第47話 新しい友達

 入学式が終わると、生徒も保護者の人達も自分の教室に戻りました。担任の久坂寿美子先生は、席に着いた生徒と保護者に話し始めます。




「皆さん、今日の藤原校長の話を覚えていますか?皆さんは今日から中等部の生徒となりましたが、中等部の勉強と共に、古神道を学んでいくことになります。今日の校長先生のお話は、基本中の基本ですから、校長先生のお話を簡単にまとめ、それについて自分が今後心がけたいことを作文用紙3枚以上に纏めて月曜日に提出して下さい。3枚以内ではありませんよ。3枚以上です。では作文用紙を配りますので、前の人から順番に5枚ずつ取って、後ろに回してください。足りなくなったら、こちらまで取りに来てください。」




久坂先生は、一番前の席の人達にに、さっさと分厚い作文用紙の塊を配っていきます。




私の所にも作文用紙が回ってきましたが、燈子ちゃんの作文用紙が2枚足りません。




「あ。私取って来るね。」そう言うと、燈子ちゃんは、




「大丈夫。自分で取りに行くから、有難う!」




燈子ちゃんはそう言って、先生の方へ歩いてい行きました。先生の所へ行って作文用紙を貰うと、久坂先生に小さな声で何か話していました。




「久坂先生、私は古神道の家系ではありませんが、八咫烏の枠組みに入れられました。八咫烏の方々はとてもお優しいのですが、私は古神道に慣れていないので女の子同士が心強いんです。私、水織さんと同じ宗派の古神道となる事は出来ませんでしょうか。」




久坂先生は、にっこり笑って、




「どのみち、橘流も八咫烏も同じ枠組みですが、今日は丁度全ての宗派の代表の方は下校後に懇親会で学校におられますから、聞いてみましょうね。結果が分かりましたらお電話しますから、お待ちくださいね。」




「恐れ入ります。」




そう燈子ちゃんは久坂先生に言うと、お辞儀をして席に戻って来ました。




私は心の中で、「燈子ちゃん、言葉遣いが奇麗!語尾も伸びていないよ!恐れ入りますか~。私もいつか使えるようになりたいな~。」




燈子ちゃんに感心していると、




「はい。では皆さん、作文用紙を配られていない方はいませんか?・・・いないようですから、今後のスケジュールを纏めたプリントを配りますので、週末に予定を把握しておいてください。それから、神道の生徒のみが参加できるスペツィアル・シントイスモスに参加したい人は、申込書を配りますから、誓約書の部分に保護者の方の判を貰ってから提出して下さい。」




そう言って久坂先生はプリントを配り始めました。




「各宗派最低5人ですから、橘流と八咫烏の皆さんは全員参加となりますね。京都流、奥州流の方々も、出来るだけ参加されてください。先輩方の引退試合が今年は日本でありますが、その時には、応援として会場に行くことになります。」




あれ?何それ?すぺい・・?




「燈子ちゃん、スぺ何とかって、知ってる?初めて聞くんだけど・・。」




「利律子ちゃん、私も知らない~。なにそれ。こっちは4人しかいないから参加しなきゃいけないじゃん。うっそ~。私も参加するの~?もう、マジ無理!」




そう言って二人であたふたしていると、隣の席の女子が、




「あなた達何も知らないの?各国の古神道専門の生徒達で競うスポーツがあるのね。年に2回、国際試合があるの。引退試合は日本で行われるから、私たちは入学早々、各国の対戦を見れるの。あ。私は藤原衛子。さっき、皆の前で挨拶した奥州藤原の人は私のお父様。これから宜しくね。」


藤原衛子ちゃんは、痩せ型で、前髪の少し後ろを左右に髪留めで留めて、髪が背中位まであり、目が茶色で切れ長で、、奥二重のキリッとした可愛い顔立ちでした。


私は話しかけられて嬉しくなりました。燈子ちゃんが、




「教えてくれてありがとう。私達、何も知らないから是非教えてね。」




そう言うと、衛子ちゃんはにっこり笑って




「もちろんよ。そうそう、水織さん、あなた、斎王の舞をするんでしょう?それね、本当は私がするはずだったのよ。」




そう言い終わると、衛子ちゃんは笑顔が止まったまま、何度も瞬きをしながらじっと私を見ていた。私は、これはどう言えば良いんだろうと考えていると、




「水織さん頑張ってね。舞は去年から舞の練習をしていたから踊ったことがあるの。分からない事は聞いてね。」




そう言ってくれました。私はほっとして、また嬉しくなって、




「ありがとう!もう本当に初めてのことばっかりで、凄くうれしいよ!」




と少し大きめに喋ってしまい、燈子ちゃんや衛子ちゃんから「しーーっ。」とされてしまった。




「えへへ。やっちゃった。」と小さい声で言うと、




「えへへ?」と言って不思議そうに首を傾げられました。




あら?えへへって言わないのかな?そう思ったけど、そのまま流しました。


その後、教科書が配られ、月曜日の予定を連絡帳に書き写したら、下校となりました。




帰りに、お母さんとお父さんに、




「もうお話する友達が出来たんだよ。なんだかみんな、優しいよ。」と話していると、校門の外で、橘さんが黒崎さんと基子おばあちゃんと久幸おじさんさんと一緒に立っていました。




橘さんが、「こんにちは。今日はご入学おめでとうございます。」と言ってくれました。すぐに基子おばあちゃんが、




「利律子ちゃん、制服が良うお似合いですなぁ。入学おめでとう。」そう言ってくれると、その隣の久幸おじさんが、




「利律子ちゃん、咲子さん、圭吾さん、入学おめでとう。八咫烏の2人は利律子ちゃんが困っている時には力になるよう言い聞かせておりますから、頼りにして下さい。」と言ってくれました。




黒崎さんはにっこりしてこちらを見ています。




お父さんとお母さんが、


「すいません。色々とありがとうございます。」と言って頭を下げていました。私も一緒になって、お辞儀をしました。




黒崎さんが、


「お疲れでしょう。車を用意していますから、帰りは車で帰られて下さい。」そう言って、近くに止まっていた黒い車に案内してくれました。




「すいません。何から何まで、本当にありがとうございます。」そうお母さんが言うと、




「ご両親は今日、九州に帰られますのやろ。帰るまでの間、家族水入らずで楽しまれて。」そう基子おばあちゃんが言いました。




私達は車に乗り込むと、窓越しに皆さんに頭を下げ、お別れました。




その後、グリーンタワーの家に着くと、私は富田さん達が作ってくれたお昼ごはんをみんなで食べました。富田さんのお料理本当に美味しい!




私は今日新しくできたお友達のこと、スぺなんとかとか言うスポーツのことをお父さん、お母さん、お姉ちゃんに話しました。




直ぐ風邪をひく私のことを少し心配していましたが、新しい出来事の話で皆と楽しく過ごせました。


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