第2章 遼習院中等部編
第45話 入学式 その1
今日は私の入学式。お母さんとお父さんと一緒に、遼習院中等部まで電車で通う事にしました。お姉ちゃんはグリーンタワービルの家でお留守番です。
電車を降りるとすぐに中等部の入り口があり、桜の花がちょうど満開で、私はとてもウキウキしていました。
制服は紺色のセーラー服なのだけど、襟元は端に二本の細い紺色の線の入った白い布をボタンで取り換えられるようになっていました。リボンは今年からスカーフではなく、これもボタンで取り外せるリボンになったそうです。袖口にも白い二本の線があり、可愛くて気に入っています。
男子は学ランです。真っ黒の学ラン!なんだか男子が皆、少し大人っぽく見えます。
歩道の両脇には、観たことの無い立派な車がたくさん並んでいます。車からは次々と入学生とその家族が降りてきています。制服を着た女子や、黒い学生服を着た男子が次から次へと車から降りてきました。私はお母さんに、
「東京って田舎と車が違うね!」と言うとお母さんが、
「旧家のとてつもない裕福な家の人達かもね。りっちゃんは、まずはクラスのお友達の様子をしっかりと見て、最初は控えめにしていようね。目立たないのが一番だからね。」
「はい。・・・ん?でもお母さん、お父さん、私、今までもおとなしかったよ?」
「そうだね。その辺は心配しなくていいね。」お父さんがニッコリしなから言いました。
門をくぐって靴箱の側に、クラスの名簿が張り出されていました。クラスは全部で6組あって、私は1組でした。
「ごきげんよう。」
「ごきげんようー。制服似合うねー。」
隣にいる生徒と家族の人達が、話していました。髪を二つに分けて結んでいる女の子が言います。
「燈子ちゃん、何組になったの?」
眼鏡をかけた三つ編みの長い髪の女の子が答えました。なんだかハーフの人なのかな。
「真理ちゃん、私、何故か1組ー。」
真理ちゃんらしき人が驚いた表情で、
「私2組!燈子ちゃん1組なの?えー?どうして?1組って古神道の人達のクラスじゃないの?マジ残念ー。」
燈子ちゃんらしき人は少しむっとして、
「えー私、古神道と関係ないしー。お父さん、お母さん、私1組だってー。」
燈子ちゃんらしき人が後ろを向くと、物凄く綺麗な女の人と、顎髭のダンディな物凄くかっこいいおじさんがニッコリ笑って、
「お友達が沢山出来るといいわね。」そう言って燈子ちゃんらしき人を見ていました。
東京弁は語尾を延ばすのね。私も慣れるのかな。
「りっちゃん、最初、生徒はクラスに行かないといけないみたいね。保護者の人は先に体育館に行くそうよ。」
私は一人でクラスに行くのが少し寂しかったけど、お母さんが、
「入学式の後、保護者もクラスに行くみたいだから、帰りは一緒に帰れるみたいよ。だから安心してね。」
「はーい。」
私は2階にある1年1組に向かいました。私の席は真ん中あたりの一番後ろから二番目でした。少しすると私の後ろに、燈子ちゃんらしい人が座りました。私は心の中で、
「あ。同じクラスだった。しかも席が近いって、お友達になれるかな。」
そう思ったのだけど、初日から積極的に喋りたくないので、私は生徒手帳を見ながら誰とも目を合わさないようにしていました。
すると、後ろから背中をポンポンと叩かれたので後ろを振り向くと、燈子ちゃんらしき人がこちらを見ていました。
「初めまして。道永燈子です。宜しくね。」と笑顔で自己紹介をしてくれました。私は嬉しくなって、
「水織律子です。宜しくね。」
「水織・・?ああ、あなた斎王の舞に出る人ね。旧家以外の人が斎王をやるって、藤原の人達が言ってた。話題になってたよ。橘流陰陽道古神道の人でしょう?」
「私、自分が何流かよく知らなくて・・。」
「1組はね、昔から古神道の人達のクラスって決まってるの。今年は人数が多いみたいね。色々流派があるけど、あんまり気にしなくていいよ。でも私、古神道の家じゃないけどこのクラスなのー。意味不よねー。」
周りも席の近い人たちが個々に話をし始めていました。
「私、田舎から出て来たばかりで東京の事とか、流派とか分からないから色々教えてね。」
「私が分かる事ならね。家は何処なの?麻布台だから今度遊びに来てね。」
「私は文京区のグリーンタワー。引っ越ししたばかりで近所しか知らない。えへへ。」
「えへへ?えへへって、何か良いねー。」
こそこそ話をしていると、先生らしき女の人が入ってきました。
「皆さん、ごきげんよう。今日はご入学おめでとうございます。私は担任の久坂寿美子です。これから1年間、皆さんと素敵な学園生活を過ごしていきたいと思います。よろしくお願いしますね。では、これから入学式ですので、体育館に行きましょう。」
私達は並んで体育館へと向かいました。
体育館の中はとても綺麗でした。前方が生徒、後方が保護者の席みたいです。体育館に入ってすぐ左には、先生たちの席のようでした。2階があり、二階の方にも椅子があり、後ろの人が体育館内を見やすくしているかのように段になって並べられています。でもそこは少し暗くて、顔が見えにくくなっています。そこの席の後ろの列に、橘さんや黒崎さん達が座っていました。そして、基子おばちゃんも?私は、
「わ。あとで挨拶に行かないと。」そう思いました。
中等部校長の藤原さんが壇上に上がって行きました。そして国旗に礼をすると、皆んなの方を向き、
「皆さん、ごきげんよう。」
そう言うと、皆んながサッと立ち上がって、
「ごきげんよう。」そう言うとサッとお辞儀をして、サッと元に戻り、サッと席に座りました。私は皆んなに合わせるのに精一杯でした。
「我が遼習院大学中等部へのご入学おめでとう御座います。」
お祝いの言葉から始まって、校長先生の藤原さんが話を続けていきます。そして校長先生の藤原さんの話が終わると、新入生代表の言葉の番です。
「新入生代表の言葉、近衛道長さん。」
そう呼ばれると、私の1組の列からサッと男子が立ち上がって、壇上へ上がって行き、国旗に礼をして、その後、皆んなの方を向き、話し始めました。
すらりとした背の高い、女の子みたいな可愛い顔立ちの近衛君は、おっとりとした口調で話していきます。
やっぱり、学ランはきちんとして見えるなあ。と思いながら聞いていました。
新入生代表の言葉が終わると、君が代を斉唱し、2年生が入って来て校歌斉唱になりました。そして各組の担任の先生が紹介されると、各担任の先生が各クラスの前に立ちました。
「1組の生徒と保護者のみ残り、2組から5組の新入生と保護者の皆様は教室に行かれてください。では5組から起立!」
そうアナウンスがあり、順番に新入生が教室に帰っていきます。
5組から2組迄の新入生と保護者の人達が体育館を出た後、入り口が閉められました。
3組がいた列の前に、天狗のような文様の旗のようなものが置かれ、1組の生徒の何人かがその前に座っていきます。
2組がいた列の前に、9本のしっぽがある狐のような動物を背景に、五芒星の文様の旗のようなものが置かれ、また1組の生徒の何人かがその前に座っていきます。
1組の列に残ったのは、私と道永燈子ちゃんだけでした。そして私たちの前には、丸い円の中に竜と剣の文様の旗と、黒い烏の文様の旗が2つ置かれました。あれ?でもこの烏、足が3本あるんだけど違えたのかな?
それを見て、他の人達がざわざわと話し始めました。
「橘流陰陽道古神道と八咫烏が同じ流派になったの?どういうこと?」
燈子ちゃんが、「え。うち古神道じゃないし。ちょっと、どういうことなの。もうマジ意味不ー。」と呟いていました。
ここで、壇上に上がった校長の藤原さんが、話し始めます。
「各、古神道流派の皆様。ご入学おめでとうございます。ここからは古神道の皆様でのみの、入学の式を始めたいと思います。」
「ええ~。なになに??もう一回入学式があるの?」燈子ちゃんと私は、こそこそと呟きながらお互いに肩を窄めていました。
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