第43話:学園への誘い

「……本題? 今ので終わりじゃないのか九曜様」

「えぇそうよ昴、今のは前座なの」


 えぇ、人の秘密を暴露しまくっておいてか?

 ――いや、彼女の事を考えればそれは分かるが、流石ヒトデナシといか人外というか……本当に苦手だ。

 父さん達……というより集められた皆も他に話題はないと思っていたようで普通に驚いているらしい。


「狩り人の子供……特に暦の一族は認められれば学園に通うでしょう?」

「そうですが、彼を学園に?」

「そうよ周、十六夜家は干支神の加護がないから余程の才がなければ入れなかったけれど、刃なら問題無いはずよね」

「睦月の馬鹿の許可はどうするんだ?」

「それならとったわ逢魔、先んじて刃の映像は見せたもの」


 俺を置いて話が勝手に進んでいく。学園とはつまり原作の舞台であり、強さや才能が認められれば入れる狩り人の育成機関の最高峰。

 もう今更なことは分かってるが頭に過る原作崩壊の文字。ここまで状況を変えているから何も言えないが……学園に通えるって事は色々知ってる俺からすると動けるので本当にありがたい。


「――――昴はいいかしら? 貴方の子供なのだし、聞いておくわ」

「正直言えば、反対したい。こいつには普通に人生を歩ませたかったからな。ぶっちゃければ遅いけど来年から普通の学校に通わせる気でいた――でも、刃は強くなったからほおって置けないのも分かる」

「ならどうするの?」

「――決めるのは俺じゃねえ刃だ。こいつの人生がある以上、刃に聞け」

「それもそうね。それで刃、貴方は学園に通うかしら? とっても楽しい場所よ」


 そりゃあ貴方にとってだよな?

 ……と思わず口から出そうになってしまったが、父さん以外には信仰されてる九曜相手にそんな事を言えるわけないので言葉を飲み込んだ。

 そしてその前にだ。

 今は通う流れなので言いづらかったのだが……俺が知ってるのは原作の高校からの学園で小学校の実態を知らない。だからこうも知ってる前提で話されると困る。

 あと、それに。


「通いますけど、映像見終わったなら龍華達を部屋に帰しませんか?」

「あ、忘れてたわごめんなさいね。九曜曼荼羅……土星・シャニの弓」


 俺の言葉で気がついたのか能力を使って戻される龍華と華蓮。

 何が起こったか分かってないようだが、戻ってきた事で安心しているようだ。

 見れば華蓮の手には絵本があったし、なんか書庫的な場所にでも送られたのだろうか?


「お帰り二人とも」

「……えぇ、皆で何を話してたのかしら?」

「えっと学園に通わないかって感じだな」

「そうなのね」

「二人は仲良いのね。今日はクラス分けについて話す予定だったから丁度良いわ」


 俺がいつもの調子で龍華と話していれば、そうやって会話に入ってくる九曜様。

 クラス分け話し合い? と思ったが、今のを聞いて大人達は何かを納得したような表情を浮かべてる。

 置いてかれてるから聞きたいが、聞けるような雰囲気でもないしで俺はちょっとしょぼくれていた。

 だって原作じゃ書かれなかったしぃ、とか思いながら大人達の言葉に耳を傾ける。


「刃に説明するのだけれど、今回集めた暦の六家の子供は珍しく同い年なの。それで学校の行事の観点から別々のクラスに分けたのだけど、貴方が入るとパワーバランスが崩れるでしょ?」


 あーそういえば高校の時も学園の行事でクラス対抗戦とかあったっけ?

 ……それを考えると一クラスに強い奴が固まるのは避けたいって訳か。で通わせる以上、俺をどこのクラスに置くかを話し合うと。


「なる……ほど?」

「えぇ、だから話し合いをって思ったんだけど――この様子だと無理そうね」


 え、どういう? 

 っとそう思って父さん以外の顔を見た――で、引いた。

 なんかさ皆めっちゃギラついてたのだ。あの逢魔さんでさえ何かすっごく目が怖くて、如月家の当主様とか昂ぶってるのか雷の霊力が可視化されてる。

 水無月家の人はなんか蛇が後ろに具現化してるし、何をこんなに競おうとしているのだろうか? あ、あと極月家の人はポージングしてて目に毒。

 初対面の多分皐月家の周さんはなんかずっと俺の方を見てるし、この会議で一切喋ってない葉月家の人は……あれ、なんか寝てない?


「あれぇー……あ、おはよーお話終わった?」

「やっぱり寝てたのね茉莉まつり、事前に映像見せておいて良かったわ」

「だってぇ、一度見たのを見る理由ないよねー。それより決めるのー?」

「ええ皆に戦って貰うのは被害が大きいから、ここはくじ引きで決めましょうね」


 あ、通うかの意志は聞かれるけど通いたいクラスは選べない感じか。

 ……うん、了解。えっと一応思い出しておくか、確かあるのは六クラスで、一クラス目には丑の干支神を祀る如月巴、二クラス目には龍華がいて、三クラス目には水無月家の雫。あとは四と五に会ってない皐月と葉月の子供が居て、六クラス目に極月亮がいる……と。

 今は九曜が籤を造ってるようだけど、ピリピリした空気が場を支配している。

 どうしてそこまで? と思ったが、それほどまでに対抗戦が大事なようなのでそこは理解出来た。


「……ねえ刃、学園に来るって事は一緒に通えるの?」

「多分?」

「そうなのね――お父様くじ引き負けたら泣くわ」

「え、あ……任せろ」


 あの、父親を脅すな?

 ……え、龍華も参戦するのかこの話に? たたでさえカオスなのに? つうか、今のオーラ怖すぎてビビったんだけど。

 確かにさ、関わりが深い龍華と通える方がいいから俺としては第弐クラスに行くのが理想。そうならなかった場合は普通に亮と同じクラスが良いな、あいつとは仲良いしたまに文通してる。

 如月の子は苦手じゃないけど、関わりも少ないし……皐月はナルシストだし、水無月の子にはなんか避けられてるし、葉月は寝てばっかりで話せそうにない。

 そうなると消去法で龍華がいる第弐クラスか亮が居る第禄クラスに入るのが願いになるのか?


「準備が出来たわ、さあ引いて頂戴?」


 ……そして暦の六家がくじを引いていく。

 取り出されたのは何の変哲のない紙……というよりお神籤だった。

 よく神社で見れるように折りたたまれていて、中身が分からない感じ。


「空けて良いわよ、大吉の人が当たりね」


 そして皆が一斉に封を開け、結果が出た。

 で、俺が決まったクラスは――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る