を守りきれず死なせてしまうところだった。


未熟な守護天使にはそういうことも、たまにあるらしい。


アリエラがいなくなって、翔太郎の彼女に対する想いは、さらに強くなった。

彼女が忘れられない存在になっていた。


たまたま、翔太郎に天使が見える能力があったために・・・

アリエラを愛してしまった。

アリエラが去った今、それは、不幸なことだったのかもかもしれない。


翔太郎は寝ても冷めてもアリエラのことばかり・・・

彼女以外のことは考えられなかった。

元気がない翔太郎を見て両親は心配した。


翔太郎に選択権がないうちに新しい守護天使がすぐにつくだろう。


(どんな天使が来るんだろう・・・)


アリエラの時と同じように、新しい守護天使が見えたとしても翔太郎は

アリエラ以外は受け入れるつもりはなかった。


そして日曜日の朝が来た。

翔太郎は知らなかったが、この日、新しい守護天使が翔太郎につく予定に

なっていた。


その朝、誰かが自分を呼んでる気がして翔太郎は目を覚ました。

目をこすりながら、ぼんやりと見えたのは知らない人?・・・

いや・・・知らない女・・・の子?


翔太郎は、確認するように目を開いて・・・びっくりして飛び起きた。

母親じゃないのは確かだった。

翔太郎が寝てるベッドのかたわらに・・・女の子がひとり座っていた。


新しい守護天使?・・・いや違った。


「アリエラ?」


「おはよう、翔太郎」


「なんで?、なんで君がいるの?」


「それがね・・・一度は天国に帰ったんですけど・・・」

「保護者と守護天使・・・つまり翔太郎と私ね」

「ふたりの、つながりが異様に強すぎて、切り離せないんだそうです」


「切り離したら翔太郎の命に関わるからって・・・」


「こんな例は、はじめてのことらしくて・・・」

「ほんとは今回のミスは許されないことだけど、結果、翔太郎が生きてるなら、

私がまた守護天使でいるほうがいいだろうって・・・」


「それで翔太郎のもとに帰えされました」


「それから聖杯と聖水を盗んだことも神様から罰を受けました」

「当分の間、天国に帰ることは許されないことになりました」

「つまり、地上に島流しです」


「出戻り天使で新鮮味はないでしょうけど・・・・これから、またよろしく

お願いしますね」


翔太郎は何も言わずアリエラを抱きしめた。


「そんなにきつく抱きしめたら苦しいです・・・」


「抱きしめてたいんだ、この感触をもう一度確かめてたい・・・」


「一生僕についてきてくれる?」


「Yes, I love you forever. SHOTARO」


「僕もだよ」


「あなたがこの世から去るまで、私はあなたを愛し守り続けます、

そしてあなたがこの世を去っても愛し続けますから・・・」


「嬉しいよ、アリエラ・・・」


「君を戻してくれた神様って気が効く人?・・・じゃなくて神様なんだね」


「そうですね、神様は一番、最良で素敵な選択をしたと思います」


「そう言えば、あの聖杯と聖水のことだけど・・・結局、誰に教えて

もらったの?・・・神様?」


「それは・・・」

「それは、そのうち遠い未来で分かる時がきます」

「かならず、遠い未来にね」


「教えてくれないんだ・・・」


アリエラは自分の口元にチャックをするようなジェスチャーをした。


「いろいろややこしいことになるので・・・・」


「あはは、それか・・・」


「じゃ〜いい・・・教えてくれないんなら、他のこと教えてもらうから・・・」

「たとえば、こう言うこととか・・・」


そう言って翔太郎はアリエラを引き寄せてキスした。


つづく。

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