第43話 東京の家 (富田夏樹の語り)

ああっ!寒いけど、もうすぐ利律子さんのご家族を乗せたヘリコプターがビルの屋上に到着するからお出迎えの準備をしないとね!


総宮そうぐう達が今か今かと待ちわびているわ。


新しい年が明けた1月に、グリーンシティビルのショッピングモールがオープン。このビルの高層階は、マンションとなっていて、この一部屋が利律子さんの部屋なの。


1月末になり、利律子さんの住居に、ご家族がいらっしゃる事になったというわけ。


このグリーンシティビルは、橘流陰陽道古神道が所有するビルで、土地も総宮そうぐうの橘さんの一族が所有しているらしい。山手線のほぼ真ん中の、文京区に位置してるわ!


橘さんの御家柄って、確か、かなり古い古神道の家柄らしいし、各都心に幾つもビルを所有していて、そしてあの外見で。


ほんと、優良物件すぎ!ビルじゃなくて橘さんの事ね。物腰が柔らかいけど、必要なこと以外全く喋らないからミステリアスなのよね。


都会風のガラス張りの大きなビルで、四隅が曲線となっていて。その高層階の一室を、利津子さんの住居とするためにわざわざ改装し、家族用にもう一部屋ファミリータイプの部屋を確保。


このビルの低層階は大型ショッピングモールと映画館に改装。利津子さんが必要なものは全てビルの中で解決できるように、わざわざ改装されたのだった。


あの恐ろしい位に不思議な出来事を体現する利律子さんだから、当たり前なのかもしれないけれど。


なんて物凄い特別扱いなのかしら!


旧家の御令嬢や御子息しか通えない私学に学費免除で入学出来て、田舎から都会のど真ん中の高台にある高層階のマンションに住めるなんて、ある意味、まるでシンデレラよね・・・。


本人は、普段は普通の女の子で、ポーっとしていて、そんなこと全く思っていないみたいだけど。


最上階は橘流陰陽道古神道の第二本部となっていて、第一本部は市ヶ谷駐屯地の中に秘密裏に存在していて、第三本部は九段下の靖国神社の地下にあるの。


靖国神社と言えば、個人的に不思議に思うのだけど、靖国神社は天皇皇后両陛下のお住まいになる吹上御所の鬼門側にあるのって、何故なのかしら?ただの偶然?今度榛葉さんに聞いてみようかしら。


食事や家事、健康管理などを行う世話係は私を含めて4人。お世話係の私、富田夏樹。そして同僚の武田京子は利律子さんと同じ階に住み込み。本当に景色が良くて、家具も素敵なものを揃えてもらえてて、お世話係りなのに嬉しいわ。


下の階に、移動で配属されたお世話係の工藤公貴くどうきみたか、長谷川成敏はせがわなるとしが住み込み。


この二人も外見が奇麗なのよ。顔で選んでるんじゃないかしら。見目麗しいのが周りに多いと楽しいのよね!


ヘリコプターの音が近付いてきたわね。利律子さん達が到着したのね。連絡しないと。


「総宮そうぐう、そろそろ利律子さんのご家族がヘリポートに到着します。」


「そうですか。我々もお迎えに上がりましょう。」


「いえ。外は寒いですので、応接間でお待ちください。」


「そうですね。では、寒い中申し訳ないが、宜しくお願いします。」


「承知致しました!」


ヘリポートからヘリを見上げると、曇り空から光が差してきて、東京都心が見渡せる見晴らしの良い景色がなんだかとても素敵な雰囲気になっている。


ヘリが到着し、利律子さん達に降りて頂く。


「ご無沙汰しております。利律子さん、お母様、お父様、お姉さま。」


「お久しぶりです。今日からよろしくお願いします。」


ご挨拶が済むと、まずは応接間に皆さんをお通しし、操縦士に休憩所を案内した。荷物を他の者が持つと、先にファミリータイプの部屋にお持ちする。


私、富田夏樹と武田京子、工藤公貴、長谷川成敏、総宮、総氏、柳、遼習院大学付属遼習院中等部の校長の藤原、榛葉で挨拶をした。


その後、まずは利律子さんの住居を案内し、出来上がっている制服を見て頂いた。


そしてファミリータイプの部屋に案内。ここで2泊していただく。


急遽、斎王の舞を、国際交流スポーツの引退戦の前座で披露することに決まったため、猛特訓を始めないといけない事、十二単の為の着物の採寸を今回済ませることなどを説明した後は、昼食と休憩時間をファミリータイプのお部屋でご家族だけでゆっくりしていただく事にした。


食事は私、富田と武田が作ってもてなす。お店が持てそうなほど上手な私のお料理を、堪能していただけて嬉しかったわ!


総宮も美味しいと言ってくださって、嬉しかったな。うふふふふ。


翌日はショッピングモールや近所の街並みや六義園を散策していただき、利律子さんの暮らす環境をじっくり体験していただければ、今回の御出座しは十分だそう。


これから数年はこのような生活になるわ!私も自分なりに出来ることをして、職務を全うしないとね!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る